【2026年最新】外国人雇用で検討したい主な助成金|支給額・要件・在留資格別の注意点 - GTN MAGAZINE
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【2026年最新】外国人雇用で検討したい主な助成金|支給額・要件・在留資格別の注意点

外国人材の受け入れを検討するとき、多くの企業が最初に確認するのが助成金の有無です。翻訳費用、研修費用、相談体制の整備といった初期コストは決して小さくなく、国の支援を使えるかどうかで社内稟議の通りやすさも変わります。

一方で、「外国人を雇えば助成金がもらえる」という理解のまま準備を進めると、申請の直前になって対象外と判明するケースが少なくありません。在留資格によって使える制度と使えない制度がはっきり分かれるのが、この分野の最大の落とし穴です。

この記事では、2026年度(令和8年度)時点の最新情報をもとに、外国人雇用で実際に使える助成金を支給額・要件・申請の流れまで整理します。根拠となる厚生労働省などの公表資料を各項目に示していますので、社内説明や稟議資料にもそのまま活用いただけます。

目次

外国人雇用で使える助成金

外国人雇用に関わる助成金は、大きく2つに分かれます。外国人労働者の受け入れそのものを対象とする制度と、国籍を問わず使えるものの外国人従業員にも適用できる制度です。

前者に該当するのは、実質的に人材確保等支援助成金の外国人労働者就労環境整備助成コースの1つだけです。残りは後者、つまり一般の雇用関係助成金を外国人従業員に対して使う形になります。この構造を理解しておくと、制度選びで迷いません。

まず全体像を押さえてください。金額はいずれも令和8年度時点のもので、中小企業を前提としています。

制度名

主な目的

支給額の目安

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)受け入れ環境の整備・定着1措置20万円、上限80万円
キャリアアップ助成金非正規から正社員への転換、処遇改善1人あたり最大80万円
人材開発支援助成金職業訓練の費用と賃金の補助経費の45〜75%+賃金助成
トライアル雇用助成金試行雇用による採用月4万円、最長3か月
業務改善助成金賃上げと生産性向上のための設備投資上限600万円
雇用調整助成金業績悪化時の雇用維持1人1日あたり上限8,870円

出典:厚生労働省|令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)

このうち外国人雇用の文脈で最初に検討すべきは、人材確保等支援助成金の外国人労働者就労環境整備助成コースです。以降のセクションで、それぞれ詳しく見ていきます。

助成金と補助金は何が違うのか

助成金と補助金は混同されやすいのですが、管轄する省庁も、採択の仕組みも異なります

項目

助成金

補助金

主な管轄厚生労働省経済産業省、地方自治体など
財源雇用保険料が中心税金が中心
採択要件を満たせば原則受給できる予算枠があり、審査で採否が決まる
公募期間通年で受け付けるものが多い期間限定の公募が多い
返済不要不要

最大の違いは採択の考え方です。助成金は要件を満たしていれば原則として受給できるのに対し、補助金は申請しても採択されない可能性があります。予算枠に達した時点で締め切られる制度も珍しくありません。

外国人雇用に関する国の支援は、厚生労働省の助成金が中心です。ただし、地方自治体が独自に用意している外国人材の受け入れ支援は「補助金」「奨励金」の名称で運用されていることが多く、公募期間が限られている点に注意が必要です。

なお、どちらも支出した後に受け取る後払いが原則という点は共通しています。ここは資金繰りに直結するため、後ほど改めて説明します。

外国人労働者数は過去最多の257万人

助成金の制度が拡充されている背景には、外国人材の受け入れ規模そのものの拡大があります。

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人で、前年から268,450人(11.7%)増加し、過去最多を更新しました。外国人を雇用する事業所数も371,215所と過去最多です。

在留資格別の内訳を見ると、専門的・技術的分野の在留資格が865,588人(33.7%)、身分に基づく在留資格が645,590人(25.1%)、技能実習が499,394人(19.4%)となっています。国籍別ではベトナムが605,906人で最多、次いで中国、フィリピンと続きます。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末現在)

