【2026年最新】外国人の社会保険|加入条件・手続き・免除の要件と実務の注意点を徹底解説 - GTN MAGAZINE
日本語
日本語
English

【2026年最新】外国人の社会保険|加入条件・手続き・免除の要件と実務の注意点を徹底解説

外国人従業員を受け入れる際、現場担当者が最もつまずきやすいのが社会保険まわりの判断です。

「留学生アルバイトは加入させるべきか」「本国の年金に入っているから免除できるのか」といった相談は、採用の入口から退職・帰国まで途切れることがありません。

しかも制度は動いています。2026年8月には高額療養費制度が見直され、10月には短時間労働者の賃金要件(月額8.8万円)が撤廃予定です。保険料の納付情報を在留審査に活用する仕組みの整備も進んでいます。

本記事では、外国人の社会保険の加入条件、手続き、社会保障協定による免除、そして現場で事故が起きやすい注意点を、官公庁の一次情報に沿って整理します。

外国人の社会保険とは|国籍を問わず適用される4つの制度

社会保険の議論を始める前に、日本の社会保険は国籍で区別しないという大原則を押さえておく必要があります。

日本年金機構は、適用事業所に常時使用される外国人について「国籍や性別、賃金の額等に関係なく、被保険者となります」と明示しています。在留資格が「技術・人文知識・国際業務」でも「特定技能」でも、加入判定のロジックは日本人従業員とまったく同じです。

実務で「社会保険」と呼ぶとき、対象になる制度は次の4つです。狭義の社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)は所管も加入判定基準も異なるため、混同したまま処理すると必ず漏れが出ます。

制度

主な内容

保険料負担

判定の軸

健康保険医療費の給付、傷病手当金など労使折半事業所の適用区分と労働時間
厚生年金保険老齢・障害・遺族の年金給付労使折半健康保険とほぼ同一
雇用保険失業給付、育児休業給付など労使双方(率は異なる)週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み
労災保険業務災害・通勤災害の補償全額事業主労働者全員が対象

これに加え、40歳から64歳までの人は介護保険の第2号被保険者として健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。さらに、厚生年金や健康保険の対象にならない外国人は、住民登録を通じて国民健康保険・国民年金の対象になります。「どの制度にも入らない外国人」は原則として存在しません。

外国人労働者は2025年(令和7年)10月末時点で2,571,037人と過去最多を更新しており、行政側のチェックも当然強まっています。「知らなかった」で済む適用漏れはありません

加入前に確認する2点|適用事業所の区分と保険料の決まり方

加入判定は、従業員側の要件を見る前に自社が適用事業所かどうかの確認から始まります。強制適用事業所は、(1) すべての法人事業所(事業主のみの場合を含む)、(2) 常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(農林漁業、サービス業など一部業種を除く)です。

強制適用に当てはまらない事業所でも、従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ任意適用事業所になれます

2029年10月以降に新たに開業する個人事業所については、業種を問わず、常時5人以上の従業員を使用する場合に健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。ただし、2029年10月時点ですでに存在する、法定17業種以外の個人事業所は経過措置により当分の間、強制適用の対象外です。既存事業所でも、従業員の半数以上の同意を得て認可を受けることで任意適用事業所になることはできます。

保険料は給与額そのものではなく、標準報酬月額という等級に当てはめて計算します。毎年4月から6月の報酬の平均で等級を決める定時決定が基本で、健康保険は第1級58,000円から第50級1,390,000円、厚生年金保険は第1級88,000円から第32級650,000円の区分です。厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に750,000円となります。

厚生年金保険料率は2017年9月以降18.3%で固定され、労使折半で9.15%ずつの負担です。健康保険料率は協会けんぽの場合は都道府県ごとに異なり、2026年度(令和8年度)は東京都9.85%、大阪府10.13%、愛知県9.93%。40歳から64歳には介護保険料率1.62%が加わります。労働保険も含めた会社負担は月額報酬の15%前後が目安です。

出典:全国健康保険協会|令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます日本年金機構|厚生年金保険料額表

