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家賃値上げの相場は?適正額の考え方と通知・交渉・退去対策を解説

物価上昇や維持管理コストの増加を背景に、家賃の値上げを検討するオーナーも少なくありません。

家賃値上げに一律の相場はなく、周辺相場や現在の賃料、物件の状況などを踏まえて、適正額を判断する必要があります。

また、家賃を値上げする際は、借地借家法に定められた要件を踏まえ、値上げの根拠を明確にすることが重要です。値上げ額や進め方によっては、入居者の退去やトラブルにつながる可能性もあります。

本記事では、家賃値上げの相場の考え方や適正額を判断する基準、値上げが認められる法的根拠を解説します。

さらに、入居者への通知や交渉のポイント、退去・空室リスクを抑える方法、外国人入居者への対応まで、賃貸経営に役立つ実務知識をまとめました。

家賃値上げの相場は?適正額を判断する基準

家賃値上げに一律の相場はありません。周辺相場や現在の賃料、維持管理コストなどを比較し、物件ごとに適正額を判断することが重要です。

値上げ幅が周辺相場から大きく外れると、入居者の反発や退去リスクが高まる可能性があります。

そのため、周辺の募集賃料や現在の契約賃料、物件条件などを確認したうえで、値上げ額を検討する必要があります。

エリア別にみる家賃値上げの相場感

2026年時点の賃貸市場では、都市部を中心に募集家賃の上昇傾向がみられます。

アットホーム株式会社が公表した2026年6月の「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」によると、30㎡以下の物件では、東京23区・大阪市・名古屋市のいずれも平均募集家賃が前年同月を上回っています。

エリアマンション(30㎡以下)アパート(30㎡以下)
東京23区+12.4%+11.5%
大阪市+7.3%+4.8%
名古屋市+7.3%+8.5%

※2026年6月の平均募集家賃の前年同月比

特に東京23区では、30㎡以下の物件でマンションが前年同月比12.4%、アパートが11.5%上昇しており、大阪市や名古屋市と比較しても高い上昇率となっています。

ただし、これらは新たに入居者を募集する際の「募集家賃」の動向であり、既存入居者の家賃を同じ割合で値上げできることを示すものではありません。

実際に家賃の増額を検討する際は、こうした市場動向に加えて、周辺にある類似物件の賃料や現在の家賃との差、物件の立地・築年数・設備などを踏まえて判断することが重要です。

出典:アットホーム株式会社「2026年6月 全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」

値上げが認められる法的根拠(借地借家法第32条)

借地借家法第32条では、公租公課の増減、土地・建物価格や経済事情の変動、近傍同種の建物の賃料などにより、現在の賃料が不相当となった場合、貸主・借主は将来に向かって賃料の増減を請求できます。

ただし、一定期間賃料を増額しない旨の特約がある場合は、その期間中は特約に従います。

また、定期建物賃貸借に賃料改定に関する特約がある場合は、借地借家法第32条が適用されないため、増額を検討する前に契約の種類と賃料改定条項を確認する必要があります。

「不相当」と判断される主な根拠は、以下の3つです。

  • 固定資産税や都市計画税といった公租公課の上昇
  • 物価上昇やインフレなど経済事情の変動
  • 周辺の同種物件と比較した際の賃料の乖離(近傍同種の賃料)
     

これらの根拠を客観的なデータで示すことが、値上げ交渉を円滑に進めるための第一歩です。根拠が曖昧なままでは、入居者との交渉が難航するだけでなく、法的手続きに発展した場合にも不利になります。

出典:e-Gov法令検索「借地借家法」第32条・第38条第9項

家賃値上げが必要になる主な理由と背景

家賃の増額請求には、現在の賃料が不相当になったことを示す客観的な根拠が重要です。

近年の経済環境の変化により、多くのオーナーが値上げを検討せざるを得ない状況に置かれています。ここでは、値上げの背景となる代表的な要因を整理します。

固定資産税・都市計画税の上昇

固定資産税は3年に一度の評価替えによって見直されます。2024年度の評価替えでは、建築資材価格の上昇などを背景に、再建築費評点補正率が木造1.11、非木造1.07とされました。