出入国在留管理庁の統計では、2025年末時点の在留外国人数は4,125,395人となり、初めて400万人を突破しました。とくに特定技能は前年末比で10万人以上増えており、人手不足分野での受け入れが本格的な軌道に乗ったことを示しています。

出典:出入国在留管理庁|令和7年末現在における在留外国人数について

受け入れ企業が増えれば、それだけ定着支援や労務管理の質が問われるようになります。助成金は単なる資金補助ではなく、国が求める受け入れ水準を示すガイドラインでもあると捉えると、制度の趣旨が理解しやすくなります。

人材確保等支援助成金 外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人雇用に直接ひもづく助成金として、まず検討すべきなのがこのコースです。外国人労働者就労環境整備助成コースは、雇用保険被保険者である外国人労働者を雇用し、所定の就労環境整備措置を導入する事業主を対象とする制度です。中小企業に限定されたコースではありません。受給要件を満たすと、1制度の導入につき20万円、1事業主当たり最大80万円が支給されます。

 

なお、このコースにおける外国人労働者からは、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の外国人が除外されています。

この制度の特徴は、経費の何パーセントを補助するという助成率方式ではなく、措置ごとの定額支給である点です。実際にかかった費用が20万円に届かなくても、要件を満たしていれば20万円が支給されます。就業規則の翻訳など、比較的取り組みやすい措置が対象になっているため、外国人材の受け入れを始めたばかりの企業でも活用しやすい制度といえます。

一方で、支給には定着率の要件があり、環境を整備しただけでは受給できません。制度全体を先に把握してから計画を立ててください。

支給額と申請スケジュール

支給額と手続きの期限は次のとおりです。措置は5種類ありますが、支給額の上限は80万円である点に注意してください。

項目

内容

支給額1措置につき20万円、上限80万円
支給方式経費に対する助成率ではなく定額支給
対象事業主雇用保険被保険者である外国人労働者を雇用し、所定の就労環境整備措置を導入する事業主
計画期間3か月以上1年以内
定着要件措置実施日の翌日から6か月間の離職率15%以下
支給申請期限離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内

出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)パンフレット(令和8年4月1日版)

スケジュールの考え方が独特です。就労環境整備計画を作成して労働局の認定を受け、計画期間中に措置を実施し、そこから6か月の離職率算定期間を経て、ようやく支給申請に進みます。計画の届出から入金まで1年前後を見込んでおくのが現実的です。

対象となる5つの整備措置

対象措置は5種類で、必須2種類に加えて選択措置から1つ以上を組み合わせて申請します。

区分

措置

内容の例

必須雇用労務責任者の選任講習を受講した担当者を事業所ごとに選任
必須就業規則等の多言語化就業規則や賃金規程を母国語等に翻訳
選択苦情・相談体制の整備相談窓口の設置と周知
選択一時帰国のための休暇制度の整備帰国のための休暇を就業規則に規定
選択社内マニュアル・標識類等の多言語化作業手順書、安全標識、動画マニュアルの多言語化

出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

雇用労務責任者は、その事業所に所属する者である必要があり、複数事業所の兼任は認められません。複数拠点で申請する場合は、拠点ごとに担当者を立ててください。

多言語化の対象は、就業規則にとどまらず現場の文書まで幅広く認められています。安全に直結する標識や作業手順書を母国語化することは、労働災害の防止という観点でも直接的な効果があります。助成金の要件を満たすための作業と考えるより、現場のリスクを下げる投資と捉えるほうが社内の理解も得やすくなります。

離職率15%以下という定着要件

支給の可否を左右するのが、この定着要件です。措置の実施日の翌日から6か月間の離職率が15%以下であることが求められます。定着率に言い換えれば85%以上です。

計算方法には実務上重要なポイントがあります。在留期間の満了による帰国は、離職者に含まれません。 技能実習や特定技能のように在留期間の上限がある在留資格で受け入れている場合でも、期間満了による帰国が理由でこの要件を落とすことはありません。

