特定技能「宿泊」|採用側の準備、試験情報や雇用条件などを解説 - GTN MAGAZINE
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特定技能「宿泊」|採用側の準備、試験情報や雇用条件などを解説

2025年の年間訪日外客数は42,683,600人となり、前年比15.8%増で年間過去最高を更新しました。年間4,000万人という節目を初めて突破した一方、2026年上半期は中国市場の低迷により累計2,108万人と前年同期比2.0%減となっており、市場ごとの動きは一様ではありません。それでもコロナ前の水準を大きく上回る需要が続いており、宿泊施設の新規開業や増床の動きも各地でみられます。ホテル・旅館の人材確保は経営の最重要課題になっています。その解決策として定着してきたのが、在留資格「特定技能」による外国人材の受入れです。

ただし、宿泊分野の特定技能は2024年6月に協議会加入の運用が変わり、さらに2027年4月には技能実習に代わる育成就労制度が始まります。数年前の情報のまま準備を進めると、在留資格の申請が受理されない、想定していた時期に現場へ配属できないといった事態を招きかねません。

本記事では、特定技能「宿泊」の受入要件と業務範囲、評価試験の内容と難易度、義務付けられた支援、受入れまでのスケジュールとコスト、そして育成就労制度による今後の変化までを、官公庁の一次情報をもとに整理します。上長や現場、法務部門への説明にそのまま使える構成でまとめていますので、自社の受入れ計画づくりにお役立てください。

宿泊業界の人手不足の現状と、特定技能が求められる背景

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年の年間訪日外客数は42,683,600人となり、前年比15.8%増で過去最高を更新しました。年間4,000万人という節目を初めて突破し、宿泊施設の新規開業や増床の動きも全国で続いています。

出典:日本政府観光局(JNTO)|訪日外客数(2025年12月推計値)

需要が伸びる一方で、現場を支える人材は依然として足りていません。帝国データバンクの調査では、旅館・ホテルの非正社員の人手不足割合は38.5%。2022年2月以来、4年2か月ぶりに3割台へ低下し改善の兆しはあるものの、全業種の非正社員平均28.3%を10ポイント以上も上回っており、業界全体で見れば深刻な状態が続いていると考えるのが妥当です。

出典:帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)

こうした状況を受けて、政府は2026年1月23日に決定した分野別運用方針で、令和11年(2029年)3月末までの宿泊分野における特定技能1号の受入れ見込数を14,800人と設定しています。この見込数は分野ごとの受入れ上限として運用されるため、採用を計画する際は、出入国在留管理庁が公表する在留者数と充足率も確認する必要があります。これは向こう3年間の受入れ枠として運用される数字であり、宿泊業が国として人材確保を後押しする分野に位置づけられていることの裏付けでもあります。

人材のプールも着実に厚みを増しています。出入国在留管理庁の公表資料によれば、宿泊分野の特定技能評価試験は2025年12月末までの累計で受験者29,001人に対し合格者19,129人に達しました。

出典:出入国在留管理庁|特定技能制度運用状況(令和7年12月末現在)

裏を返せば、採用競争はすでに「制度を使えるかどうか」ではなく、他社より早く受入れ体制を整えられるかどうかの段階に入っているということです。制度の可否を調べる段階で止まっている企業と、すでに協議会加入まで済ませている企業とでは、良い人材と出会ったときの初動が数か月単位で変わります。

特定技能「宿泊」とは?1号と2号の違い

特定技能は、深刻な人手不足に対応するために2019年4月に創設された就労系の在留資格です。宿泊分野もその対象に含まれ、旅館・ホテルが即戦力となる外国人材を直接雇用できる制度として活用が進んでいます。

宿泊分野には「1号」と「2号」の2区分があり、求められる技能水準、在留期間、家族帯同の可否、受入企業に生じる義務のすべてが異なります。まずは両者の違いを一覧で押さえておきましょう。

比較項目

特定技能1号「宿泊」

特定技能2号「宿泊」

技能水準

即戦力として活動するために必要な知識または経験

熟練した技能

在留期間

通算5年が上限

上限なし(更新回数の制限なし)

