特定技能の転職を徹底解説!条件・手続き・必要書類・リスク総まとめ - GTN MAGAZINE
日本語
日本語
English

特定技能の転職を徹底解説!条件・手続き・必要書類・リスク総まとめ

自社の特定技能外国人から突然「転職したい」と申し出があった。あるいは、他社で働いていた特定技能外国人を中途採用したい。

いずれのケースでも受入れ企業の担当者がまず直面するのが、「何を、いつまでに、どこへ届け出るのか」という実務の壁です。

特定技能制度では外国人材の転職が原則として認められています。しかし「認められている」ことと「すぐ働ける」ことは別問題です。

転職のたびに在留資格変更許可申請が必要で、許可が下りるまでは新しい職場で1日たりとも就労させることができません。この点を誤ると、企業側が不法就労助長罪に問われるリスクすらあります。

さらに2026年に入り、対象分野も大きく動きました。多くの解説記事が「16分野」のまま更新されていませんが、2026年1月23日の閣議決定により、制度上の対象分野は19分野に拡大しています。

出典:出入国在留管理庁|特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針の決定(令和8年1月23日)

本記事では、転職が認められる範囲と最新の対象分野、3者それぞれの届出と期限、稼働開始までのスケジュールと費用、そして企業が負う法的リスクまでを、社内説明にそのまま使えるレベルで整理します。

情報はすべて出入国在留管理庁および厚生労働省の一次情報に基づいており、記事末尾に出典を一覧化しています。

特定技能外国人の転職は原則可能|企業がまず押さえる基本

特定技能外国人の転職は、同一の業務区分内、または試験等により技能水準の共通性が確認されている業務区分間であれば可能です。それ以外の分野・業務区分へ移る場合も、転職先分野の技能評価試験に合格すれば認められます。

ただし転職のたびに在留資格変更許可申請が必要で、許可が下りるまで新しい職場では就労できません。この2点が、企業がまず押さえるべき原則です。

技能実習制度では原則として実習先の変更が認められていませんでした。これに対し特定技能制度は、日本人と同じように労働者本人の意思で職場を選べる制度設計になっています。

つまり企業側から見れば、特定技能外国人は「引き止められない人材」であると同時に、「他社から採用できる人材」でもあるということです。

実際、特定技能1号の在留者数は令和8年3月末時点の速報値で404,527人に達しており、分野別では飲食料品製造業96,367人、介護74,745人、工業製品製造業59,038人、建設51,055人、外食業47,714人が上位を占めます。国内に十分な母集団が形成された今、転職者の採用は現実的なチャネルです。

出典:出入国在留管理庁|特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)

転職が発生する場面は、実務上おおむね次の3パターンに整理できます。

パターン

内容

企業側の主な留意点

自己都合退職待遇や職場環境への不満、キャリアアップ志向による本人都合の退職転職支援義務は発生しない。受入れ困難に係る届出も不要
会社都合退職経営上の都合、事業縮小、倒産などによる契約終了転職支援義務が発生。受入れ困難に係る届出も必要
技能実習・育成就労からの移行実習修了に伴い、別企業で特定技能1号として就労開始厳密には転職ではなく在留資格の変更。試験免除の可否確認が必要

いずれのパターンでも、届出の種類と期限が変わります。まず自社のケースがどれに当たるかを確定させてから、手続きに着手してください。

転職が認められる根拠と、技能実習・育成就労との違い

特定技能制度が転職を認めているのは、この在留資格が「雇用契約に基づく就労」を前提とした制度だからです。

出入国在留管理庁の「特定技能制度に関するQ&A」では、受入れ機関または分野を変更する場合に在留資格「特定技能」の変更許可申請が必要である旨が明示されています。裏を返せば、申請さえ行えば所属機関の変更そのものは制度上想定されているということです。

一方、技能実習制度は「技能移転による国際貢献」を目的とし、実習計画に基づく在留であるため、原則として実習先の変更ができませんでした。

この技能実習制度は廃止され、2027年(令和9年)4月1日から「育成就労制度」の運用が開始されます。育成就労では、同一業務区分内であること、同一機関での就労期間が分野ごとに定める期間を経過していること、技能検定試験基礎級等および一定水準以上の日本語試験に合格していることなどの条件を満たせば、本人の意向による転籍が認められます