ただし、評価額や税額は経年減価や各種負担調整措置の影響も受けるため、すべての物件で固定資産税が増加するわけではありません。

一方で、物価上昇や修繕費、人件費などの維持管理コストが上昇しており、賃貸経営において収益性の維持が課題となるケースもみられます。

出典:総務省 自治税務局 資産評価室「固定資産評価のしくみについて(家屋評価)」

修繕費用・管理コストの増加

2026年3月時点では、2021年1月比で建築部門の資材価格が平均で約38%上昇しています。

外壁塗装や給排水管の更新といった大規模修繕では、数年前の見積もりと比べてコスト増となるケースも珍しくありません。

さらに、管理業務の人件費や設備のメンテナンス費用も上昇傾向にあります。

こうした維持管理コストの増加は、家賃収入とのバランスを見直す合理的な理由となります。

出典:一般社団法人 日本建設業連合会「建設資材高騰・労務費の上昇等の現状」

周辺相場との乖離が生じたケース

長期入居者がいる物件では、契約時の賃料のまま据え置かれていることがあります。

一方で、同じエリアの新規募集物件は相場に合わせて賃料が設定されるため、既存入居者の賃料と周辺相場の間に乖離が生じます。

この乖離が大きくなると、物件の収益性が低下するだけでなく、同じ建物内での賃料格差が問題になる場合もあります。周辺相場の調査は、不動産ポータルサイトや近隣の仲介会社への聞き取りで確認できます。

家賃値上げの適切な手順と通知方法

家賃値上げは、手順を誤ると入居者との信頼関係を損ない、退去やトラブルにつながります。法的に有効な手続きを踏みながら、入居者の理解を得るための実務的な進め方を解説します。

値上げ通知書の書き方と送付時期

値上げを検討する場合は、入居者が検討・協議する期間を確保できるよう、余裕をもって書面で通知するのが望ましいでしょう。

契約更新に合わせて提示する場合には、契約書や管理会社の運用も確認します。

通知書には、現行賃料、改定後の賃料、値上げの理由、適用開始日を明記します。

通知した内容や到達時期を明確に残す必要がある場合には、内容証明郵便や配達証明を利用する方法もあります。

通知書は形式的に正しいだけでなく、値上げの理由を具体的に記載することで、入居者の理解を得やすくなります。

例えば「固定資産税が〇%上昇したため」「周辺相場と比較して月額〇〇円の乖離が生じているため」など、数値を交えた説明が効果的です。

入居者との交渉で押さえるべきポイント

値上げ通知を送った後、入居者から異議が出る可能性は十分にあります。交渉の場では、感情的なやり取りを避け、客観的なデータに基づいた説明を心がけます。

交渉を円滑に進めるためのポイントは以下の通りです。
 

  • 周辺相場のデータを書面で提示する
  • 固定資産税の通知書や修繕費の見積書など、根拠資料を準備する
  • 入居者にとってのメリット(設備改善の予定など)を併せて伝える
  • 一方的な説明に終始せず、入居者の意見にも耳を傾ける
     

借地借家法第32条に基づく賃料増額請求は、法律上の要件を満たす場合、入居者の承諾がなくても、将来に向かって客観的に相当な額について効力が生じるとされています。

そのため、賃料増額請求そのものに入居者の合意が必須というわけではありません。

ただし、増額の必要性や適正な賃料額について争いが生じる可能性があるため、請求の根拠を丁寧に説明することが重要です。

また、増額請求を行う際は、単なる協議の申入れと区別できるよう、賃料を増額する意思を明確にし、増額後の賃料や適用開始日などを書面で通知しておくとよいでしょう。

交渉が難航する場合は、入居者とのやり取りを記録しておくことも大切です。後に調停や訴訟に進んだ場合の資料となる可能性があります。

増額の適否・金額について争いがある場合の法的手続き(調停・訴訟)

賃料増額請求について訴訟を提起する場合は、原則として先に民事調停を申し立てる必要があります。

調停では、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が双方の主張を聞き、話し合いによる解決を図ります。

借地借家法第32条に基づく賃料増額請求は、契約更新時に限らず、契約期間中に行うこともできます。ただし、増額の要件や適正な賃料額について争いがある場合は、調停や訴訟で解決を図ることになります。