業務内容

宿泊サービスの提供業務

複数の従業員を指導しながら行う宿泊サービスの提供業務

取得要件

1号評価試験+日本語試験

2号評価試験+実務経験2年以上

日本語試験

必要(A2.2相当以上)

2026年度までは不要/2027年4月1日からB1相当以上が必要

家族の帯同

不可

配偶者・子の帯同が可能

支援計画

必要(登録支援機関へ委託可)

不要

自社が「現場の欠員を早期に埋めたい」のか、「将来的にリーダー層を育てたい」のかによって、どちらを軸に据えるかが変わります。実務では1号で採用し、社内育成を経て2号へ移行させる流れが基本形です。

特定技能1号「宿泊」の概要

特定技能1号「宿泊」は、フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなどの宿泊サービス提供業務に従事するための在留資格です。受入企業と直接雇用契約を結び、フルタイムで働くことが前提となります。

在留期間は通算5年が上限で、この5年には出国期間も含めて通算されます。家族の帯同は認められておらず、単身での就労が原則です。取得には、宿泊分野特定技能1号評価試験の合格に加えて、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格が必要です。

N4は「基本的な日本語を理解することができる」水準とされており、業務上の定型的なやり取りは可能ですが、クレーム対応のような複雑な会話には個人差があります。配属前のOJTと、写真や図を使った業務マニュアルの整備は、受入企業側で準備しておきたいポイントです。

なお、1号の外国人を受け入れる企業には、後述する10項目の支援義務が生じます。この点が2号との実務上の大きな違いになります。

特定技能2号「宿泊」に移行するメリットと要件

宿泊分野では2023年から特定技能2号の受入れが可能になりました。2号は「熟練した技能」を持つ人材向けの区分で、業務内容も「複数の従業員を指導しながら」宿泊サービスを提供する業務と定義されており、現場のリーダー層を長期的に確保する手段として位置づけられます。

特定技能2号「宿泊」の取得には、宿泊分野特定技能2号評価試験への合格と、宿泊施設で複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等に2年以上従事した実務経験が必要です。

2026年8月時点では日本語試験は課されていませんが、2027年4月1日からは「日本語教育の参照枠」のB1相当以上の日本語能力が要件となります。2号への移行を予定する場合は、技能試験・指導経験に加えて日本語学習も計画的に進める必要があります。

出典:一般社団法人 宿泊業技能試験センター|特定技能評価試験

企業にとってのメリットは3つあります。1つ目は、在留期間の更新回数に上限がなく、期限を気にせず雇用を継続できること。2つ目は、配偶者や子の帯同が認められるため、本人の生活基盤が安定し定着率が高まること。そして3つ目が、支援計画の策定・実施義務がなくなり、登録支援機関への月額委託費が不要になることです。長期的にはコスト面でも効いてきます。

注意したいのは、1号の在留期限(通算5年)が到来する前に2号評価試験へ合格しておく必要がある点です。2号評価試験は1号より出題数が多く難易度も上がるため、一度で合格できるとは限りません。在留3年目あたりから受験を計画的に支援する運用を、あらかじめ人事制度に組み込んでおきましょう。

特定技能「宿泊」で任せられる業務・任せられない業務

 

特定技能「宿泊」で受け入れた外国人材に任せられる業務には、明確な範囲が定められています。ここを誤ると、採用したものの想定していた仕事を任せられない、あるいは制度違反となってしまうため、受入れ検討の最初の段階で確認しておくべきポイントです。

主たる業務として認められているのは、フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなどの宿泊サービス提供業務です。具体的には次のような作業が該当します。

  • フロント業務(チェックイン・チェックアウト、予約管理、館内案内など)
  • 企画・広報(宿泊プランの企画立案、宣伝広告、ホームページの更新など)
  • 接客(館内案内、要望への対応、周辺観光の案内など)
  • レストランサービス(客席への案内、注文対応、配膳、料理の説明など)

出典:出入国在留管理庁|宿泊分野

これに加えて、館内でのお土産などの物品販売、備品の確認・交換といった宿泊業務に付随する作業も可能です。日本人従業員が通常従事している範囲の業務であれば、幅広く任せられると考えて差し支えありません。