また、算定期間の初日時点の外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、離職者が1人以下であれば要件を満たすという特例があります。少人数で受け入れている企業ほど、この特例の有無で結論が変わります。

なお、措置の実施日前6か月間に事業主都合による解雇等がないことも要件です。整備措置を実施するタイミングを決める際は、直近の人員整理の有無を必ず確認してください。

出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)支給要領(令和8年4月1日版)

特定技能を雇用している事業所は「苦情・相談体制の整備」を選べない

実務で最も間違えやすいのがこの論点です。特定技能外国人を雇用している、または雇用しようとしている事業所は、選択措置のうち「苦情・相談体制の整備」を選ぶことができません。

理由は、特定技能制度では相談体制の整備が特定技能基準省令によって法令上の義務とされているためです。法令で義務づけられている取り組みは、助成金が対象とする「新たな整備」には当たらないという整理になります。

該当する事業所は、「一時帰国のための休暇制度の整備」または「社内マニュアル・標識類等の多言語化」を選択してください。特定技能の受け入れを検討している段階の企業も同様です。

なお、この助成金における「外国人労働者」には技能実習生も含まれます。雇用保険の被保険者となっていることが前提ですが、技能実習生を受け入れている企業も対象になり得ます。

出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)Q&A(令和8年4月1日版)

2026年度の改正で社会保険加入要件が廃止された

令和8年度(2026年度)は、このコースにいくつか実務に直結する変更がありました。

変更内容

実務への影響

社会保険加入要件の廃止社会保険関係の添付書類が不要になり、申請の負担が軽減
計画期間を3か月以上1年以内に統一計画書の期間設定がシンプルに
「社内マニュアル・標識類等の多言語化」に動画を含むと明記多言語の動画マニュアルも対象に
苦情・相談体制の「実施日」の定義を明確化就業規則の周知日ではなく、外国人労働者に体制内容を周知した日

令和7年度版のパンフレットには「社会保険の適用事業所であること」「対象事業所に雇用される労働者が社会保険の被保険者であること」という支給要件が記載されていましたが、令和8年度版ではこの要件と関連書類が削除されています。書類の準備を理由に申請を見送っていた企業は、改めて検討する価値があります。

出典:厚生労働省|同 パンフレット(令和8年4月1日版)厚生労働省|同 パンフレット(令和7年4月1日版)

キャリアアップ助成金|正社員化で最大80万円

非正規雇用の従業員を正社員に転換する際に活用できるのがキャリアアップ助成金です。外国人従業員も対象になり得ますが、在留資格によって明確に対象外となるケースがあるため、適用可否の確認が欠かせません。

金額の規模が大きく、中小企業では1人あたり最大80万円が支給されます。就労可能な在留資格を持つ人材の正社員化を進めている企業にとっては、検討する価値の高い制度です。

正社員化コースの支給額

令和8年度の正社員化コースの支給額は次のとおりです。

転換区分

対象者

中小企業

大企業

有期雇用から正規雇用重点支援対象者80万円(40万円×2期)60万円(30万円×2期)
有期雇用から正規雇用その他40万円30万円
無期雇用から正規雇用重点支援対象者40万円(20万円×2期)30万円(15万円×2期)
無期雇用から正規雇用その他20万円15万円

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)

加算措置も用意されています。正社員転換制度を新たに規定して転換した場合は中小企業で20万円、多様な正社員制度を新たに規定した場合は40万円が上乗せされます。令和8年度からは、自社サイト等で情報を公表した場合の情報公表加算20万円が新設されました。

必須要件として、正社員転換後6か月分の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額することが求められます。ここは残業代の計算漏れなどで実質的に3%に届いていないケースが起こりやすく、申請前に賃金台帳で検算しておくべき箇所です。支給申請の上限は1年度1事業所あたり20人です。

