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外国人看護師の受け入れガイド【2026年最新】現状・メリット・課題を徹底解説

看護職員の確保が年々難しくなるなか、外国人看護師の受け入れを現実的な選択肢として検討する医療機関が増えています。

一方で、「特定技能で採用できるのか」「稼働開始までどれくらいかかるのか」といった入り口でつまずくケースは少なくありません。外国人看護師の受け入れは介護分野ほど制度が整備されておらず、日本の看護師免許の取得が絶対条件という高い壁があります。制度を誤解したまま採用計画を立てると、配属時期の遅れや法令違反につながりかねません。

本記事では、受け入れの3つのルート、最新統計でみる現状、現場が得られるメリット、直面する課題と対策、稼働までのスケジュールまでを、官公庁の一次情報をもとに整理します。社内説明や稟議資料の土台としてご活用ください。

目次

外国人看護師の受け入れとは

外国人看護師の受け入れを考えるうえで最初に理解すべきは、日本で看護師として働くには日本の看護師免許が必須という大原則です。海外で看護師資格を持っていても、その資格のまま日本の病棟で看護業務に従事することはできません。

保健師助産師看護師法(以下、保助看法)上、看護師の業務は免許を持つ者に限られ、これは国籍を問わず適用されます。したがって外国人材の活用を検討する際は、「看護師として採用するのか」「看護補助者(看護助手)として採用するのか」を最初に切り分ける必要があります。受け入れの入口は大きく次の3つです。

ルート

在留資格

主な業務

特徴

EPA看護師候補者特定活動就労開始時は看護補助業務、合格後は看護業務国主導の枠組み。来日前研修あり
有資格者の直接採用医療看護業務日本の看護師免許保有が前提
看護補助者としての採用特定技能(介護)、身分に基づく在留資格など療養生活上の世話など看護業務は不可

いずれも「日本の免許を持つか否か」で担える業務範囲が決まります。この線引きを曖昧にしたまま配属すると、保助看法違反という重大なリスクを抱えることになるため、採用の初期段階で人事・看護部・法務が認識を揃えておくことが欠かせません。

ルート1:EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師候補者の受け入れ

EPAは、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定に基づく国同士の枠組みです。公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が唯一の受け入れ調整機関となり、あっせんから滞在管理までを一元的に担います。2008年度から2025年度までの累計で1,788名が来日しており、内訳はインドネシア784名、フィリピン714名、ベトナム290名です。

出典:国際厚生事業団|EPA看護師候補者 受入れについて

候補者は母国で看護師資格を取得済であることが前提で、インドネシアは実務経験2年以上、フィリピンは3年以上、ベトナムは3〜4年制の看護課程修了と実務経験2年以上が求められます。

来日後の在留資格は「特定活動」です。在留期間はフィリピン・ベトナムが原則3年間で、一定の条件を満たせば1年間延長して4年目まで滞在できます。インドネシアは2026年8月の改正日尼EPA発効等により、改正後に入国する2027年度の看護師・介護福祉士候補者から看護・介護ともに在留期間の上限が最大5年に延長されました。

いずれの国もこの期間中に看護師国家試験に合格しなければ帰国となる点が最大の難所であり、国によって使える年数が異なることは支援計画の前提として押さえておく必要があります。受け入れ施設の変更と家族の帯同は原則不可であり、候補者の選択肢が限られるぶん、受け入れ側には手厚い学習支援と生活支援が求められます。

ルート2:在留資格「医療」による有資格者の直接採用

すでに日本の看護師免許を持つ外国人を採用する場合に用いるのが、在留資格「医療」です。医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師など、法律上の資格を有する者が行う医療業務が対象となります。

在留期間は5年、3年、1年または3月から決定され、更新も可能です。在留期間を更新しながら長期の就労を続けられる点が、滞在期間に上限のあるEPAルートとの決定的な違いです。

上陸許可基準では「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」が求められます。賃金を日本人看護師と揃えることは義務であり、コスト削減目的の採用は制度上成立しません。

なお、看護師には就労年数の制限がない一方、准看護師については「本邦において准看護師の免許を受けた後4年以内の期間中に研修として業務を行うこと」という年数要件が課されています。准看護師のまま長期就労を続けることはできないため、看護師免許の取得を見据えたキャリア設計が前提となります。