一方で、風俗営業法上の「接待」に該当する行為を行わせることは、告示によって明確に禁止されています。宴会場での接客が「接待」に当たらないかは実際の業務内容による個別判断となるため、判断に迷う場合は事前に協議会や地方出入国在留管理局へ確認しておくと安全です。

客室清掃だけを任せることはできない

実務でもっとも誤解が多いのが、清掃・ベッドメイキング・リネン交換といった業務の扱いです。

これらは制度上、あくまで「関連業務」という位置づけにあります。フロントや接客といった主たる業務と併せて従事させることは何ら問題ありませんが、清掃だけを専従させることは認められていません

「客室清掃の人手が足りないので特定技能で補いたい」という発想は、そのままでは制度の趣旨から外れます。この点は現場責任者との認識合わせが特に必要な部分で、採用後に「結局清掃ばかり任せている」という状態になれば、定期の届出や実地調査で指摘を受けるリスクがあります。求人票の職務内容と実際の配属先の業務が一致しているか、内定前に確認しておきましょう。

清掃業務を主軸に人材を確保したいのであれば、特定技能には「ビルクリーニング分野」が別に用意されているため、そちらの活用が適切です。宿泊施設の客室清掃もビルクリーニング分野の対象業務に含まれるため、業務の性質に応じて分野を使い分けるという考え方が正解になります。

受入れ対象となる施設の範囲

もう1つ見落とされやすいのが、施設側の要件です。特定技能「宿泊」で受入れができるのは、旅館業法第2条第2項に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けた施設に限られます

施設の種類

受入れの可否

ホテル・旅館(旅館業法の旅館・ホテル営業許可)

簡易宿所営業(カプセルホテル、ゲストハウスなど)

不可

下宿営業

不可

住宅宿泊事業法にもとづく民泊

不可

風俗営業法上の施設に該当するもの

不可

出典:観光庁|宿泊分野における外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)

簡易宿所や民泊が対象外である点は、同じ「宿泊業」でも扱いが分かれるため注意が必要です。複数の業態を運営している企業の場合、特定技能外国人を配属できるのは旅館・ホテル営業の許可を持つ施設に限られます。系列内の異動を検討する際も、異動先の営業許可区分を確認してください。

自社の施設が要件を満たすか判断がつかない場合は、まず営業許可証の記載区分を確認しましょう。許可の種類が「旅館・ホテル営業」となっていれば対象となります。取得時期が古い許可証では現行と異なる区分名で記載されている場合もあるため、記載内容に迷いがあるときは許可を出した保健所へ照会するのが確実です。買収や事業承継で取得した施設については、許可の名義や区分が現況と合っているかも併せて確認しておくと安心です。

特定技能「宿泊」の外国人を雇用する企業側の要件

特定技能「宿泊」の外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、告示によって次の要件が定められています。

  • 旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第2項に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けた者であること
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第6項第4号に規定する「施設」に該当しないこと
  • 特定技能外国人に対して風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わせないこと
  • 国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になること
  • 協議会に対し、必要な協力を行うこと
  • 国土交通省またはその委託を受けた者が行う調査または指導に対し、必要な協力を行うこと

これらに加えて、労働関係法令の遵守、社会保険・税の適正な納付、過去1年以内に非自発的離職者を出していないことなど、全分野に共通する受入企業の基準も満たす必要があります。行方不明者を発生させていないこと、5年以内に出入国・労働法令に関する不正行為を行っていないことなども要件に含まれます。

労働基準法違反による是正勧告を受けたまま是正していない状態は、審査で不利に働くおそれがあるため、まずは自社の労務コンプライアンスの棚卸しから着手するのが実務上の第一歩です。特に社会保険の加入漏れや残業代の未払いは、審査で確認されやすい項目です。人事・労務の担当部署と連携し、指摘を受けそうな箇所は協議会への加入申請と並行して整理しておきましょう。

 