技能実習生・特定技能1号は対象外

外国人従業員にこの制度を使う場合、在留資格による適用除外が最大の確認事項です。

在留資格

正社員化コースの取扱い

技術・人文知識・国際業務 など就労系対象となり得る
永住者・定住者・日本人の配偶者等対象となり得る
技能実習対象外
特定技能1号対象外
特定技能2号対象となり得る
EPA候補者(試験合格前)対象外
EPA(試験合格後)対象となり得る

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金Q&A(令和8年4月8日版)

技能実習生と特定技能1号が対象外となる理由は、いずれも在留期間に上限があり、帰国が前提の在留資格だからです。無期雇用への転換を支援するという制度の趣旨と噛み合いません。

つまり、技能実習生や特定技能1号のみを受け入れ対象としている企業ではキャリアアップ助成金のうち主に「正社員化コース」が使用できません。この点を知らずに予算計上してしまうと、後から計画の組み直しが必要になります。国籍による制限はないものの、在留資格による制限はあるという区別を、社内で共有しておいてください。

処遇改善を支援する4つのコース

キャリアアップ助成金には正社員化支援のほかに、処遇改善を支援するコースがあります。外国人従業員を含む非正規雇用者全体の待遇を底上げする取り組みが対象です。

コース

支給額(中小企業)

賃金規定等改定コース基本給の増額率に応じて1人あたり4万〜7万円
賃金規定等共通化コース60万円
賞与・退職金制度導入コース40万円
短時間労働者労働時間延長支援コース1年目の取組で40万円、2年目で20万円

賃金規定等改定コースには、職務評価の手法を活用した場合の20万円、昇給制度を新たに規定した場合の20万円という加算があります。

なお、いわゆる「年収の壁」への対応として設けられていた社会保険適用時処遇改善コースは、令和8年3月末までに取組を行った事業主が対象とされ、実質的に短時間労働者労働時間延長支援コースへ引き継がれています。過去の情報を参照する際は注意してください。

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

人材開発支援助成金|教育訓練の費用と賃金を助成

外国人従業員に対する技能研修や資格取得支援を行う場合に活用できるのが人材開発支援助成金です。訓練にかかった経費だけでなく、訓練を受けている時間の賃金も助成対象になる点が大きな特徴です。

受け入れた外国人材の技能を計画的に引き上げたい企業にとって、実質的な人材育成の原資となります。ただし訓練計画の事前提出が必須です。人材開発支援助成金では「職業訓練実施計画届」を、原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出する必要があり、この期限を過ぎて提出した場合や、計画届の提出前に訓練を開始してしまった場合は対象外になります。

令和8年度のコース構成と助成率

令和8年度は7つのコースで構成されています。外国人雇用の文脈で使いやすいのは、人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースです。

コース・訓練メニュー

経費助成率(中小企業)

賃金助成(中小企業)

人材育成訓練(正規雇用等)45%1時間あたり800円
人材育成訓練(有期契約労働者等)70%1時間あたり1,000円
認定実習併用職業訓練45%1時間あたり800円
事業展開等リスキリング支援コース75%1時間あたり1,000円
高度デジタル人材訓練75%1時間あたり1,000円

出典:厚生労働省|人材開発支援助成金

賃金要件や資格等手当要件を満たす場合には、経費助成率と賃金助成額にそれぞれ加算があります。

令和8年度の変更点として、eラーニング・通信制訓練の経費助成上限額が中小企業で30万円から15万円へ引き下げられました(大企業は20万円から10万円)。オンライン研修を中心に訓練計画を組んでいる企業は、助成見込額の再試算が必要です。また、令和8年5月14日以降の支給申請では、受講料等の価格設定に関する疎明書の提出が必須化されています。

出典:厚生労働省|人材開発支援助成金 令和8年度改正リーフレット

外国人労働者に使う際の3つの注意点

外国人従業員にこの助成金を使う場合、押さえておくべき制限が3つあります。

1つめは、技能実習生に対するOJT系メニューの除外です。 技能実習制度はもともと受け入れ企業での実習を想定した制度であるため、OJTへの実施助成を含む認定実習併用職業訓練と有期実習型訓練は対象外とされています。座学中心のOFF-JT訓練であれば対象になり得ます。