転籍制限期間は分野ごとに1年から2年で設定されています。介護、建設、工業製品製造業、造船・舶用工業、自動車整備、飲食料品製造業、外食業、資源循環の8分野では2年、ビルクリーニング、リネンサプライ、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、林業、木材産業の9分野では1年とされています。

出典:出入国在留管理庁|育成就労制度における本人意向による転籍の制限について

育成就労が始まれば、これまで「動かない層」だった実習生層にも一定の流動性が生まれます。中期の採用計画・定着計画を立てるうえで押さえておきたい変化です。

転職できる範囲は「同一分野・同一業務区分」が原則

ここは誤解が多いポイントです。「異なる分野への転職はできない」と説明する記事が散見されますが、正確ではありません

出入国在留管理庁のQ&A(Q13)では、特定技能外国人の転職は「同一の業務区分内、又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」で可能とされています。

以下のように整理できます。

ケース

転職の可否

追加で必要になること

同一分野・同一業務区分在留資格変更許可申請のみ
技能水準の共通性が確認されている業務区分間在留資格変更許可申請のみ
上記以外の分野・業務区分へ移る転職先分野の技能評価試験に合格したうえで在留資格変更許可申請

分野をまたぐ転職も、原則として、転職先分野の技能評価試験等に合格し、在留資格変更許可を受ければ可能です。ただし、分野別の受入れ上限に伴う停止措置が実施されている場合は、この限りではありません。

2026年8月時点の外食業分野では、外食業の特定技能1号外国人が別の外食業企業へ転職する申請は審査されていますが、2026年4月13日以降に受理された他分野・他の在留資格から外食業への変更申請は、原則として不許可とされています。転職先分野の最新の審査状況を、申請前に確認する必要があります。

ただし試験は分野ごとに実施時期が決まっているため、試験日程が採用スケジュールを直接左右する点に注意してください。採用面接の段階で、候補者がどの分野・どの業務区分の試験に合格済かを必ず確認しましょう。

なお、日本語試験については既に合格している場合の取り扱いが分野により異なるため、個別ケースでは管轄の出入国在留管理局または登録支援機関への確認を推奨します。

【2026年最新】特定技能の対象分野は19分野へ拡大

多くの解説記事が「12分野」「16分野」のまま更新されていませんが、2026年1月23日の閣議決定により、特定技能の対象分野は19分野となりました

ただし重要な注意点があります。19分野すべてで今すぐ受け入れられるわけではありません。

新たに追加された3分野のうち、リネンサプライは2026年に関係省令等および運用要領別冊が整備され、受入れが可能になっています。一方、物流倉庫と資源循環は「省令等の準備が整い次第受入れが可能となる」段階で、現時点では受入れができません。

したがって制度上は19分野、実際に受入れが可能なのは17分野という書き分けが正確です。

区分

分野

受入れ可能(17分野)介護/ビルクリーニング/リネンサプライ/工業製品製造業/建設/造船・舶用工業/自動車整備/航空/宿泊/自動車運送業/鉄道/農業/漁業/飲食料品製造業/外食業/林業/木材産業
準備中(2分野)物流倉庫/資源循環

出典:出入国在留管理庁|特定技能制度における分野別運用方針

分野の追加は、転職市場の広がりに直結します。自社の業種が新設分野に該当する場合、これまで採用できなかった層にアプローチできるようになるためです。

また、同じ2026年1月23日の閣議決定で、特定技能の受入れ見込数は合計805,700人に再設定されました。この見込数は「外国人受入れの上限数として運用する」と基本方針に明記されており、分野によっては上限到達により在留資格認定証明書の交付が一時停止される可能性があります。採用計画を立てる際は、自社分野の受入れ状況も併せて確認してください。

出典:出入国在留管理庁|分野別運用方針の主要な記載事項(令和8年1月23日閣議決定)

なお、特定技能2号の対象は11分野です。介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環の8分野は2号の対象外なので、長期雇用を前提とした採用を検討している場合は自社分野が対象かを確認してください。介護分野については、介護福祉士の資格取得により在留資格「介護」へ移行するルートが用意されています。長期雇用を前提とした採用を検討している場合は、この点も確認が必要です。

 