【2024年6月改正】協議会加入は在留資格申請の「前」に完了が必須

受入企業の要件のなかで、実務上もっとも見落とされやすいのが宿泊分野特定技能協議会への加入です。

かつては「特定技能外国人の受入れ開始から4か月以内」に加入すればよい運用でしたが、2024年6月15日以降、取り扱いが変わりました。現在は地方出入国在留管理局への在留諸申請の時点で、すでに協議会の構成員であることを証明する書類の添付が必要です。初めて特定技能外国人を受け入れる企業も例外ではありません。つまり、採用する外国人と支援体制が決まった後、在留資格申請に先立って協議会への加入申請を行う必要があります。入会通知書の発行には1か月以上かかる場合があるため、採用決定後は速やかに手続きを進めましょう。

項目

内容

加入対象

特定技能外国人を受け入れる宿泊施設/支援を受託する登録支援機関

加入時期

在留諸申請より前(2024年6月15日以降)

申請方法

e-Gov電子申請によるオンライン申請のみ(郵送不可)

費用

入会金・年会費ともに不要

所要日数

申請日から1か月程度で入会通知書を発行

運営

国土交通省観光庁

出典:観光庁|宿泊分野特定技能協議会

注意したいのは、受入企業と登録支援機関の双方の申請が完了してから審査が始まる点です。自社で支援を行う場合は、申請時に支援機関の欄へ「自社支援」と記入します。申請の混雑状況によっては入会通知書の発行までさらに時間を要することもあるため、採用計画の起点は「協議会加入申請」に置くのが安全です。ここを後回しにすると、内定者の入社時期が丸ごと1か月以上ずれ込みます。

雇用形態と報酬のルール

特定技能「宿泊」の雇用形態は、受入企業との直接雇用かつフルタイム勤務が原則です。宿泊分野では派遣形態での受入れは認められておらず、パートタイムやアルバイトのような短時間勤務も不可となります。

ただし「正社員でなければならない」という規定ではありません。所定労働時間が同等の業務に従事する常勤の日本人と同等であれば、契約社員などの区分でも受入れは可能です。ここは社内の雇用区分と照らして整理しておきましょう。

報酬については、日本人が同等の業務に従事する場合と同等額以上であることが許可の条件とされています。「外国人だから安く雇える」という制度ではなく、賃金台帳との整合性は在留諸申請の審査で確認されます。支払方法についても、原則として本人名義の預貯金口座への振込によることが求められます。

出典:出入国在留管理庁|特定技能外国人の受入れに関する運用要領

同一業務に従事する日本人従業員がいない場合は、賃金規程や近隣同業他社の水準を根拠として説明できるよう準備が必要です。現金手渡しが直ちに違反となるわけではありませんが、その場合も支払額を証明できる記録の作成・保存が求められます。報酬額と支払方法は審査対象となるため、口座振込に統一しておくのが実務上は安全といえます。

特定技能「宿泊」を取得する2つのルート

外国人本人が特定技能1号「宿泊」の在留資格を得るルートは、大きく2つあります。どちらのルートの人材を採用するかによって、必要な確認書類とリードタイムが変わります

1つ目は、評価試験に合格するルートです。宿泊分野特定技能1号評価試験と、日本語試験(日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト)の両方に合格することで、在留資格「特定技能1号」を申請できます。

2つ目は、技能実習2号から移行するルートです。要件は、技能実習2号を良好に修了していること、そして技能実習での職種・作業内容と特定技能1号の業務区分が一致していることの2点です。この要件を満たす場合、技能試験と日本語試験がいずれも免除されます。

出典:出入国在留管理庁|宿泊分野

1つ目のルートには、海外在住者だけでなく、日本国内の留学生が「留学」から在留資格を変更するケースも含まれます。留学生の採用は国内在住のため、海外からの招へいに比べてリードタイムを大幅に短縮できるのが利点です。日本語能力もすでに一定水準に達しているケースが多く、配属後の立ち上がりが早い傾向にあります。

2つ目のルートは、実習で育成した人材をそのまま5年間戦力として継続雇用できるため、受入企業にとって最も現実的な長期雇用ルートといえます。ただし、このルートは2027年4月の育成就労制度の施行によって前提が変わります。詳細は後述しますが、これから中長期の採用計画を立てる企業は、制度移行を織り込んだ設計が必要です。

