
人口減少や少子高齢化の影響により、賃貸住宅市場では入居者の確保が一つの課題となっています。
こうしたなか、在留外国人数の増加を背景に、外国人入居者を受け入れて空室対策につなげるオーナーや管理会社も増えています。
一方で、家賃滞納や生活ルールの違い、言語の壁などに不安を感じ、受け入れをためらうケースも少なくありません。
この記事では、外国人入居者の受け入れを検討している賃貸オーナーに向けて、契約時のポイントから入居後の運用方法まで、実務で役立つ情報をわかりやすく紹介します。

在留外国人数は2025年末に412万5,395人となり、初めて400万人を突破して過去最多を更新しました。
国籍別では、中国が約93万人で最多となり、次いでベトナム約68.1万人、韓国約40.7万人、フィリピン約35.6万人と、アジア地域出身者が大きな割合を占めています。
在留資格別では、永住者が約94.7万人と最も多く、次いで技術・人文知識・国際業務が約47.6万人、留学が約46.5万人、技能実習が約45.7万人の順となっています。
出典:出入国在留管理庁「在留外国人について」
増加の背景には、少子高齢化に伴う国内の労働力不足があります。
政府が「特定技能」制度の対象分野を拡大したことで、製造業や飲食業などの現場で働く外国人が増えました。
留学生や技能実習生を含め、日本で生活基盤を築く外国人は今後も増加が見込まれます。
こうした外国人の多くは民間の賃貸住宅を必要としています。
しかし、言語の壁や保証人の問題から、入居できる物件は限られているのが現状です。
住まいの確保に困る外国人が多い一方で、空室に悩むオーナーも少なくありません。
双方のニーズが合致する市場環境が生まれています。
令和5年の住宅・土地統計調査によると、全国の賃貸用空き家は443万戸にのぼります。
地方都市を中心に、日本人だけをターゲットにした賃貸経営では空室が埋まりにくいケースもあります。
特に築年数が経過した物件や、駅から距離のある物件など、家賃を下げても入居者が決まらないケースでは、ターゲット層の見直しが求められます。
外国人入居者の中には、入居可能な物件であることを優先して物件を探すケースもあります。
そのため、受け入れ対象を広げることで、空室率の改善が期待できます。
出典・参考:総務省「住宅・土地統計調査」

外国人の受け入れが空室対策として有効な理由は、主に3つあります。
1つ目は、入居希望者の母数が増えることです。
日本人だけでなく在留外国人もターゲットに含めることで、物件の露出機会と問い合わせ数の増加が期待できます。
2つ目は、口コミによる紹介効果です。
外国人コミュニティでは、入居可能な物件の情報がネットワークを通じて広がりやすい傾向があります。
1人が入居すると、同じ国籍の知人や同僚に紹介されるケースも少なくありません。
3つ目は、長期入居の傾向です。
在留資格の期間や就労先の都合により、頻繁に引っ越すことが難しく、長期間にわたり居住するケースが見られます。
そういった点から、退去による空室リスクが抑えられる点は、オーナーにとってメリットにつながります。
外国人入居者の受け入れは、入居希望者の母数を広げるという点で、空室対策の一つになり得ます。
日本人入居者だけを対象にしている場合、物件の立地や築年数、設備条件によっては問い合わせが限られることがあります。
一方で、外国人入居者の中には、築年数や駅からの距離よりも「入居できる物件であること」を重視して探す人もいます。
そのため、外国人入居者も受け入れ対象に含めることで、これまで接点を持てなかった層からの問い合わせにつながる可能性があります。
ただし、受け入れ対象を広げれば自動的に空室が埋まるわけではありません。
入居後のトラブルを防ぐためには、保証会社の利用、生活ルールの事前説明、多言語対応の相談窓口など、リスクを管理する仕組みを整えることが大切です。
入居率の向上を目指すうえでは、募集対象の拡大とリスク管理をセットで考える必要があります。