転職に必要な要件|外国人本人側と受入れ企業側

在留資格変更許可申請の審査では、外国人本人の要件と、受入れ企業(特定技能所属機関)の基準の両方が見られ、どちらか一方でも欠けると不許可になります。

中途採用では「本人が特定技能を持っているから大丈夫だろう」と考えがちですが、審査の実質的なハードルは企業側にあるケースが少なくありません。自社が受入れ機関としての基準を満たしているかを、内定を出す前に確認しておきましょう。

要件は大きく次の4層に分かれます。

主な内容

本人の技能・日本語分野・業務区分に対応する技能評価試験、日本語試験の合格実績
本人の在留状況在留期間が残っていること、税・社会保険料の滞納がないこと
企業の適格性労働関係法令・社会保険関係法令の遵守、欠格事由に該当しないこと
雇用契約・支援体制日本人と同等以上の報酬、支援計画の策定と実施体制

出典:出入国在留管理庁|特定技能ガイドブック

さらに2025年4月1日施行の省令改正により、特定技能所属機関には地方公共団体が実施する共生社会の実現に向けた施策への協力が義務化されました。支援計画も地域の共生施策を踏まえて作成・実施することが求められます。新たに受入れを始める企業は、この点も要件に含まれることを押さえておいてください。

 

外国人本人が満たすべき要件

本人側で確認すべき事項は、面接段階でほぼ洗い出せます。以下をチェックリストとして使ってください。

技能水準の証明として、転職先の分野・業務区分に対応する技能評価試験の合格証明書、または技能実習2号を良好に修了したことを示す書類が必要です。分野・業務区分が変わる場合は、新たな試験合格が前提になります。

特定技能1号の日本語能力要件は、分野・業務区分によって異なります。多くの既存分野ではJFT-BasicまたはJLPT N4以上などが基準となりますが、タクシー・バスおよび鉄道の運輸係員ではB1相当・JLPT N3以上、介護では一般の日本語試験に加えて介護日本語評価試験が必要です。また、リネンサプライなどの新分野では「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と定められています。

転職時には、転職先の分野別運用方針で、対象となる日本語試験と必要水準を確認してください。。

在留期間の残存も重要です。特定技能1号の在留期間は「3年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定する期間」で、通算上限は5年。通算5年に近づいている候補者は、転職しても働ける期間がわずかしか残っていない可能性があります。在留カードの記載と通算就労期間を必ず確認してください。

在留状況の良好性として、税金や社会保険料の滞納がないこと、資格外活動などの違反歴がないことも審査対象です。住民税の課税証明書・納税証明書の提出を求められるため、内定段階で本人に取得を依頼しておくとスムーズです。

受入れ企業(特定技能所属機関)が満たすべき基準

企業側の基準は、大きく「機関の適格性」「雇用契約の適正性」「支援体制」の3点です。

機関の適格性では、労働関係法令・社会保険関係法令を遵守していること、特定技能雇用契約の締結日前1年以内(および締結日以後)に受け入れる外国人と同種の業務に従事していた労働者を非自発的に離職させていないこと、1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由による行方不明者を発生させていないこと、入管法・労働法令に関する一定の違反歴がないこと、暴力団関係者でないことなどが求められます。

雇用契約の適正性では、日本人が同等の業務に従事する場合と同等額以上の報酬であることが核心です。フルタイム雇用であること、一時帰国のための有給休暇取得への配慮、報酬の口座振込などの要件もあります。

支援体制については、1号特定技能外国人支援計画の策定と実施が必要です。支援計画には次の10項目が含まれます。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国する際の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

この支援を自社で実施できない場合は、登録支援機関へ委託できます。ここで押さえておきたいのが、育成就労関連法による改正で、1号特定技能外国人支援の外部委託先が登録支援機関に限定されるという点です。無登録の業者へ委託している場合は、見直しが必要になります。

あわせて、2027年(令和9年)4月1日施行で支援体制の要件そのものも厳格化されます。事業所ごとに常勤の役員または職員から支援責任者等を1名以上選任すること、支援業務に従事できる者を支援責任者等に限定すること、支援責任者に養成講習の受講を義務付けること(当分の間は猶予あり)などが定められました。自社支援を続けるか委託に切り替えるかは、この要件を踏まえて判断してください。

出典:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について(令和9年4月1日施行)

支援体制の整備や登録支援機関の選定に不安がある場合は、外国人材の受入れ支援サービスのように、支援計画の策定から実施まで一貫して対応できる事業者への相談も選択肢になります。