宿泊分野特定技能評価試験の内容と難易度

宿泊分野特定技能評価試験は、一般社団法人宿泊業技能試験センターが実施しています。かつてはペーパー方式でしたが、現在はプロメトリックのCBT方式(コンピュータを使った試験)により、国内外の会場で年間を通じて随時実施されています。

項目

1号評価試験

2号評価試験

学科試験

30問(3択)

50問(4択)

実技試験

6問(3択)

20問(4択)

出題範囲

フロント業務、広報・企画、接客、レストランサービス、安全衛生

上記に加え、複数従業員の指導に関する領域

受験資格

年齢等の要件あり(受験案内で要確認)

宿泊業での実務経験2年以上の証明書が必須

日本語要件

別途N4以上またはJFT-Basicの合格が必要

不要

再受験

同一試験は45日間の間隔が必要

同左

出典:一般社団法人 宿泊業技能試験センター|特定技能評価試験

予約はプロメトリックのシステムから行い、59日先までの試験日を予約可能、変更・キャンセルは試験日の3営業日前まで受け付けられます。国外でも複数の国で実施されており、現地採用の選択肢も広がっています。

難易度の目安としては、制度開始から2025年12月末までの累計で受験者29,001人に対し合格者19,129人。累計の合格率は約66%で、しっかり対策すれば十分に到達可能な水準といえます。

一方、2号評価試験は学科50問・実技20問と出題数が大幅に増え、難易度は格段に上がります。試験センターは実施回ごとの受験者数・合格者数・合格率を公表しているため、受験計画を立てる際は最新の実績を確認してください。2号人材については外部から採用するのではなく、社内で1号人材を育成しながら受験を支援する前提で考えるのが現実的です。試験センターのWebサイトではサンプル問題や学習用テキストも公開されているため、社内の教育担当者が出題範囲を把握したうえで支援体制を組むとよいでしょう。

出典:一般社団法人 宿泊業技能試験センター|2025年度 宿泊分野特定技能評価試験 受験者・合格者・合格率発表

受入企業に義務付けられる10項目の支援

特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、職業生活・日常生活・社会生活上の支援を実施する義務が課されます。これは雇用契約とは別に「1号特定技能外国人支援計画」として作成し、実行しなければならないものです。

支援項目

主な内容

1. 事前ガイダンス

労働条件、活動内容、入国手続などを雇用契約締結後に対面等で説明

2. 出入国する際の送迎

空港と事業所・住居間の送迎

3. 住居確保・生活契約支援

住居の確保、銀行口座開設、携帯電話・ライフラインの契約補助

4. 生活オリエンテーション

生活ルール、公共機関の利用方法、災害時対応などの説明

5. 公的手続等への同行

住居地の届出、社会保障・税などの手続の補助

6. 日本語学習の機会の提供

日本語教室の情報提供、教材の案内など

7. 相談・苦情への対応

十分に理解できる言語での相談対応、適切な機関への取次

8. 日本人との交流促進

地域行事の案内、参加の補助

9. 転職支援

受入企業都合で契約解除する場合の転職先探しの支援

10. 定期的な面談・行政機関への通報

3か月に1回以上の面談実施、法令違反時の通報

出典:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

特に注意したいのが項目7と10です。相談対応は原則として本人が十分に理解できる言語で行う必要があり、面談も四半期に一度は必須とされています。母国語に対応できる人員を社内に確保できない場合、この2項目だけでも登録支援機関への委託が現実的な選択肢になります。

支援に加えて、受入れ・活動・支援実施状況に関する年1回の定期届出と、契約変更時などの随時届出も企業の義務です。定期届出では、毎年4月1日から翌年3月31日までの状況を、翌年4月1日から5月31日までに提出します。なお、定期届出は年1回に変更されましたが、外国人本人および監督者との面談は、引き続き3か月に1回以上実施する必要があります。支援計画の不履行や届出の懈怠は、改善命令や特定技能外国人の受入れ停止の対象となり得ます。誰がいつ何を届け出るのかを受入れ前に決めておくことが、トラブル回避の最も確実な方法です。