出典:出入国在留管理庁|在留資格「医療」

ルート3:看護補助者(看護助手)としての受け入れ

日本の看護師免許を持たない外国人材を病棟で活用する場合の選択肢が、看護補助者としての採用です。看護師の指導の下で在留資格および施設基準上認められる範囲の療養上の世話の補助や環境整備、物品搬送などを担うポジションで、診療報酬上の看護補助関連加算では配置人数の算定対象にもなります。

ここで重要なのが、特定技能制度に「看護」という分野は存在しないという事実です。医療機関が特定技能外国人を活用する場合、実務上は特定技能「介護」の在留資格者を看護補助者として雇用する形が選択肢となります。

出入国在留管理庁の運用要領(令和7年4月21日一部改正)では、事業所ごとの人数枠の算定基準について「医療機関において、看護師や准看護師の指導の下に療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)等を行う診療報酬上の看護補助者や、当該看護補助者の指導を同一病棟で行っている看護師及び准看護師は、算定基準に含まれます」と明記されています。

出典:出入国在留管理庁|「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-」の一部改正について

ただし対象施設は厚生労働省が別途定める施設種別に該当する必要があり、すべての医療機関が無条件に受け入れられるわけではありません。なお、永住者や定住者など身分に基づく在留資格の外国人であれば就労制限がないため、看護補助者として採用できます。

外国人看護師の受け入れ現状|最新データで読む2026年の実像

外国人材の受け入れは全体として急拡大している一方、看護師分野だけは伸び悩んでいます。これが現状を一言でまとめた姿です。

「外国人材は増えているのに、なぜ看護師は採れないのか」という社内でよく出る問いに答えるには、全体動向と看護師特有の制度要因を分けて示すことが効果的です。ここでは2つの角度から数字を確認します。

EPA看護師候補者の受け入れ実績と国家試験合格率の推移

EPA看護師候補者の状況は厳しさを増しています。第115回看護師国家試験(令和7年度)では、EPA候補者の受験者数234名に対し合格者は20名、合格率は8.5%でした。同じ試験の全体合格率が88.3%(受験者59,614名、合格者52,666名)であることを踏まえると、差は歴然です。

国籍

受験者数

合格者数

合格率

インドネシア124名5名4.0%
フィリピン64名4名6.3%
ベトナム46名11名23.9%
合計234名20名8.5%

ベトナム出身者の合格率が突出して高いのは、来日前にN3以上の日本語能力が求められるなど入口要件の違いが影響していると考えられます。日本語力が合否を大きく左右することを示す数字です。

長期でみると、平成20年度から令和7年度までの18年間でのべ受験者数6,124名に対し合格者は累計739名にとどまります。候補者は滞在期間中に複数回受験できるため、実人数ベースではこれより少ない人数が受験している計算です。受験者数もピークの平成28年度447名から令和7年度234名へと約半減しており、制度自体が縮小傾向にある点は中長期の採用計画で見落とせません。

出典:厚生労働省|第115回看護師国家試験における経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の合格者数と受入施設名を公表します

看護職員の需給ギャップが示す構造的な人手不足

外国人看護師の受け入れが議論される背景には、国内の需給ギャップがあります。厚生労働省が2026年4月10日の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」で示した資料によると、2023年時点の就業看護職員数は174.6万人(看護師137.3万人、准看護師25.7万人、保健師7.3万人、助産師4.2万人)。2025年の供給見通しが175万〜182万人であるのに対し、需要推計は最も高いシナリオで202万人とされています。なお、この2025年の推計値は2019年11月に公表された看護職員需給分科会の中間とりまとめで示されたもので、直近の検討会にも前提資料として引き継がれています。

出典:厚生労働省|第1回2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会 資料5「看護職員の需給推計について」/厚生労働省|医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(令和元年11月)