なお委託した場合でも、外国人材に対する最終的な責任は受入れ企業にあります。委託して終わり、とはならない点に注意してください。

【立場別】転職時に必要な手続きと届出の全体像

特定技能外国人が転職する際、手続きは「前の受入れ企業」「新しい受入れ企業」「外国人本人」の3者がそれぞれ行います。どれか1つでも漏れると、届出義務違反や在留資格の不許可につながります。

全体像を先に押さえておきましょう。

実施者

主な手続き

提出先

期限

前の受入れ企業特定技能雇用契約に係る届出(終了)出入国在留管理庁14日以内
前の受入れ企業受入れ困難に係る届出(会社都合の場合)出入国在留管理庁14日以内
前の受入れ企業支援委託契約を終了・変更した場合の届出出入国在留管理庁14日以内
前の受入れ企業外国人雇用状況の届出(離職)ハローワーク被保険者は離職翌日から10日以内
新しい受入れ企業支援計画の策定、事前ガイダンス、健康診断申請前
新しい受入れ企業雇用契約の締結(届出ではなく、在留資格変更許可申請の審査対象)出入国在留管理庁申請前
新しい受入れ企業外国人雇用状況の届出(雇入れ)ハローワーク被保険者は翌月10日まで
外国人本人在留資格変更許可申請地方出入国在留管理局就労開始前(必須)
外国人本人所属(契約)機関に関する届出出入国在留管理庁14日以内

出典:厚生労働省|外国人雇用状況の届出について

この中で唯一「許可」を要するのが在留資格変更許可申請で、これが下りるまで新しい職場での就労は一切できません。他は届出のため許可を待つ必要はありませんが、届出の提出で受入れ側の対応が終わるわけではありません。報酬の同等性や支援計画の実施といった受入れ企業側の基準は、届出とは別に、受入れが続く限り満たし続ける必要があります。

前の受入れ企業(送り出す側)が行う手続き

社員から転職の申し出を受けた場合、企業側が最初に行うべきは事実確認と退職日の調整です。そのうえで、届出に着手します。

自己都合退職か会社都合かで、提出書類が変わります。ここは実務上とくに間違いやすいポイントです。

自己都合退職の場合は、特定技能雇用契約に係る届出(契約終了)のみで足り、受入れ困難に係る届出は不要です。

これに対し、経営上の都合など雇用主側の事由で契約を終了する場合は、事由が生じた時点で受入れ困難に係る届出を提出し、実際に契約が終了した後に雇用契約終了の届出を提出します。届出が2段階になる点に注意してください。

登録支援機関に支援を委託していた場合は、支援委託契約に係る届出も必要です。

これらの随時届出は、いずれも事由が生じた日から14日以内が期限です。届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合、一定期間にわたり特定技能雇用契約を締結できなくなるほか、罰金刑や過料の対象となる可能性があります(入管法第71条の4第1号、第77条の2)。

加えて、ハローワークへの外国人雇用状況の届出も忘れないでください。雇用保険の被保険者であれば離職の翌日から起算して10日以内、被保険者でない場合は離職した月の翌月末日までです。こちらを怠ると30万円以下の罰金の対象となります。

なお2025年4月1日から定期届出が四半期ごとから年1回に簡素化されていますが、随時届出の14日以内という期限は変わっていません。

出典:出入国在留管理庁|令和7年4月1日施行の省令改正について

新しい受入れ企業(受け入れる側)が行う手続き

転職者を受け入れる企業は、在留資格変更許可申請の前に相当量の準備が必要です。申請書類の多くは企業側が用意するものであり、ここでの遅れがそのまま稼働開始日の遅れになります。

まず雇用契約の締結です。報酬額が日本人と同等以上であることを説明できる資料(賃金規程、比較対象となる日本人社員の賃金など)も併せて準備します。

次に1号特定技能外国人支援計画の策定です。自社支援か登録支援機関への委託かを決め、委託する場合は支援委託契約を締結します。

事前ガイダンスは、雇用契約締結後・在留資格変更許可申請前に実施します。労働条件、活動内容、保証金徴収の有無などを本人が理解できる言語で説明し、記録を残してください。健康診断の受診も申請前に必要です。