2つめは、日本語訓練の扱いです。 職務に関連する専門用語の習得は対象となり得ますが、日常会話程度の日本語習得のみを目的とする講習は対象外です。訓練カリキュラムを作る際は、業務との関連性を明確に位置づけてください。

3つめは、雇用保険の適用です。 ワーキングホリデーや外国人家事使用人など、雇用保険の適用対象とならない働き方は助成金の対象外です。在留資格「外交」「公用」も同様に、雇用保険の被保険者とならないため対象になりません。

このほか、EPAの看護師・介護福祉士候補者は、試験合格前の段階では受入施設が研修を実施することが制度上定められているため、助成対象外となります。

出典:厚生労働省|人材開発支援助成金Q&A

採用・賃上げ・雇用維持で使えるその他の制度

外国人雇用に特化した制度ではありませんが、条件が合えば外国人従業員にも適用できる助成金があります。自社の状況に当てはまるものがないか確認してください。

これらの制度は「外国人だから使える」ものではなく、あくまで一般の雇用関係助成金を外国人従業員に対して使うという位置づけです。したがって、対象労働者の要件や事業主の要件は、日本人従業員の場合と同じ基準で判断されます。

トライアル雇用助成金

職業経験の不足などにより就職が困難な求職者を、ハローワーク等の紹介で試行的に雇用した場合に支給される制度です。1人あたり月額最大4万円、最長3か月間が支給され、母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は月額5万円となります。

対象となるのは、紹介日の前日から過去2年以内に2回以上の離職・転職があるなど、一定の要件に該当する求職者です。ハローワーク等の紹介であることが前提で、自社で直接応募を受けた場合は対象になりません。外国人材の採用でこの制度を使う場合は、募集の入口から設計しておく必要があります。

出典:厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

業務改善助成金

事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資等を行った中小企業を支援する制度です。助成上限額は最大600万円と規模が大きく、設備投資を予定している企業にとっては有力な選択肢になります。

助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は4/5、1,050円以上の場合は3/4です。令和8年度の交付申請は2026年9月1日から開始され、申請事業場に適用される地域別最低賃金発効日の前日または同年11月30日のいずれか早い日までに行う必要があります。交付決定年度の1月31日は申請締切ではなく、賃金引上げ、設備の納品・支払い等を完了させる事業完了期限です。

 

対象となるのは、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金を下回る中小企業・小規模事業者です。外国人労働者も対象になり得ますが、雇入れ後6か月を経過し、週所定労働時間20時間以上で雇用保険に加入していることなどの要件を確認する必要があります。

出典:厚生労働省|令和8年度 業務改善助成金のご案内

この助成金は雇用保険二事業ではなく労働基準局の所管であるため、他の雇用関係助成金とは要件の体系が異なります。外国人従業員も事業場内最低賃金の対象者としてカウントされるため、外国人比率の高い事業場ほど賃上げのインパクトが大きくなります。

雇用調整助成金

景気の変動等により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業等によって雇用を維持した場合に支給される制度です。助成率は中小企業で2/3、大企業で1/2、1人1日あたりの上限額は8,870円です(令和8年4月1日時点)。

雇用を維持するための制度であるため平時に活用するものではありませんが、受注変動の大きい業種では制度の存在を知っておく意味があります。なお、技能実習生に対して実施する教育訓練は加算の対象外とされています。

出典:厚生労働省|雇用調整助成金

上限額は雇用保険の基本手当日額の最高額に連動する仕組みです。令和8年8月1日から基本手当日額の最高額が9,110円に改定されているため、申請の際は厚生労働省の最新の公表値を必ず確認してください。

出典:厚生労働省|雇用保険の基本手当日額の変更(令和8年8月1日から)

自治体独自の助成金の探し方

国の制度に加えて、地方自治体が独自に外国人材の受け入れ支援を行っているケースが増えています。研修費用の補助、住居費の補助、資格取得費用の補助、定着奨励金など、内容は自治体によってさまざまです。