外国人の社会保険の加入条件|制度別の判定基準を整理

加入条件は制度ごとに独立しています。「健康保険に入るなら雇用保険にも入る」とは限らない点が、実務でのつまずきどころです。

健康保険・厚生年金保険は労働時間・日数と報酬で判定し、雇用保険は労働時間と雇用見込み期間で判定します。労災保険は判定という概念すらなく、労働者であれば全員が対象です。同じ従業員でも、制度ごとに結論が変わり得ると理解しておく必要があります。

判定を誤ると、遡っての資格取得手続きと保険料の追納が発生し、本人の手取りが数か月分まとめて減ります。外国人従業員にとっては「説明もなく給与が大きく減った」という体験になり、信頼関係の毀損から早期離職につながるケースも起きています。会社側も、遡及分の事業主負担を一括で求められることになります。

もう一点、在留資格そのものは加入判定に影響しません。判断材料は労働時間、報酬、雇用見込み期間、事業所の適用区分だけで、日本人の加入判定が適切にできていれば同じ手順で処理できます。

影響するのは働き方だけです。特定技能や育成就労はフルタイム就労が前提なので、判定に迷う場面はほぼ生じません。逆に判定が実務上の論点になるのは、就労時間に幅がある層です。就労制限のない身分に基づく在留資格が645,590人、資格外活動許可で働く留学生や家族滞在などの資格外活動が449,324人。合わせて約109万人で、全体の4割強を占めます。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)

健康保険・厚生年金保険の加入条件|フルタイムは原則加入、短時間は要件を個別判定

適用事業所に常用的に使用され、通常の労働者の4分の3以上働く外国人は、原則として健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。この4分の3基準を満たす場合、短時間労働者に適用される企業規模要件や賃金要件は問われません。

ただし、フルタイムなら無条件に加入となるわけではありません。前提として、勤務先が強制適用事業所または任意適用事業所であることが必要です。加えて、厚生年金保険は原則70歳未満、健康保険は原則75歳未満という年齢の上限があり、さらに後述の適用除外(日雇い、2か月以内の有期契約、季節的業務など)に当てはまらないことも条件になります。特定技能・育成就労という在留資格だけで加入が決まるわけでもありません。

労働時間・日数による判定が実務上の論点になるのは、短時間勤務のケースです。基準となるのが4分の3基準で、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上(週40時間勤務が通常なら週30時間以上)であれば被保険者になります。

通常の労働者の4分の3未満で働く短時間労働者については、2026年9月までは、①週の所定労働時間が20時間以上、②2か月を超えて雇用される見込みがある、③所定内賃金が月額8.8万円以上、④学生ではない、⑤厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働いている、という要件を確認します。

月額8.8万円以上の賃金要件は2026年10月に撤廃される予定ですが、雇用期間、学生要件、企業規模要件は残ります。したがって、撤廃後も週20時間以上という条件だけで加入を判断することはできません。

出典:日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大厚生労働省|社会保険の加入対象の拡大について適用事業所と被保険者|日本年金機構 

一方、労働時間を満たしていても次のいずれかに当てはまる人は適用除外です。有期契約や季節性のある分野で受け入れる場合は必ず確認してください。

適用除外となる人

被保険者となる場合

日々雇い入れられる人1か月を超えて引き続き使用されるようになった日から
2か月以内の期間を定めて使用される人当初の期間を超えて雇用される見込みがある場合は契約当初から
季節的業務(4か月以内)に使用される人継続して4か月を超える予定の場合は当初から
臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人継続して6か月を超える予定の場合は当初から
所在地が一定しない事業所に使用される人いかなる場合も被保険者とならない

出典:日本年金機構|適用事業所と被保険者

3か月更新を前提とした有期契約で「最初の2か月は未加入」と処理するのは誤りです。また留学生は週28時間以内の就労が可能なため週20時間以上になりがちですが、昼間部の学生は学生要件により対象外、夜間部・定時制や休学中の学生は対象になります。

雇用保険・労災保険と外国人雇用状況の届出

雇用保険は、原則として、週の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上引き続き雇用される見込みがある場合に適用されます。