増額について協議が調わない間、借主は、増額を正当とする裁判が確定するまで、自らが相当と認める額の賃料を支払うことができます。

ただし、裁判でその支払額を上回る賃料が相当と判断された場合は、不足額に加え、不足額に対する年10%の割合による支払期後の利息を支払わなければなりません。

また、貸主が賃料の受領を拒否した場合、借主は一定の要件のもとで弁済供託を行うことができます。

そのため、貸主側も、提示した増額後の賃料ではないことを理由に従前の賃料などの受領を拒否しても、直ちに増額後の賃料を回収できるわけではない点に注意が必要です。

調停で合意に至らなかった場合は、訴訟に進むことがあります。訴訟では不動産鑑定士による鑑定が行われる場合もあり、費用や時間がかかる可能性があるため、調停段階での解決も選択肢の一つです。

段階的な値上げで入居者の負担感を軽減する方法

一度に大幅な値上げを行うのではなく、入居者との合意によって段階的に賃料を引き上げる方法もあります。

例えば、月額5,000円の値上げを検討している場合、初年度に2,000円、翌年度に3,000円と段階的に引き上げる方法です。急激な負担増を避けることで、入居者の理解を得やすくなる可能性があります。

入居者との合意によって段階的な値上げを実施する場合は、後のトラブルを防ぐため、最終的な賃料や各段階の改定額、改定時期などを書面で明確にしておくとよいでしょう。

契約更新時と新規募集時の値上げ戦略の違い

既存入居者への値上げと、新規募集時の賃料改定では、取り得るアプローチが異なります。

既存入居者への賃料増額請求は、契約更新時に限らず、契約期間中に行うことも可能です。ただし、実務上は契約更新のタイミングに合わせて賃料改定を提示する方法もあります。

更新案内と同時に改定賃料を通知することで、入居者が検討する時間を確保できます。

一方、新規募集時には、周辺相場に合わせた賃料設定が可能です。退去があった際に新規募集賃料を適正水準に引き上げることで、物件全体の収益性を段階的に改善する方法もあります。

いずれの場合も、同じ建物内での賃料格差が大きくなりすぎないよう注意が必要です。既存入居者が新規入居者との賃料差を知った場合、不公平感からトラブルに発展する可能性があります。

外国人入居者への家賃値上げ対応と注意点

外国人入居者に対する家賃値上げでは、言語の壁や文化的な背景への配慮が求められます。日本の賃貸慣行に馴染みのない入居者に対して、どのように値上げを伝え、合意を得るかが実務上の課題です。

言語の壁を超える値上げ通知の伝え方

賃貸借契約や家賃改定に対する理解度は、入居者の日本での居住経験や日本語能力などによって異なります。

家賃の値上げについて理解を得るためには、値上げの理由や根拠、契約上の取り扱いなどを分かりやすく説明することが大切です。

必要に応じて、相手の日本語能力に配慮した説明や資料を用意するなど、個々の入居者に合わせて対応しましょう。

また、書面による通知だけでなく、質問や相談ができる機会を設けるなど、入居者とのコミュニケーションを図りながら進めることも重要です。

入居者の理解に配慮した交渉のポイント

賃貸借契約や家賃改定に対する理解は、入居者の日本での居住経験や日本語能力などによって異なります。

例えば、契約書に記載された条件を厳格に守る文化圏では、値上げの法的根拠と正当性を丁寧に説明することが合意形成のカギとなります。

相手の文化的な背景を一方的に決めつけるのではなく、個々の入居者の反応に応じた柔軟な対応が求められます。

書面での通知に加え、対話の機会を設けること自体が信頼関係の維持につながります。

多言語サポートを活用した情報伝達

外国人入居者に家賃の値上げを案内する際は、日本語能力に応じて、伝え方の工夫が必要になる場合があります。

値上げの理由や条件について十分な理解が得られるよう、必要に応じて多言語対応の生活サポートサービスなどを活用するのも一つの方法です。

例えば、多言語対応のコールセンターを利用することで、入居者からの問い合わせに対応したり、値上げの理由や契約内容について理解をサポートしたりできます。

こうしたサービスを活用すれば、オーナーや管理会社の多言語対応にかかる負担を軽減しながら、入居者との円滑なコミュニケーションにつなげられます。

家賃値上げに失敗するパターン

一定の要件を満たす場合、貸主は賃料の増額を請求できることがあります。一方で、失敗するケースにはいくつかの共通した傾向があり、事前に把握しておくことで回避が可能です。

相場を無視した過度な値上げ

周辺相場を調査せずに大幅な値上げを提示するのは、一つの失敗パターンです。「物価が上がったから」「修繕費がかかったから」という理由だけでは、入居者の納得を得ることは難しいです。