ただし、自治体の制度は年度ごとに改廃が激しく、公募期間も限られています。ウェブ上の一覧記事は情報が古くなっていることが多いため、最終的には自社の所在地の自治体公式サイトで直接確認するのが確実です。

探し方としては、次の3つのルートが実用的です。

  • 都道府県および市区町村の公式サイトで「外国人材」「多文化共生」の担当課のページを確認する
  • 都道府県の産業振興公社・中小企業支援センターの補助金一覧を確認する
  • 厚生労働省の雇用関係助成金検索ツールで国の制度を絞り込んだうえで、自治体の上乗せがないか確認する

いずれの場合も、申請前に担当課へ電話で確認するのが最も確実です。募集要項が更新されていない自治体もあるためです。

在留資格によって使える助成金は変わる

ここまで見てきたとおり、「外国人を雇えば助成金が出る」という理解は実務では通用しません。同じ外国人従業員でも、在留資格によって対象になる制度とならない制度が分かれます。

社内で助成金の活用を検討する際は、まず自社が受け入れている(あるいは受け入れ予定の)在留資格を確認し、そのうえで使える制度を絞り込むという順序で進めてください。この順序を逆にすると、制度に合わない前提で計画を立てることになります。

在留資格別の適用可否

在留資格

就労環境整備助成コース

キャリアアップ(正社員化)

人材開発(OJT系)

技術・人文知識・国際業務 など
永住者・定住者・日本人の配偶者等
特定技能1号○(措置の選択に制限あり)×
特定技能2号○(措置の選択に制限あり)
技能実習××
EPA候補者(試験合格前)××

出典:(令和8年4月1日版)厚生労働省|キャリアアップ助成金Q&A(令和8年4月8日版)

この表から読み取れる実務上の結論は明快です。技能実習生や特定技能1号のみを受け入れている企業はキャリアアップ助成金のうち主に「正社員化コース」が使えません。

逆に、技術・人文知識・国際業務や身分系の在留資格で受け入れている企業は、キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金も含めて幅広く検討できます。有期雇用労働者等を正社員化するケースは、金額面でもインパクトが大きくなります。

在留資格ごとの受け入れ要件や、自社の職務内容との適合性の判断に迷う場合は、外国人材の受け入れ支援サービスのような専門事業者に相談しながら整理する方法もあります。

2027年4月の育成就労制度で何が変わるか

2027年(令和9年)4月1日、技能実習制度に代わる育成就労制度が施行されます。人手不足分野において特定技能1号の水準の技能を持つ人材を育成することを目的とした制度で、在留期間は3年間です。

制度面での大きな変更点は、本人の意向による転籍が一定の条件下で認められることと、監理団体に代わる監理支援機関が許可制となり基準が厳格化されることです。施行日前に入国して技能実習を行っている人は引き続き技能実習を継続できますが、育成就労への移行はできません。

出典:出入国在留管理庁|育成就労制度の制度概要・関係法令

助成金との関係については、育成就労外国人が各助成金の対象となるかを明示した公表資料は、厚生労働省・出入国在留管理庁のいずれからも現時点で出ていません

参考になるのは既存の取扱いです。就労環境整備助成コースは技能実習生を「外国人労働者」に含めており、キャリアアップ助成金の正社員化コースは技能実習生と特定技能1号を対象外としています。育成就労は3年間の育成を前提とする制度であるため、キャリアアップ助成金では同様の扱いとなる可能性がありますが、現時点で断定はできません。 制度の詳細は今後の公表を待つ必要があります。申請の流れと共通要件

助成金は「申請すればもらえる」ものではなく、決められた順序を守って初めて受給できる制度です。とくに計画の事前提出を求める助成金では、順序を1つ間違えるだけで不支給になります。

社内で助成金の活用を進める場合は、担当者だけでなく現場と経理にもスケジュールを共有しておいてください。訓練の実施や措置の導入は現場が動く必要があり、立替払いは経理が関わるためです。