ただし、昼間学生は原則として適用除外となるため、資格外活動許可を受けて働く外国人留学生がこの2要件を満たしても、通常は雇用保険へ加入しません。卒業後も同じ事業所で継続して勤務することが決まっている場合や、夜間・定時制・通信制の学生などは対象になる場合があります。

また、ワーキングホリデーで滞在する人も被保険者となりません。主たる入国目的が休暇を過ごすことであり、就労はその付随的な活動として旅行資金を補うために認められたものだからです。ここで注意したいのが本人の特定です。ワーキングホリデーの在留資格は「特定活動」ですが、在留カードには「特定活動」としか記載されず、同じ「特定活動」でも本邦大学卒業者や特定研究等活動などは通常どおり適用対象になります。在留カードの記載だけで判断せず、パスポートに貼付された指定書でワーキングホリデーの指定を確認してください。

この20時間要件も、2024年の雇用保険法改正により2028年(令和10年)10月1日から「週10時間以上」へ引き下げられます。

出典:厚生労働省|令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について

労災保険は、労働時間や雇用形態にかかわらず労働者であれば全員が対象で、保険料は全額事業主負担です。厚生労働省も、労働関係法令・社会保険関係法令は国籍を問わず適用されるとしています。資格外活動の時間超過などがあっても給付対象になり得る点は、現場に必ず共有しておきましょう。

出典:厚生労働省|外国人を雇用する事業主の皆さまへ 外国人労働者の雇用保険手続きをお忘れなく

なお、外国人の雇入れ時・離職時は、外国人雇用状況の届出がハローワークへ義務付けられています。

区分

様式

提出期限

雇用保険の被保険者(雇入れ)雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)翌月10日まで
雇用保険の被保険者(離職)雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)翌日から起算して10日以内
被保険者でない場合外国人雇用状況届出書(様式第3号)雇入れ・離職とも翌月末日まで

在留資格「外交」「公用」の者と特別永住者は対象外です。届出を怠ったり虚偽の届出を行った場合は、30万円以下の罰金の対象となります。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況の届出」について

外国人雇用の社会保険手続き|入社から帰国までの実務フロー

手続きの流れ自体は日本人と共通ですが、外国人特有の追加書類と確認事項があります。在留カードの確認、ローマ字氏名の届出、介護保険の適用除外判定、扶養認定における国内居住要件。この4点を押さえておけば、入社初月の事務は大きく滞りません。

とりわけ落とし穴になりやすいのが、入国から入社までの空白期間です。来日後に住民登録を行った20歳以上60歳未満の人は、厚生年金の被保険者になるまでの間は国民年金第1号被保険者となり、保険料の納付義務が発生します。日本年金機構も、入国から厚生年金加入までの期間退職して厚生年金を喪失した後の期間が未納につながりやすいと注意喚起しています。

出典:日本年金機構|外国籍の従業員を雇用する事業主のみなさまへ

もうひとつ、窓口が三つに分かれる点も共有しておきましょう。国民健康保険・国民年金は市区町村、健康保険・厚生年金は年金事務所、雇用保険と外国人雇用状況の届出はハローワークです。会社が代行できるのは後者二つだけで、市区町村の手続きは本人が行う必要があります。ここを曖昧にしたままだと、国民年金の未納期間が静かに積み上がります。日本語の読み書きに不安がある従業員ほど行政窓口の手続きは後回しになりがちなので、手続き先と持ち物を一覧化した多言語のチェックシートを入社案内に添えておくと確実です。

入社時の手続き|資格取得届・ローマ字氏名届・介護保険の適用除外

入社時は、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を事実発生から5日以内に年金事務所へ提出します。外国人の場合、マイナンバーと基礎年金番号が結び付いていないケースがあるため、あわせてローマ字氏名届の提出が必要になる場面があります。短期在留の外国人については、本人確認として旅券の身分事項ページの写しに加え、資格外活動許可証印・資格外活動許可書・就労資格証明書のいずれかの写しが求められます。