失業や収入の変動による家賃滞納は、国籍を問わず発生し得るリスクですが、外国人の場合は帰国による回収困難が加わるため、オーナーの不安が大きくなることもあります。
この対策として有効なのが、家賃保証会社の利用です。
一般的に、家賃の集金代行や延滞時の督促も保証会社が行うため、オーナーが直接入居者と交渉する必要がなくなります。
外国人入居者を受け入れる際は、家賃滞納リスクに備えるため、保証会社への加入を入居条件とするケースが一般的です。
生活ルールの違反は、文化や習慣の違いが原因で起きるケースもあります。
夜間の騒音、ゴミの分別ミス、共有部分の使い方など、日本では当然とされるルールが外国人には伝わっていないことも挙げられます。
対処法の基本は、入居前のルール説明を徹底することです。
契約時にイラスト付きの多言語マニュアルを渡し、ゴミ出しの曜日・分別方法・静かにすべき時間帯を具体的に伝えます。
動画で説明する方法も有効な方法の一つです。
入居後にルール違反が発生した場合は、早期の声かけが大切です。
放置すると問題が拡大し、他の入居者の退去につながる恐れがあります。
管理会社やサポートサービスを通じて、入居者の母語で注意喚起できる体制を整えておくと、トラブルの長期化を防ぎやすくなります。
言語の壁は、他のトラブルを拡大させる要因にもなります。
設備の故障を伝えられない、契約内容を正しく理解していない、退去時の原状回復について認識がずれているなど、意思疎通の不足は様々な場面で問題を引き起こします。
多言語対応の方法は大きく3つあります。
1つ目は、契約書や重要事項説明書の多言語版を用意することです。
国土交通省が多言語の契約書テンプレートを公開しており、活用できます。
2つ目は、入居中の相談窓口として多言語対応のサポートサービスを導入することです。
3つ目は、管理会社自体が外国語対応できるスタッフを配置することです。
これらのすべてを自前で対応するのは現実的ではありません。
外国人入居に特化したサポート会社を利用すれば、通訳や生活指導をアウトソースすることもできます。

外国人の入居審査の際、確認しておきたいのは、在留資格と収入状況の2点です。
在留カードに記載された在留資格の種類と残りの在留期間を確認し、安定した滞在が見込めるかを確認します。
就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能など)を持つ方は、収入証明として在職証明書や給与明細3か月分の提出を求めることが一般的です。
留学生の場合は、入学許可証や奨学金受給証明書で経済的な裏付けを確認します。
アルバイト収入だけでは家賃の支払い能力を証明しにくいため、親族からの送金証明や経済支援証明書の提出を求めるケースもあります。

入居後に発生する問い合わせや相談に対応できる窓口を設けることは、トラブルの早期解決とオーナーの負担軽減の両面で効果が期待できます。
設備の故障、近隣とのトラブル、契約内容の確認など、入居者からの問い合わせは多岐にわたります。
日本語でのやり取りが難しい入居者の場合、問題が伝わらないまま放置され、状況が悪化することがあります。
多言語対応の相談窓口があれば、入居者は母語で状況を伝えられて問題の内容が正確に把握できるため、対応のスピードと精度の向上が期待できます。
結果として、小さな問題が大きなトラブルに発展する前に解決できるようになります。
自社で多言語スタッフを雇用するのはコスト面で現実的ではないケースが多いため、外部のサポートサービスを導入しているケースもあります。
月額制や対応件数に応じた料金体系のサービスがあり、物件の規模に応じて選択できます。
トラブルが起きた際に慌てないためには、対応フローを事前に決めておくことが大切です。
「誰が」「何を」「どの順番で」対応するのかを明文化しておきます。
基本的な対応フローは以下の流れです。
まず、入居者または近隣住民からの連絡を受ける窓口を明確にします。
次に、内容に応じて管理会社、保証会社、サポートサービスのいずれに対応を依頼するかを判断します。
最後に、対応結果をオーナーに報告し、再発防止策を講じます。
家賃滞納の場合は、保証会社が督促と立替を行います。
生活ルール違反の場合は、管理会社またはサポートサービスが入居者に母語で注意喚起します。
設備故障の場合は、管理会社が修繕業者を手配します。
このフローを文書化しておけば、担当者が変わっても一貫した対応ができます。
また、入居者にもトラブル時の連絡先カードを渡しておくと、適切な窓口に直接連絡が入るため、対応の遅れを防げます。
在留外国人数は412万人を超え、賃貸住宅の需要は年々拡大しています。
日本人だけをターゲットにした賃貸経営では空室が埋まりにくい状況の中、外国人入居者の受け入れは現実的な空室対策の一つです。
入居率を上げるために押さえるべきポイントは以下の5点です。
外国人の受け入れはリスクがゼロになるわけではありません。
しかし、適切な管理体制やサポートを整えることで、リスクを抑えながら安定した賃貸経営を目指しやすくなります。
まずはサポート内容を把握しておくと、空室対策の選択肢が広がり、判断がしやすくなります。