より深刻なのは供給側の細りです。同資料では、看護師等養成所3年課程の受験者数が令和元年から令和6年にかけて47.2%減少したと指摘されています。一方で60〜64歳の就業者数は2016年の8.7万人から2024年には12.9万人へ増加しており、現場が高年齢層に支えられている構図も浮かびます。若年人口の減少が続く以上、外国人材は補助的な選択肢ではなく確保策の一角として位置づけざるを得ないというのが現実的な見立てです。

外国人看護師を受け入れる3つのメリット

制度上のハードルは高いものの、外国人看護師の受け入れには現場に直結する明確な利点があります。

重要なのは、メリットを「人手が増える」の一点に還元しないことです。教育体制の再構築や患者対応力の向上など組織全体に波及する効果まで含めて評価すると、投資判断の納得感が高まります。ここでは稟議で説明しやすい3つの観点に整理します。

長期就労を前提とした人員確保と勤務体制の安定化

最も直接的な効果は、人員確保による勤務体制の安定です。看護職員の不足は、夜勤回数の偏りや有給休暇の取得率低下、時間外労働の増加という形で現場に跳ね返ります。

外国人看護師の多くは長期の就労を前提に来日します。在留資格「医療」は在留期間の更新を重ねられ、EPA経由で国家試験に合格した看護師も継続して就労できます。免許取得までに数年を投じた人材だけに就労意欲が高く、中長期で人員計画に組み込みやすい点が実務上の価値です。

また、地方や中小規模の医療機関ほど採用競争で不利になりやすい構造がありますが、外国人材の場合は勤務地の知名度よりも学習環境やサポート体制が就職先の判断材料になりやすく、都市部の大規模病院と同じ土俵で争わずに済む余地があります。

ただし前提として、EPAルートは就労開始時点では看護補助業務からのスタートであり、国家試験に合格できずに帰国する候補者も少なくありません。「即戦力の看護師が1人増える」という説明は誤りである点は、社内説明の際に必ず添えるべきです。

外国人患者への対応力と多文化ケアの強化

訪日外国人や在留外国人の増加に伴い、医療機関が外国人患者に対応する場面は確実に増えています。

在留外国人は2025年末時点で412万5,395人となり、初めて400万人を超えました。国籍も中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパール、インドネシアと多様化しています。

言語対応は医療通訳やタブレット翻訳で一定程度カバーできますが、痛みの表現、家族の関与、宗教上の配慮、食事の禁忌といった文化的背景の理解までは機械翻訳では届きません。同じ文化圏出身のスタッフが院内にいることは、患者の安心感と説明同意の質を高めます。

例えばインドネシア出身の看護師がいれば、ムスリム患者の礼拝や断食期間中の服薬タイミングについて現実的な調整案を出せます。これはインシデント予防にも直結する実務価値です。外国人患者対応のノウハウが院内に蓄積されれば、属人的な対応から標準化された手順へ移行するきっかけとなり、日本人スタッフの対応力も底上げされます。

教育体制の見直しによる組織全体のレベルアップ

外国人看護師を受け入れると、既存の教育体制が「暗黙知に依存していないか」を否応なく点検することになります。日本人の新人であれば言葉にしなくても伝わっていた手順が、外国人材には通じないからです。

この過程で、マニュアルの整備、指示の言語化、確認プロセスの明文化が進みます。恩恵を受けるのは外国人スタッフだけではありません。中途採用者や新人看護師、復職者にとっても分かりやすい教育体制が整い、指導者ごとのばらつきが減ります。

実際、EPA受け入れ施設では国家試験対策として院内学習会や個別指導を制度化するケースが多く、そこで培われた学習支援の仕組みが日本人職員の認定看護師取得支援などに転用されることもあります。受け入れコストの一部は教育インフラへの投資と読み替えられるという視点は、稟議において説得力を持ちます。

外国人看護師の受け入れで直面する5つの課題と対策

メリットの裏返しとして、外国人看護師の受け入れには特有の難しさがあります。現場・コスト・コンプライアンスの観点から5つに整理し、それぞれの対策を示します。事前にリスクを洗い出しておけば、「思っていたのと違う」という理由での早期離職や計画の頓挫を大幅に減らせます。特にEPAルートは投じる時間と費用が大きいため、意思決定前の確認が欠かせません。