そのうえで必要書類を揃え、本人の在留資格変更許可申請を支援します。企業側の主な提出書類は、特定技能雇用契約書の写し、雇用条件書、支援計画書、登記事項証明書、決算文書の写し、労働保険・社会保険の納付状況を示す書類、税の納付証明書などです。

許可後は、ハローワークへの外国人雇用状況の届出を提出します。期限は、雇用保険の被保険者であれば雇入れの翌月10日まで、被保険者でない場合は雇入れた月の翌月末日までです。

分野特有の追加手続きに注意

見落としやすいのが、分野ごとに上乗せされる手続きです。分野を問わず共通の手続きだけを想定していると、スケジュールが1か月以上ずれ込むことがあります。

分野

追加で必要になる主な手続き

建設国土交通省(地方整備局)への建設特定技能受入計画の認定申請、JAC(建設技能人材機構)への加入、外国人就労管理システムでの受入報告
介護介護技能評価試験・介護日本語評価試験の合格確認、事業所単位での届出
農業・漁業派遣形態で受け入れる場合の派遣元・派遣先要件の確認
各分野共通分野別協議会への加入(令和6年6月15日以降の在留諸申請から、受入れ前の加入が必要。手続に時間を要するため申請の相当前に着手)

出典:国土交通省|特定技能制度(建設分野)概要、関係資料

厚生労働省|介護分野における特定技能外国人の受入れについて

とくに建設分野の受入計画認定は審査に時間を要するため、在留資格変更許可申請より前に着手する必要があります。自社分野の運用要領を事前に確認しておきましょう。

稼働開始までのスケジュールとコスト

転職者採用で最も社内説明が難しいのが、「内定を出してから、実際に現場で働き始めるまでの期間」です。

結論から言えば、準備期間を含めて2〜3か月程度を見込むのが現実的です。海外からの新規採用(4〜6か月程度)と比べれば短いものの、日本人の中途採用と同じ感覚でスケジュールを組むと、ほぼ確実に予定が崩れます。「許可日が確定するまで入社日は仮置き」という前提を、採用決定の時点で現場と共有しておくことを推奨します。

内定から就労開始までのタイムライン

標準的な流れは次のとおりです。

段階

内容

目安期間

1面接・内定、試験合格状況と在留期限の確認1〜2週間
2雇用契約締結、支援計画策定、事前ガイダンス、健康診断2〜4週間
3必要書類の収集(納税証明書、決算文書など)2〜3週間(1と2に並行可)
4在留資格変更許可申請の提出
5入管の審査(公表標準処理期間は2週間〜1か月)実務上1〜3か月程度
6許可・新しい在留カードの交付、就労開始

入管が公表する在留資格変更許可申請の標準処理期間は2週間から1か月です。ただし、これは「必ずその期間内に結果が出る期間」ではありません。追加資料の求めがあればその分だけ確実に延び、申請が集中する時期や地方局ごとの混雑状況によっても変動します。特定技能の転職案件では実務上1〜3か月程度を見込むのが安全です。

出典:出入国在留管理庁|在留資格変更許可申請

実務上のポイントは、前職の退職日と申請のタイミングをどう設計するかです。

在職したまま申請できれば本人の収入が途切れず、審査待ちの期間も安定します。一方、退職後に申請する場合は許可までが本人にとって無収入期間となります。しかも特定技能の在留資格のままでは、退職理由を問わず他社でのアルバイトは認められません。会社都合による離職の場合は、後述する「特定活動(就労継続支援)」への変更が認められて初めて就労が可能になります。

可能な限り「在職中に申請、許可後に退職・入社」という順序を組むのが理想です。それが難しい場合は、入社日を柔軟に調整できる体制を整えておく必要があります。

なお在留期間の満了が迫り手続きが間に合わない場合、「特定技能1号への移行準備のための特定活動」への変更が選択肢になることがあります。在留期間6か月で就労も可能ですが、通算在留期間が4年6か月を超える人は対象外であり、この6か月も特定技能1号の通算5年に算入される点に注意してください。安易な選択肢ではありません。

出典:出入国在留管理庁|特定技能関係の特定活動(特定技能1号への移行を希望する場合)