受給までの5ステップ

多くの雇用関係助成金は、次の流れで進みます。

  1. 計画の作成・提出:計画の作成・提出:制度により手続きが異なります。外国人労働者就労環境整備助成コースは「就労環境整備計画」を都道府県労働局に提出し認定を受けます。キャリアアップ助成金は取組を始める前に「キャリアアップ計画」を提出します(認定不要)。人材開発支援助成金は「職業訓練実施計画届」を、原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出します。
  2. 計画の実施:認定を受けた計画に沿って、措置の導入や訓練を実施する
  3. 算定期間の経過:離職率の算定期間や賃金支払期間が経過するのを待つ
  4. 支給申請:期限内に支給申請書と証拠書類を提出する
  5. 審査・支給決定・入金:労働局の審査を経て支給が決定し、指定口座へ入金される

最も注意すべきは1と2の順序です。制度ごとに求められる手続きは異なりますが、いずれの制度でも、所定の手続きを経る前に着手した取り組みは、原則として助成の対象になりません。 「先に研修を実施してから申請すればよい」という進め方は通用しません。

支給申請の期限は、原則として各助成金の支給要領に定める日の翌日から起算して2か月以内です。郵送の場合は申請期間内に到達している必要があるため、締切間際の投函は避けてください。

雇用関係助成金に共通する要件

個別の助成金の要件を満たしていても、共通要件を外していると受給できません。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 支給申請日および支給決定日の時点で、雇用保険被保険者が在籍していること
  • 審査に必要な書類を整備・保管し、労働局から求められたら提出すること
  • 労働局・ハローワーク等の実地調査に応じること
  • 関係書類を支給決定日の翌日から5年間保存すること

出典:厚生労働省|令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)

書類の5年保存は見落とされがちですが、後日の調査で提出できないと支給決定が取り消される可能性があります。申請の時点で保存場所と保存期間を決めておくことをおすすめします。

受給できない事業主

次のいずれかに該当する事業主は、雇用関係助成金を受給できません。

事由

内容

不正受給不支給決定日または支給決定取消日から5年を経過していない
労働保険料の未納申請年度の前年度より前のいずれかの年度の労働保険料が未納
労働関係法令違反申請日の前日から過去1年間に労働関係法令違反がある
対象外業種性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業など
反社会的勢力事業主または役員等が暴力団と関係を有する
倒産申請日または支給決定日の時点で倒産している

出典:厚生労働省|令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)

なお、「事業主都合の離職者がいると受給できない」という論点は共通要件ではなく、各コース固有の要件として設定されています。就労環境整備助成コースであれば「措置実施日前6か月間に解雇等がないこと」、キャリアアップ助成金の正社員化コースであれば転換日の前後6か月における解雇等の制限がこれにあたります。

助成金は原則「後払い」である

受給の実務で最もつまずきやすいのが、入金までのタイムラグです。

助成金は、計画を立てて実行し、その結果を審査したうえで支給されます。支給申請から入金までは数か月かかるのが通常で、就労環境整備助成コースの場合は計画期間に加えて6か月の離職率算定期間があるため、計画の届出から入金まで1年前後を見込む必要があります。

つまり、翻訳費用や研修費用はいったん自社で全額を立て替えることになります。社内稟議では、支出のタイミングと入金のタイミングを分けて説明してください。「助成金が出るから実質負担はゼロ」という説明の仕方をすると、資金繰りの前提を誤らせます。

不正受給のペナルティと社内チェック体制

助成金は返済不要の制度ですが、不正受給と判断された場合の代償は非常に重いものです。ここを社内で共有しておくことが、結果的に担当者を守ることにつながります。

返還を求められる金額は、次の3つの合計です。

  1. 不正受給により返還を求められた額の全額
  2. 不正受給の日の翌日から納付の日まで年3%の割合で算定した延滞金
  3. 返還を求められた額の20%に相当する額

加えて、不正受給決定日から5年間、すべての雇用関係助成金が受給できなくなります。事業主名・所在地・不正受給額は原則として公表されます。

見落とされがちなのが、代理人である社会保険労務士等も連帯債務を負う点です。代理人は請求があった場合に直ちに弁済すべき義務を負い、さらに5年間、雇用関係助成金の申請代行が受理されなくなります。依頼する側にとっても、依頼される側にとっても、事実と異なる申請は許容されないということです。