自社での支援体制構築が難しい場合は、GTNの外国人材受入れ支援サービスのように、採用支援、行政書士等と連携した在留資格手続きのサポート、入社後の生活支援などを提供する登録支援機関へ相談する方法もあります。

受入れまでの流れと稼働開始までのスケジュール

「試験に合格した人材を見つければすぐ働いてもらえる」と考えると、現場の配属計画は必ず狂います。特定技能「宿泊」の受入れには、協議会加入と在留資格審査という2つの待ち時間が構造的に組み込まれているためです。

実務上の標準的な流れと、それぞれに要する期間の目安は次のとおりです。

ステップ

内容

期間の目安

1. 協議会加入申請

e-Gov電子申請で宿泊分野特定技能協議会へ入会申請

申請から約1か月

2. 人材の募集・選考

試験合格者の紹介、面接、内定

2週間〜2か月

3. 雇用契約の締結

特定技能雇用契約書、労働条件通知書(母国語併記)の作成

1〜2週間

4. 支援計画の策定

1号特定技能外国人支援計画の作成(登録支援機関へ委託可)

1〜2週間

5. 在留諸申請

在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請

1〜3か月

6. 入国・入社

査証取得、入国、住居確保、生活オリエンテーション

2週間〜1か月

ステップ1の所要期間は観光庁の案内にもとづく目安で、それ以外は一般的な実務の所要期間です。合計すると、国内在住者の在留資格変更で最短2〜3か月、海外からの新規招へいでは4〜6か月程度を見込むのが現実的といえます。年末年始やゴールデンウィークといった繁忙期の稼働に間に合わせたいのであれば、半年前には協議会加入を済ませておく逆算が必要になります。

なお、ステップ1と2は並行して進められます。人材紹介の商談を始める前に協議会加入申請だけ先に提出しておけば、全体のリードタイムを1か月近く短縮できます。上長への稟議で「いつから現場に立てるのか」を問われた際は、この表をそのまま根拠資料として使えます。

特定技能「宿泊」の受入れにかかるコスト

特定技能の受入れでは、給与以外にも初期費用とランニングコストが発生します。日本人採用との比較で社内説明を求められることが多いポイントのため、内訳を分けて把握しておきましょう。

費目

相場

発生タイミング

人材紹介手数料

想定年収の25〜35%程度(30〜60万円前後)

初期・1人ごと

在留資格申請の代行費用(行政書士など)

10〜15万円程度

初期・1人ごと

登録支援機関への支援委託費

月額2〜4万円程度/1人

毎月

協議会への入会金・年会費

無料

渡航費・住居の初期費用

企業負担とする場合あり(住居確保は支援義務)

初期

協議会の費用を除き、上記は実務上の相場であり、依頼先やサービス範囲によって変動します。目安としては、初年度に1人あたり50〜100万円程度の受入れコストを見込むケースが多く、2年目以降は支援委託費が中心となります。人材紹介を使わず自社で直接採用できれば、初期費用は大きく圧縮できます。

コストを抑える選択肢として自社支援(登録支援機関に委託せず自社で支援を実施する方法)もありますが、前述の10項目をすべて自社で完結させる必要があり、本人が十分に理解できる言語で対応できる担当者の確保が前提です。委託費は月額固定のため、受入れ人数が増えるほど1人あたりの管理負荷は下がります。まず1人目は委託し、運用を理解してから自社支援へ切り替えるという段階的な進め方も有効です。

注意点として、支援に要する費用を外国人本人の給与から差し引くことはできません。受入企業の負担とすることが制度上求められているため、経理部門との認識合わせが必要です。また、特定技能2号へ移行すれば支援義務そのものがなくなるため、長期的なコスト最適化の観点でも2号への育成は意味を持ちます。

【2027年4月施行】育成就労制度で宿泊分野の採用はどう変わるか

特定技能「宿泊」を取得するルートの1つが技能実習2号からの移行ですが、この前提は2027年に大きく変わります。技能実習制度に代わる育成就労制度が、令和9年(2027年)4月1日から運用開始となるためです。宿泊分野も育成就労の対象分野に含まれており、分野固有の上乗せ基準告示がすでに公表されています。