出典:日本年金機構|外国人従業員を雇用したときの手続き

見落とされやすいのが介護保険の適用除外です。40歳以上であっても、入管法の規定による3か月を超える在留期間が決定されていない外国人は介護保険の被保険者になりません。この場合は「介護保険適用除外等該当・非該当届」を事業主経由で提出し、在留期間を証明する書類と雇用契約書などを添付します。届出を怠ると介護保険料が誤って徴収され続けます。

出典:日本年金機構|介護保険の被保険者から外れるまたは被保険者になるための手続き

実務上のチェックポイントは次のとおりです。

  • 在留カードの氏名表記(アルファベット)と、住民票・マイナンバーの氏名表記を突合する
  • 資格外活動許可の有無と時間制限を確認し、シフト設計に反映する
  • 雇用保険の資格取得届では、国籍・地域、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無を備考欄に記入する

氏名表記の不一致は、後の年金記録の統合や脱退一時金の請求時に必ず問題化します。

扶養認定と退職・帰国時の手続き

「本国の家族を扶養に入れたい」という相談は頻繁に出ます。被扶養者の認定には、年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、同居なら被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満という収入要件があります。2025年(令和7年)10月1日以降に認定される19歳以上23歳未満の人については、収入要件が150万円未満に緩和されました。

出典:日本年金機構|従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き

外国人特有の論点が国内居住要件です。2020年(令和2年)4月1日から、収入・生計維持の要件に加えて「日本国内に住所を有する(住民票がある)こと」が必要になりました。例外は、外国で留学する学生、海外赴任に同行する家族など5類型の海外特例要件に限られます。つまり、本国に残した配偶者や親は原則として被扶養者にできません。採用時に説明しないまま入社後に断ると「話が違う」というトラブルに発展します。

出典:日本年金機構|従業員の家族が海外居住の場合の手続き

退職時は資格喪失届を5日以内に提出します。帰国する従業員には、転出届の提出、年金加入記録が分かる書類の持ち帰り、脱退一時金の請求期限(資格喪失日から2年以内)の3点を必ず案内してください。退職後に住民票を残したまま出国すると、国民健康保険の被保険者資格が続いているものとして保険料が賦課され続けることがあります。住民税についても、その年の1月1日時点で住所があれば課税されるため、年の途中で帰国してもその年度分の納税義務は残ります。出国後に納付が残る場合は、納税管理人を定めて市区町村へ届け出る必要があります。

社会保険が免除・調整されるケース|社会保障協定と脱退一時金

「外国人だから社会保険は免除される」という制度は存在しません。しかし、二重加入を避けるための調整と、納めた保険料の一部を帰国時に精算する仕組みは用意されています。前者が社会保障協定、後者が脱退一時金です。

現場で特に多い誤解が、「本国で年金に加入しているから日本では不要」という自己申告をそのまま受け入れてしまうパターンです。免除が成立するのは、協定国の実施機関が発行した適用証明書がある場合に限られます。証明書なしに未加入で処理すると、後日の調査で遡及加入となり、会社が本人負担分まで立て替える事態になりかねません。また、日本国内で直接採用した外国人は、協定国の出身であっても免除の対象にはなりません

なお、厚生年金・健康保険の対象にならない外国人は、住民登録を通じて国民健康保険・国民年金の対象になります。住民基本台帳の対象は、3か月以下の在留期間が決定された者や「短期滞在」「外交」「公用」の在留資格の者などを除く中長期在留者、特別永住者などです。国民年金は日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満で厚生年金に加入していない人が対象で、経済的に納付が難しい場合は保険料免除制度があります。前年所得で判定されるため、来日1年目は該当しやすいとされています。

出典:総務省|外国人住民に係る住民基本台帳制度日本年金機構|外国人にかかる年金制度

社会保障協定による免除|24か国と発効、鍵は「適用証明書」

社会保障協定は、(1) 保険料の二重負担を防止するため加入すべき制度を二国間で調整し、(2) 年金加入期間を通算して受給資格を満たしやすくする、という2つの機能を持ちます。2025年12月のオーストリアとの発効により、発効済の協定国は24か国となりました。協定国から日本へ5年以内の見込みで一時的に派遣される被用者は、本国の実施機関が交付する適用証明書を提示することで日本の制度への加入が免除されます。5年を超えて働く見込みであれば、日本の制度に加入するのが原則です。