費用の内訳と、手数料改定の動向

転職者を受け入れる際に発生する費用は、おおむね次のとおりです。行政手数料以外は市場相場であり、契約内容により幅があります。

費目

目安

負担者

在留資格変更許可申請の手数料窓口6,000円/オンライン5,500円本人(企業負担も可)
申請取次の報酬(行政書士等に依頼する場合)5万円〜15万円程度企業
登録支援機関への支援委託費月額2万円〜3万円程度が一般的企業(本人に転嫁不可)
健康診断費用1万円前後企業
人材紹介手数料(紹介会社経由の場合)想定年収の20〜30%程度企業

重要な原則として、支援に要する費用を外国人本人に負担させることはできません。この線引きを誤ると、雇用契約基準への不適合として審査に影響します。

なお手数料については、2025年4月1日に改定が行われ、在留資格変更許可申請は従来の4,000円から6,000円(オンラインは3,500円から5,500円)になっています。

出典:出入国在留管理庁|在留手続等に関する手数料の改定について

さらに、より大幅な改定が予定されています。令和8年入管法等改正法(令和8年6月5日公布・法律第32号)で手数料の上限額が引き上げられ、同法は手数料関係規定の施行日を「令和9年3月31日までの間において政令で定める日」としています。

これを受けて公表された政令案では、施行予定日を2026年10月1日とし、在留期間の長さに応じた段階制を導入するとされています。政令案によれば、在留期間1年の場合の在留資格変更許可申請は窓口33,000円、オンライン27,000円。現行の6,000円と比べると大幅な負担増です。

ただし、2026年8月2日時点で政令は公布されておらず、意見募集(パブリックコメント)の段階です。確定した情報ではありませんので、予算化にあたっては最新の公表状況を必ず確認してください。

出典:出入国在留管理庁|在留許可手数料の改定に関する意見募集について

企業が負うリスクと、違反時のペナルティ

特定技能外国人の転職に関して企業が負うリスクは、「採用できない」「稼働が遅れる」といった機会損失にとどまりません。

手続きを誤ると、企業自身が刑事罰や行政処分の対象になり得ます。ここは法務・コンプライアンス部門への説明でも必ず論点になる部分です。

主なリスクを整理します。

リスク

内容

想定される処分

不法就労助長許可前に就労させた、許可範囲外の業務に従事させた刑事罰。受入れ資格の喪失
届出義務違反14日以内の随時届出を怠った罰金刑・過料、一定期間の受入れ停止
雇用状況届出違反ハローワークへの届出を怠った、虚偽の届出をした30万円以下の罰金
在留資格の不許可企業側の基準不適合、書類不備採用計画の白紙化
在留資格の取消し正当な理由なく、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合本人の在留終了

出典:出入国在留管理庁|随時届出に関するQ&A

許可が下りる前の就労は不法就労助長にあたる

最も重大かつ、最も起こりやすい事故がこれです。

在留資格変更許可申請中は、まだ新しい所属機関で働く資格がありません。「もう内定は出しているし、書類も提出済だから」と就労を開始させると、不法就労にあたり、就労させた企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。現場から「人手が足りないから早く入れてほしい」という要望が出やすい場面ですが、ここは譲れない一線です。

確認方法としては、許可後に交付される新しい在留カードに加え、パスポートに貼付・交付される「指定書」を必ず確認してください。指定書には、就労が認められる特定技能所属機関の名称と、従事する業務の分野・業務区分が明記されています。つまり、指定書に自社名が記載されて初めて自社での就労が適法になります。採用時の確認フローに「指定書の確認」を組み込んでおくことを推奨します。

なお、在留資格変更許可申請中に他社でアルバイトをすることも、退職理由を問わずできません。本人から相談を受けた際に誤った案内をしないよう、社内で共有しておきましょう。

出典:出入国在留管理庁|特定技能制度に関するQ&A

不許可・審査長期化のパターンと事前対策

在留資格変更許可申請が不許可になると、本人は原則として帰国することになり、採用計画は白紙に戻ります。主な要因は次の4つです。

書類の不備・虚偽記載が最も多く、とくに賃金の同等性を示す資料が不十分なケース、支援計画の記載が形式的なケースが目立ちます。

企業側の基準不適合も重大です。労働保険・社会保険の未納、1年以内の同種業務従事者の非自発的離職、自社の責めに帰すべき事由による行方不明者の発生などが該当します。内定を出す前に自社の状況を点検しておくべき項目です。