出典:出入国在留管理庁|育成就労制度の制度概要・関係法令

育成就労は、その名のとおり「特定技能1号への移行」を前提に設計された制度です。従来の技能実習が「国際貢献による技能移転」を建前としていたのに対し、育成就労は人材確保と人材育成を正面から制度目的に掲げている点が決定的に異なります。

比較項目

技能実習(現行)

育成就労(2027年4月〜)

制度の目的

技能移転による国際貢献

人材確保・人材育成

育成期間

最長5年(1号〜3号)

3年以内

就労開始前の日本語要件

原則なし

日本語能力A1相当以上(JFT-Basic、JLPTのN5等)の試験合格または相当する日本語講習の受講

転籍(転職)

原則不可

原則として同試験の合格とA2.1相当以上の日本語能力が必要です。

特定技能1号への移行

2号良好修了で試験免除

宿泊分野では、育成就労開始後1年を経過するまでに「宿泊分野育成就労評価試験(初級)」を受験し、A1相当以上の日本語能力を身につけることが求められます。

出典:出入国在留管理庁|育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)

受入企業にとって特に重要なのが、表の最下段です。現行の「技能実習2号を良好に修了すれば試験免除で特定技能1号へ」というルートは、育成就労では適用されません。育成終了時には「宿泊分野特定技能1号評価試験」の合格と、A2.2相当以上の日本語能力が求められます。育成期間中に試験合格まで到達させる教育計画が、受入企業側の実務課題になるということです。

一方で、育成就労3年+特定技能1号5年で計8年、さらに2号へ進めば期間の上限なく雇用できる長期キャリアパスが描けるようになります。採用を単年度の欠員補充ではなく、中長期の人材投資として設計できる点は大きな前進です。また、転籍が可能になることで、定着施策の巧拙がそのまま人員計画に跳ね返るという変化も生じます。報酬水準、キャリアパスの明示、生活面のサポートといった「選ばれる職場づくり」への投資が、これまで以上に直接的な効果を持つようになります。

移行にあたっては経過措置が設けられており、施行日前に入国して実習が進行中の技能実習生は、引き続き技能実習を行うことができます。そのため施行後の数年間は、技能実習生と育成就労外国人が社内に併存する期間が生じます。就業規則や社内の育成制度は、この併存期間を織り込んで整備しておきましょう。なお、細部の運用は今後も更新されるため、公表される最新の運用要領を随時確認することをおすすめします。

まとめ

特定技能「宿泊」は、旅館・ホテルが即戦力の外国人材を直接雇用できる制度として定着してきました。一方で、2024年6月に協議会加入のタイミングが「在留資格申請の前」へ変更され、2027年4月には育成就労制度が始まるという転換期にあります。

受入れを成功させるうえで押さえるべきポイントは、次の4点に集約されます。

  • 協議会加入は在留資格申請の前に完了させる。入会通知書の発行まで約1か月かかるため、採用計画の起点はここに置く
  • 業務範囲と施設要件を先に確認する。清掃のみの従事は不可、簡易宿所や民泊は対象外
  • 稼働開始までのリードタイムを逆算する。国内での在留資格変更で2〜3か月、海外招へいで4〜6か月
  • 支援体制と担当者を受入れ前に決めておく。10項目の支援と定期届出は企業の義務

まず着手すべきは、自社の営業許可区分の確認と、協議会への加入申請です。どちらも人材が決まる前に単独で進められる手続きであり、この2つが済んでいれば、良い人材と出会ったときにすぐ動き出すことができます。逆にここが未着手のままだと、内定を出しても入社まで数か月待たせることになり、辞退につながりかねません。

特定技能をめぐる制度は、運用要領の改正が比較的頻繁に行われる分野です。社内資料として整理する際は、出入国在留管理庁と観光庁の該当ページを定期的に確認し、改正日付とセットで記録しておくことをおすすめします。最新の一次情報にもとづいて早めに受入れ体制を整えることが、安定した人材確保への近道です。

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