課題1:看護師国家試験という最大の壁

最大の課題は国家試験です。EPA候補者の令和7年度の合格率は8.5%でした。直近10年(平成28年度〜令和7年度)でみても5.8%から22.4%の間で大きく振れており、受け入れが始まった平成20年度は0.0%、翌平成21年度も1.2%にとどまっています。

候補者は滞在期間中に複数回受験できるとはいえ、期間内に合格できず帰国するケースが相当数生じているのが実情です。

試験は日本語で実施され、専門用語に加えて日本特有の医療制度や法規に関する知識も問われます。母国で経験豊富な看護師であっても、日本語での読解速度が追いつかず得点できないケースが頻発します。

対策は、就労開始直後から計画的な学習時間の確保を制度化することです。勤務シフトに学習時間を組み込む、模擬試験を定期実施する、日本人看護師がメンターとして併走するなど、施設側の関与度合いが合格率を左右します。

なお厚生労働省は、EPA候補者について一定の得点基準(合格基準点の5割以上など)を満たした場合に滞在期間を延長できる措置を設けており、2023年3月には具体的な得点基準が公表されています。延長要件を前提に複数年計画で支援設計を組む現実的な選択肢もあります。インドネシアは在留期間の上限が5年に延長されているため、より長い受験計画を立てられます。

出典:厚生労働省|経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の滞在期間延長の条件となる国家試験の得点基準などを公表します

課題2:日本語力と医療安全のリスク

日常会話が問題なくても、医療現場の日本語は別物です。申し送り、口頭指示、患者の訴え、記録の読み書きのいずれも高い精度が求められ、誤解が直接インシデントにつながります。

特に注意が必要なのは、方言、略語、擬態語(ズキズキ、ムカムカなど)です。教科書的な日本語学習ではカバーされない領域であり、患者の症状把握で誤りが生じやすいポイントといえます。

EPAでは、インドネシア・フィリピンは入国時にN4程度以上、就労時にN3程度以上、ベトナムは入国時からN3以上という日本語要件が設定されています。ただしN3の認定の目安は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」水準とされており、医療現場での完全な自立を保証するものではありません。

関連記事:外国人労働者の日本語レベルはどの程度?在留資格別の目安と採用時の見極め方を解説

対策の基本は、口頭指示を極力減らし、記録と復唱による二重確認を徹底することです。加えて、院内で頻出する用語集を作成し、擬態語や略語の意味を明文化しておくと立ち上がりが早まります。これらは日本人職員の医療安全にも資する取り組みです。

課題3:在留資格・労務管理のコンプライアンスリスク

在留資格に応じて従事できる業務が厳密に決まっているため、「人手が足りないから」という理由で業務範囲を超えさせることは重大な違反となります。

典型的なリスクは、国家試験に未合格のEPA候補者に看護業務を行わせてしまうケースです。候補者は資格取得前、あくまで看護補助業務に従事する立場であり、保助看法上の看護行為は認められません。現場の善意や緊急対応が違反につながるため、業務範囲を書面で明示し病棟単位で周知する必要があります。

労務面では賃金の同等性が問われます。在留資格「医療」でもEPAでも、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上が要件です。EPA候補者の場合は、同様の職務に従事する日本人看護補助者の報酬が比較対象となります。

このほか、外国人雇用状況の届出や在留カードの期限管理など日常的な業務も発生します。担当者が属人化すると更新漏れにつながるため、チェックリストとダブルチェック体制が有効です。在留手続きや生活立ち上げを外部に委託する方法もあり、企業向けの受け入れ支援サービスの活用も検討に値します。

課題4:コストと採算のリアル

外国人看護師の受け入れは、決して安上がりの手段ではありません。EPAルートを例に、実際に発生する費用を整理します。

費用項目

金額

単位

求人申込手数料30,000円(税別)1施設
あっせん手数料131,400円(税別)1名
滞在管理費20,000円(税別)1名・1年
訪日後日本語研修一部負担金360,000円(税込)1名
送出し国への手数料等(インドネシア)約42,000円1名
送出し国への手数料等(フィリピン)約66,500円1名