出典:出入国在留管理庁|特定技能ガイドブック

申請分野と実際の業務内容の不一致も見落とされがちです。求人票の業務内容が、本人の合格した業務区分と対応しているかを確認してください。

本人の在留状況の問題として、税・社会保険料の滞納や過去の資格外活動も審査対象になります。

さらに、転職回数が多い場合や在籍期間が極端に短い場合、審査で説明を求められることがあります。制度上の回数制限はありませんが、短期間での転職を繰り返している候補者については、理由を整理した説明資料を添えると審査の円滑化が期待できます。

3か月ルールと在留資格の取消し

解説記事で触れられることが少ない一方、実務上きわめて重要なのがこのルールです。

入管法第22条の4第6号により、在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合、在留資格の取消し対象となります(正当な理由がある場合を除く)。

出入国在留管理庁のQ&Aでは、離職しても直ちに帰国が必要になるわけではなく、就職活動を行うのであれば少なくとも在留期間内は在留可能であるとされています。ただし、3か月以上就職先を探すことなく在留している場合は取消しの対象になります。

出典:出入国在留管理庁|在留資格の取消し

企業側の実務への影響は大きくわけて2点あります。

1つは、候補者の離職からの経過期間を確認する必要があるということです。離職から時間が経っている候補者を採用する場合、在留資格の状態を慎重に確認してください。

もう1つは、自社が会社都合で契約を終了させる場合、本人を無為な状態に置くこと自体がリスクになるということです。次項の転職支援義務とあわせて、離職後のフォローアップを設計しておく必要があります。

なお、倒産やハラスメントなど本人の責めに帰さない事由で就労継続が困難になった場合には、「やむを得ない事情により活動継続が困難な場合の特定活動」(在留期間1年、一定条件下で2回まで更新可、就労可)への変更が認められる仕組みも用意されています。前述の「特定技能1号への移行準備のための特定活動」とは別の制度ですので、混同しないよう注意してください。

出典:出入国在留管理庁|やむを得ない事情により特定技能での活動継続が困難となった方への就労継続支援

転職を防ぎ、定着させるためのポイント

採用と手続きのコストを踏まえれば、そもそも転職されない職場をつくることが最大のコスト対策です。

同時に、企業側の都合で契約を終了させる場合には、法令上の支援義務が発生します。「守るべき義務」と「打つべき施策」を分けて整理します。

会社都合で退職させる場合の「転職支援義務」

1号特定技能外国人支援計画の10項目には、転職支援(人員整理等の場合)が含まれています。つまり、経営上の都合など企業側の事由で雇用契約を終了させる場合、企業には転職支援を行う義務があります。

主な支援内容は、次の職場を探すための情報提供、職業紹介事業者への橋渡しやハローワークの紹介、推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与、必要な行政手続についての情報提供などです。

出典:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援・登録支援機関について

一方、本人の自己都合による退職の場合、この転職支援義務は発生しません。ただし義務がないことと、何もしないことは別です。円満に送り出すことが、残る外国人社員への安心感につながり、結果として定着率に効いてきます。

なお、転職の申し出に対する不当な引き止めは避けてください。パスポートや在留カードの取り上げ、退職金の減額をちらつかせるといった行為は、それ自体が重大な法令違反です。一方で、待遇改善の提案や、キャリアパスの提示といった正当な引き止め交渉は問題ありません。

また、分野によっては同一分野内での引き抜きを自粛する旨の申し合わせが設けられている場合があります。他社の特定技能外国人へ直接アプローチする採用手法を検討している場合は、自社分野の協議会ルールを事前に確認してください。

離職理由から考える、実効性のある定着施策

出入国在留管理庁が特定技能所属機関からの届出をもとに集計した数値(令和4年11月末時点、有識者会議提出資料)によれば、制度施行からの自己都合による離職者は延べ19,899人、当時の在留者数に対する離職率は16.1%でした。

離職後の状況は、帰国が31.4%、特定技能での転職が30.3%、別の在留資格への変更が15.1%となっています。つまり、離職者の約3割が国内で転職しています。

出典:出入国在留管理庁|技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議資料

なお、これより新しい公的な離職率・転職率の統計は現時点で公表されていません。「最新の離職率」として流通している数値の多くは、令和4年(2022年)時点のこの集計に基づくものです。社内資料に引用する際は、必ず時点を明記してください。