出典:日本年金機構|社会保障協定日本年金機構|協定を結んでいる国から日本で働く場合の手続き

注意すべきは、協定の対象制度が国によって異なることです。

日本で加入が免除される制度

協定国

年金のみドイツ、英国、韓国、カナダ、オーストラリア、スペイン、アイルランド、ブラジル、インド、フィリピン、スロバキア、中国、スウェーデン
年金+医療保険アメリカ、ベルギー、フランス、オランダ、チェコ、スイス、ハンガリー、ルクセンブルク
年金+雇用保険フィンランド、イタリア
年金+医療保険+雇用保険オーストリア

年金加入期間の通算については、英国、韓国、中国、イタリアの4か国は対象外です。

出典:日本年金機構|協定を結んでいる国との協定発効時期および対象となる社会保障制度

たとえば中国から派遣された駐在員は、適用証明書があれば厚生年金保険は免除されますが、健康保険は免除の対象外であり日本で加入することになります。

脱退一時金|請求要件と2年の期限、上限5年から8年への改正

日本を出国する外国人が、納めた保険料の一部を精算できるのが脱退一時金です。請求には次の要件をすべて満たす必要があります。

  • 日本国籍を有していないこと
  • 公的年金制度の被保険者でないこと
  • 日本国内に住所を有していないこと
  • 老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
  • 障害手当金などの年金給付の受給権を有したことがないこと
  • 国民年金または厚生年金の被保険者期間が6か月以上あること
  • 最後に被保険者資格を喪失した日から2年以内であること

支給額の計算に用いる被保険者期間の上限は、2021年(令和3年)4月に36か月(3年)から60か月(5年)へ引き上げられました。国民年金(第1号被保険者期間)の脱退一時金額は、2026年4月から2027年3月までの期間では6か月以上で53,760円、60か月以上で537,600円です。

出典:日本年金機構|脱退一時金の制度

さらに2025年成立の年金制度改正法により、上限は5年から8年へ引き上げられます。施行は「公布から4年以内の政令で定める日」とされ、あわせて再入国許可を受けて出国した場合、その有効期間内は支給しないという制限も設けられます。

出典:厚生労働省|年金制度改正法の主な改正内容

なお、脱退一時金を受け取るとその期間は年金加入期間として扱われなくなります。再来日の可能性がある人材は請求しないほうが有利なケースもあるため、選択肢と影響を説明したうえで本人に決めてもらうのが安全です。

外国人の社会保険で企業が押さえるべき注意点

最後に、現場で実際に事故が起きているポイントを整理します。共通するのは、社会保険の不備が「保険の問題」で終わらず、在留資格や受入れ資格の問題に波及するという構造になっています。

日本年金機構も、保険料の未納期間があると在留資格の更新等に影響が出る可能性があると明記しています。従業員本人の問題に見えて、実際には会社の説明不足や手続き漏れが原因であることも少なくありません。

出典:日本年金機構|外国人にかかる年金制度

また、適正な運用は採用競争力にも直結します。適用漏れや説明不足がある会社は同国人コミュニティを通じて評判が広がりやすく、紹介経由の応募が細っていきます。逆に、母国語での丁寧な説明と確実な手続きは、それ自体が定着支援として機能します。

制度面でも、2026年から2028年にかけては改正が立て続けに施行されます。高額療養費制度の見直し、賃金要件の撤廃、企業規模要件の段階的縮小、育成就労制度の開始、雇用保険の週10時間への拡大と続くため、一度整えた運用を「そのまま使い続けられない」前提で体制を組む必要があります。改正のたびに社内規程と説明資料を見直すサイクルを、あらかじめ年間スケジュールへ組み込んでおくのが現実的な備えになります。以下の3点は、担当者が最低限押さえるべき論点です。