上記金額を単純に合計すると、候補者1名あたり約58万〜61万円です。ただし、求人申込手数料は1施設単位であり、国・年度・受入人数等によって実際の負担額は異なります。ここに宿舎の確保、帰国旅費の担保、給与、学習支援にかかる人件費が上乗せされます。

さらに考慮すべきは投資回収の不確実性です。国家試験に合格しなければ看護師として稼働しないため、費用対効果は慎重に試算する必要があります。一方で採用単価や離職に伴う損失と並べれば、長期定着を前提にした受け入れが不利とは限りません。比較は単年度ではなく5年程度の期間で行うのが現実的です。

課題5:定着とキャリア形成、生活面のサポート

制度と費用の課題をクリアしても、最後に残るのが「日本で生活し続けられるか」という問題です。住まいの確保、銀行口座の開設、携帯電話の契約、行政手続きなど、生活基盤の立ち上げには想像以上の手間がかかります。

特に住居は大きな障壁です。外国人であることを理由に入居を断られるケースは依然として存在し、保証人の確保も難題です。施設が宿舎を用意するか、外国人対応に慣れた保証会社を活用するなどの手当てが実務上ほぼ必須といえます。

職場面では孤立の防止が定着の鍵です。同国出身者が院内に1人しかいない状況では悩みを相談できる相手がおらず、離職の引き金になります。メンター制度の導入、定期的な面談、同郷コミュニティとの接点づくりが有効です。

また、宗教上の配慮や一時帰国の融通といった要素も長期就労では無視できません。生活面の支援を体系的に行う生活支援サービスを組み合わせれば、看護部の負担を抑えつつ定着率を高められます。

受け入れの流れとスケジュール|稼働開始までの実務工程

外国人看護師の受け入れで最も誤解が多いのが、稼働開始までのリードタイムです。「今年度中に人員を補充したい」という要望に対し、EPAルートは構造的に応えられません。計画時点で正しいスケジュール感を共有しておくことが、現場の期待値管理につながります。

どのルートを選ぶにせよ、受け入れ前の体制整備が成否を分けます。最低限、次の項目は着手前に確認しておきたいところです。形式的な準備に見えますが、この工程を省くと、現場の混乱や法令違反につながるおそれがあります。

  • 在留資格ごとに担える業務範囲を文書化し、病棟に周知しているか
  • 教育担当者・メンターを指名し、業務外の負担にならない体制を組んでいるか
  • 申し送りや指示出しのルールを口頭依存から記録ベースへ見直しているか
  • 住居・宿舎・生活立ち上げの支援方法を具体化しているか
  • 在留カードの期限管理と各種届出の担当・手順を定めているか

EPAルート:求人登録から就労開始まで約1年4か月〜1年8か月

EPAは国同士の枠組みであるため、年間スケジュールが固定されています。

2026年度来日の場合、実際の流れは次のとおりです。

工程  

インドネシア  

フィリピン  

ベトナム  

受け入れ説明会2025年3月7日2025年3月7日2025年3月7日
求人登録申請締切2025年4月9日2025年4月9日2025年4月9日
現地合同説明会2025年8月下旬2025年7月上旬2025年12月上旬
訪日前日本語研修開始2025年11月下旬2025年11月上旬記載なし
来日・訪日後研修開始2026年6月中旬2026年6月上旬2026年5月下旬
就労開始2026年12月中旬2026年12月上旬2026年8月上旬

2027年度来日の場合、実際の流れは次のとおりです。

工程

インドネシア

フィリピン

ベトナム(調整中)

求人登録申請受付2026年3月5日(木)~ 4月8日(水)2026年3月5日(木)~ 4月8日(水)2026年3月5日(木)~ 4月8日(水)
現地合同説明会・面接2026年8月下旬2026年7月上旬2026年12月上旬
マッチング2026年9月上旬~11月中旬2026年7月下旬~10月中旬2027年1月下旬~3月上旬
訪日前日本語研修開始2026年11月上旬~2026年11月上旬~― 
来日・訪日後研修開始2027年6月中旬~2027年6月上旬~2027年6月上旬~
就労開始時期2027年12月上旬頃2027年12月中旬頃2027年8月上~中旬頃

出典:国際厚生事業団|2026年度来日 経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者受入れについて/EPA介護福祉士候補者 受入れについて