実務上、有効性が高いとされる施策は次の3点に集約されます。

採用時の条件説明を正確に行うこと。離職理由として多いのが給与・労働条件の認識齟齬です。残業の有無、シフト、昇給の仕組みを、母国語または平易な日本語で具体的に説明してください。

教育担当者を明確に置くこと。「誰に聞けばいいか分からない」状態が孤立を生みます。指導役を固定し、初期の3か月は接触頻度を上げることが効果的です。

評価と昇給の基準を透明にすること。日本人社員と同じ評価制度を適用し、何をすれば給与が上がるのかを可視化することが、キャリアアップ目的の転職を抑止します。

いずれも支援計画の実施と密接に関わるため、受入れ体制の構築支援を活用しながら自社の運用として定着させることが望ましいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 特定技能外国人の転職に、回数の制限はありますか。

制度上の回数制限はありません。ただし、短期間で転職を繰り返している場合、在留資格変更許可申請の審査で理由の説明を求められることがあります。転職の経緯を整理した資料を添付すると円滑です。

Q2. 同じ会社に再入社する場合も、在留資格変更許可申請は必要ですか。

一度退職して所属機関が変わった後に再度雇用する場合は、改めて在留資格変更許可申請が必要です。所属機関が変わる時点で申請が必要になるとお考えください。

Q3. 在留資格変更許可申請中に、内定先で研修だけ受けさせることはできますか。

賃金が発生する活動は就労にあたるため、許可前には行えません。無給の会社説明や資料送付など、労働にあたらない範囲にとどめてください。判断に迷う場合は管轄の出入国在留管理局へ確認することを推奨します。

Q4. 転職にかかる期間はどのくらい見ておくべきですか。

書類準備から許可まで、2〜3か月程度を見込むのが現実的です。審査状況や追加資料の求めによって変動するため、入社日は許可後に確定させる運用を推奨します。

Q5. 分野が異なる企業へ転職することはできますか。

可能です。ただし、転職先の分野・業務区分に対応する技能評価試験に合格している必要があります(技能水準の共通性が確認されている業務区分間を除く)。試験の実施時期が採用スケジュールを左右する点に注意してください。

Q6. 退職した社員から「転職先が決まるまでアルバイトをしていいか」と聞かれました。

特定技能の在留資格のままでは、退職理由を問わず他社でのアルバイトは認められません。倒産やハラスメントなど本人の責めに帰さない事由による離職の場合は、「特定活動(就労継続支援)」への変更が認められて初めて就労が可能になります。誤った案内をすると本人が資格外活動となるおそれがあるため、社内で正しい認識を共有してください。

Q7. 前職の企業が届出を出してくれない場合、転職に影響しますか。

前職の届出義務違反は前職の責任であり、それ自体が本人の在留資格変更許可を直ちに妨げるものではありません。ただし審査で事実関係の確認を求められる可能性があるため、退職の経緯を説明できるようにしておくと安心です。

Q8. 特定技能で受け入れられる分野は、結局いくつですか。

制度上は19分野です。ただし物流倉庫と資源循環は省令等の準備中のため、実際に受入れが可能なのは17分野です。特定技能2号の対象は11分野で、2026年に追加された3分野は含まれません。

出典:出入国在留管理庁|在留資格「特定技能」

まとめ

特定技能外国人の転職は制度上認められており、企業にとっては即戦力を確保する現実的な採用チャネルです。一方で、手続きの誤りが刑事罰や受入れ停止に直結する領域でもあります。

最後に、実務上の要点を確認してください。

  • 転職は同一分野・同一業務区分内が原則。分野をまたぐ場合は転職先分野の技能試験合格が必要
  • 転職のたびに在留資格変更許可申請が必要で、許可前の就労は不法就労助長にあたる
  • 前企業・新企業・本人の3者それぞれに届出義務があり、随時届出は14日以内
  • 稼働開始までは2〜3か月を見込み、入社日は許可後に確定させる
  • 対象分野は制度上19分野、受入れ可能なのは17分野(2026年8月時点)
  • 2027年4月に育成就労制度が開始し、実習生層にも転籍の道が開かれる

制度は毎年のように改正が入る領域です。社内での運用ルールを整備するとともに、一次情報の定期的な確認と、必要に応じた専門機関への相談体制を持っておくことが、結果として最も確実なリスク対策になります。

関連記事

おすすめ記事