値上げ幅が周辺相場と比較して妥当かどうかは、近隣の同条件物件の賃料を複数調査することで確認できます。

不動産ポータルサイトや、地元の管理会社への問い合わせが有効です。

相場から大きく外れた値上げを提示した場合、調停や訴訟に発展しても認められない可能性が高く、時間と費用の無駄になります。

通知や説明が不十分なまま進めるケース

口頭だけで値上げを伝えたり、直前になって通知するケースは、入居者の反発を招きやすい典型例です。法的には口頭でも意思表示は有効ですが、証拠が残らないため後のトラブルにつながります。

通知は書面で行います。外国人入居者の場合は、母語での通知や補足説明がなければ、内容が伝わらないまま不信感だけが残る結果になりかねません。

入居者との関係悪化を招く対応例

普通建物賃貸借契約では、家賃の値上げに応じないことだけを理由に、オーナーが当然に更新を拒否できるわけではありません。

オーナー側から更新を拒否する場合には、借地借家法上の正当事由が必要です。
一方、定期建物賃貸借契約は契約期間の満了によって終了する仕組みであり、普通建物賃貸借契約とは取り扱いが異なります。

また、管理会社を通さず直接入居者と対立するような交渉を重ねると、居住環境の悪化や、他の入居者にまで悪影響が及ぶ場合があります。

値上げ交渉はあくまで「協議」であるという姿勢を保ち、管理会社や専門家に対応を任せることが、トラブルを防ぐための実務的な判断です。

家賃値上げと空室対策を両立させる考え方

家賃を値上げした結果、入居者が退去してしまえば、空室期間中の賃料収入はゼロになります。値上げと入居率の維持を両立させるには、退去後のリカバリー策まで見据えた計画が必要です。

値上げ後の空室リスクを減らす施策

値上げに伴う退去が発生した場合、空室期間の長期化は避けたいポイントです。

例えば従来の家賃が月7万円の場合、1か月空室になると7万円の収入減となります。月3,000円の値上げ分だけでこの損失を補うには、単純計算で約23か月かかります。

空室リスクを減らすためには、以下の対策を事前に準備しておくことが有効です。

  • 値上げ前に入居者の意向を確認し、退去の可能性を把握する
  • 退去が見込まれる場合は、値上げと並行して新規募集の準備を進める
  • 複数の仲介会社と連携し、募集チャネルを広げる
  • 物件の魅力を高める設備投資を値上げのタイミングに合わせて実施する
     

外国人入居者の受け入れで入居率を維持する方法

値上げ後に空室が発生した場合、入居者の対象範囲を広げることで早期の空室解消が期待できます。

特に外国人入居者の受け入れは、有効な空室対策として注目されています。

日本に在留する外国人は年々増加しており、賃貸住宅への需要は高まり続けています。

外国人入居者の受け入れを検討する際は、円滑な賃貸管理に向けて必要な体制を整えておくことが大切です。

例えば、家賃の支払いや言語によるコミュニケーション、生活ルールの説明などについて、あらかじめ対応方法を検討しておくとよいでしょう。

家賃保証サービスや多言語対応のサポートサービスなどを、物件や入居者の状況に応じて活用する方法もあります。 

保証・サポート体制の整備で安定運用を実現する

家賃値上げと外国人入居の受け入れを組み合わせるには、オーナーの手間を増やさない仕組みが欠かせません。

家賃保証、多言語サポート、入居者対応を一括で提供するサービスを活用すれば、運用負担を抑えながら入居率と収益性の両方を維持できます。

値上げによる収益改善を目指しつつ、空室リスクの備えとして外国人入居の受け入れ体制を整えておくことは、長期的な賃貸経営の安定につながる選択肢の一つです。

外国人入居のリスクを抑えた運用方法は、専門サービスで確認できます。まずはサポート内容を把握しておくと、値上げ後の空室対策を検討する際に判断しやすくなります。


GTNの家賃保証サービスは、外国人専門で20年の実績を持ち、約43,000社の不動産会社と提携しています。24時間365日対応のライフサポート「TRUST CALL24」を組み合わせることで、給湯器の使い方や近隣トラブルといった、管理会社が対応しきれない入居後の相談を最大25言語で引き受けられます。

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