未納は在留審査で「消極的な要素」として評価される

出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(2026年6月最終改正)では、納税義務がある場合に当該義務を履行していないことは消極的な要素として評価されると明記されています。国民健康保険料など法令によって納付することとされているものについても、高額の未納や長期間の未納が判明した場合は、悪質なものについて同様に取り扱うとされています。

出典:出入国在留管理庁|在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン

この運用は今後さらに強化されます。2026年1月23日決定の「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」では、2027年(令和9年)3月以降、入管庁が関係機関から国民健康保険料・国民年金保険料の納付情報や地方税の課税情報等の提供をマイナンバーを活用して受けることが盛り込まれました。背景には収納率の差があり、2024年12月末時点で把握を行っている約150自治体では、外国人の国民健康保険料の収納率は63%、全国の全体では94%でした。

出典:内閣官房|外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(概要)(詳細版)内閣官房|外国人の国保保険料収納状況の把握等・入管庁との連携

特定技能・育成就労では、社会保険の適正加入が受入れ要件そのもの

特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、出入国管理関係法令・労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令等を遵守していることが基準として求められます。申請時には社会保険料の納付に係る資料の提出も必要です。

出典:出入国在留管理庁|特定技能外国人受入れに関する運用要領

つまり、社会保険料の滞納や適用漏れがあるとそもそも外国人を受け入れられなくなる可能性があります。一般の在留資格であれば本人側のリスクにとどまるものが、特定技能では会社側の受入れ資格に直結する点が決定的な違いです。

さらに2027年(令和9年)4月1日からは、技能実習に代わる育成就労制度の運用が始まります。育成就労は最大3年、その後に特定技能1号で最大5年というキャリアパスが標準化され、受入れ分野は17分野とされています。在留期間が長期化することで社会保険の被保険者期間も長くなり、脱退一時金の上限8年への引き上げとも整合します。

出典:出入国在留管理庁|育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)

受入れ体制づくりや在留資格・生活面の支援を含めた実務対応については、GTNの外国人材受入れ支援サービスも活用できます。

「加入したくない」と言われたとき|給付内容を示して納得を得る

現場で最も多い相談が、外国人従業員本人からの加入拒否です。社会保険は労使の合意で加入・不加入を選べるものではなく、要件を満たせば当然に被保険者となります。ただし説得よりも、受け取れる給付を具体的に示すほうが納得を得やすいのが実情です。

健康保険に加入していれば医療費の窓口負担は原則3割となり、自己負担が高額になった場合は高額療養費制度で払い戻しを受けられます。病気やケガで働けない期間の傷病手当金、出産時の出産育児一時金も対象です。2026年8月から高額療養費制度が見直され、月額の自己負担上限が引き上げられる一方、長期療養者への配慮として新たに年間上限が設けられました。

70歳未満で標準報酬月額26万円以下の場合、月額上限は原則61,500円、年間上限は53万円です。ただし、標準報酬月額15万円以下であることが確認できた人には年間41万円の上限が適用され、差額は2027年8月以降に償還払いされます。制度のメリットを説明する際は、年間上限の新設だけでなく、月額上限の変更もあわせて伝える必要があります。

出典:全国健康保険協会|令和8年8月から高額療養費制度が見直されます

よくある誤解には、次のように答えるのが有効です。

誤解

正しい説明

保険料が掛け捨てになる被保険者期間6か月以上、資格喪失日から2年以内などの要件を満たせば、帰国時に脱退一時金を請求できる。社会保障協定国であれば、年金加入期間の通算が認められる場合もある
医療費が高いから入らない未加入だと全額自己負担。加入すれば3割負担かつ高額療養費の対象
本国の年金があるから不要免除には協定国からの派遣かつ適用証明書が必要。国内採用は対象外
未納でも問題ない高額・長期の未納は在留審査で消極的な要素として評価される

社内体制としては、入社時オリエンテーションでの説明、多言語資料の整備、空白期間のフォロー、退職・帰国時のチェックリスト運用を仕組み化しておくと確実です。

関連記事

おすすめ記事