求人登録から就労開始まで、インドネシア・フィリピンで約1年8か月、ベトナムで約1年4か月かかります。ベトナムは入国時点でN3以上が求められる仕組みのため、日本側のスケジュール上は訪日前日本語研修の欄が設けられていません。しかも就労開始時点では看護補助業務からのスタートであり、看護師として稼働するのは国家試験合格後です。

受け入れ施設側にも要件があります。看護師学校養成所の臨地実習受け入れ病院と同等の体制が整備されていること、看護職員の半数以上が看護師であること、研修責任者を配置することなどが求められ、受け入れ人数は原則として1施設あたり2名以上5名以内(1国あたり)です。

在留資格「医療」ルート:免許取得者を直接採用する場合

すでに日本の看護師免許を持つ人材を採用する場合は、通常の中途採用に近い流れです。選考、内定、雇用契約の締結を経て、在留資格認定証明書の交付申請または在留資格変更許可申請を行い、許可後に入職となります。

在留資格の審査には通常1〜3か月程度を見込みます。国内在住者の資格変更なら比較的短期間で完了しますが、海外からの呼び寄せでは査証手続きと渡航準備が加わるため、余裕を持った計画が必要です。

母数が限られる点が最大の制約ですが、外国の看護師学校養成所を卒業した人や外国で免許を得た人が国家試験を受験するための「受験資格認定制度」も存在します。厚生労働大臣の認定を受けることで受験資格が得られる仕組みで、申請受付は例年4月中旬から始まります(2026年度は4月13日開始)。

出典:厚生労働省|外国で看護師免許を取得している方の受験資格認定について

留学生として日本の看護師養成所を卒業し、国家試験に合格した人材を新卒採用するルートも現実的です。日本語力と日本の医療文化への適応という点では、最も立ち上がりが早い層といえます。

2026年以降の制度動向|育成就労・特定技能と看護分野の行方

外国人材の受け入れ制度は、この数年で大きく組み替えられています。看護分野に直接関係する動きは限定的ですが、周辺制度の変化は医療機関の人材戦略に確実に影響します。制度改正の方向性を押さえておくことは中期計画の前提条件であり、特に2027年4月の育成就労制度スタートと介護分野の運用拡大は、医療法人として無視できないテーマです。ここでは押さえるべき動向を2つに整理します。

育成就労制度は2027年4月施行、看護は対象分野に含まれない

技能実習制度に代わる新制度として創設された育成就労制度は、一部の規定を除き令和9年(2027年)4月1日に施行される予定です。対象分野は、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環とされています。

出典:出入国在留管理庁|育成就労制度の制度概要・関係法令

ここに「看護」は含まれていません。つまり、育成就労を使って外国人を看護師や看護補助者として受け入れる道は現時点で開かれていないということです。医療機関が育成就労を活用する場合は、併設する介護保険施設などでの介護分野が想定されます。背景には国家資格が必須であることや医療安全上の要請の高さがあり、当面はEPAと在留資格「医療」という既存ルートを軸に検討するのが現実的です。

特定技能「介護」の運用拡大と2040年に向けた議論

隣接する介護分野では運用の拡大が進んでいます。厚生労働省によると、令和7年4月21日付けの告示等改正により、介護職員初任者研修修了課程等を修了し介護事業所等での実務経験(原則1年以上)を有する特定技能外国人について、受け入れ事業所が遵守事項を守ることを条件に訪問系サービスへ従事できるようになりました。

出典:厚生労働省|介護分野における特定技能外国人の受入れについて

前述のとおり、特定技能「介護」の運用要領では医療機関の看護補助者が人数枠の算定基準に含まれることが明記されています。対象施設要件の確認は必要ですが、医療機関における特定技能外国人の活用余地は着実に広がっていると評価できます。

一方、2026年4月10日には「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」の初会合が開催され、養成数の減少と高年齢化への対応、勤務環境の改善などが論点として示されました。今後の議論次第では外国人看護職員の制度的な位置づけが変わる可能性もあり、制度が拡大した際にすぐ受け入れられる体制を持つ施設とそうでない施設の差は人材確保の結果として表れます。

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