出典:厚生労働省|雇用関係助成金の不正受給について

悪意がなくても不正受給と判断されるケースがあります。実際に起こりやすいのは次のパターンです。

  • 賃金台帳や出勤簿の記載が、実際の勤務実態と食い違っている
  • 計画の認定前に訓練や措置に着手してしまっている
  • 残業代の計算漏れがあり、賃金3%増額の要件を実質的に満たしていない
  • 実際には受講していない訓練を、受講済として申請している
  • 外国人従業員本人が制度の内容を理解しないまま書類に署名している

対策として有効なのは、申請前に賃金台帳・出勤簿・就業規則・雇用契約書の記載が相互に矛盾していないかを突き合わせるという運用です。とくに外国人従業員の場合、本人が内容を理解できる言語で説明したうえで署名を得た記録を残しておくと、後の調査でも説明がつきます。

助成金以外に使える支援制度と相談先

外国人雇用の支援は、資金の支給だけではありません。無料で使える公的な相談制度もあり、助成金の要件を満たすうえでも役立ちます。

とくに雇用労務責任者講習は、就労環境整備助成コースの必須措置に直結するため、助成金の活用を検討している企業は早めに受講しておく価値があります。

外国人雇用管理アドバイザー(無料)

都道府県労働局に設置されている制度で、外国人労働者の雇用管理について無料で相談できます。相談内容は、適切な雇用管理の基本事項、就業規則、給与、福利厚生、安全衛生などが対象です。

申し込みは最寄りのハローワーク経由で行い、事前に相談内容を確認したうえで日程を調整します。外部の専門家に有料で相談する前に、まずここで方向性を確認するという使い方が効率的です。

出典:厚生労働省|外国人雇用管理アドバイザー

外国人労働者雇用労務責任者講習(無料)

外国人労働者を10人以上雇用する事業所では、雇用労務責任者の選任が求められています(外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針にもとづく)。

出典:厚生労働省|外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針

厚生労働省の委託事業として実施されている講習は、オンラインで無料受講でき、講義4本・約193分という構成です。外国人雇用のルール、労働関係法令、社会保険関係法令、異文化理解とコミュニケーション上の配慮という実務的な内容が扱われます。

修了後に受講証明書のPDFをダウンロードできますが、当日中に取得しないと再発行されない点に注意してください。この講習の受講は、就労環境整備助成コースの「雇用労務責任者の選任」措置とも直結します。

出典:厚生労働省|外国人労働者雇用労務責任者講習

経済産業省の外国人材受け入れ支援事業

助成金ではありませんが、外国人材の受け入れに直接関わる経済産業省の事業もあります。制度の性質が助成金とは異なるため、混同しないよう整理して押さえてください。

国際化促進インターンシップ事業は、新興国の人材を日本の中堅・中小企業がインターンとして受け入れる仕組みで、渡航費や滞在費を国が負担するため、受入企業の金銭負担が軽いのが特徴です。令和8年度も継続して実施されています。

出典:経済産業省|令和8年度 技術・人材協力を通じた新興国との共創推進事業(国際化促進インターンシップ事業)公募

一方、製造業外国従業員受入事業は廃止が決定しています。在留資格「企業内転勤2号」の創設等を踏まえ、令和8年2月9日に廃止告示が公布され、令和9年4月1日から施行されます。古い記事を参照する際は注意してください。

出典:経済産業省|製造業外国従業員受入事業

なお、外国人を雇用した際には「外国人雇用状況の届出」が法律上の義務です。雇用保険被保険者となる場合は雇入れの翌月10日まで、被保険者とならない場合は翌月末日までに届け出る必要があり、届出を怠ったり虚偽の届出をしたりした場合は30万円以下の罰金が科されます。助成金以前の基本として、必ず押さえてください。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出について

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