不法滞在をめぐる2026年の制度動向|摘発強化・通報と報償金の仕組み・企業に求められる確認実務 - GTN MAGAZINE
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不法滞在をめぐる2026年の制度動向|摘発強化・通報と報償金の仕組み・企業に求められる確認実務

2026年に入り、不法滞在への対応をめぐる国の方針が相次いで示されました。5月には「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」で摘発の強化が新規施策として加わり、7月には出入国在留管理基本計画が策定されています。自治体でも、不法就労の通報に報奨金を出す仕組みが登場しました。

外国人材を雇用する企業にとって、この流れは「取り締まりが厳しくなった」という一言では説明しきれません。確認手順の抜けが自社の法的リスクにつながる構造は変わらないまま、行政側の情報連携と摘発体制が強化されているためです。この記事では官公庁の一次情報をもとに、制度の全体像、通報と報償金の仕組み、企業の確認実務を解説します。

目次

不法滞在とは|押さえたい定義と2026年公表の統計

「不法滞在」は日常的によく使われる言葉ですが、法令上は複数の状態をまとめて指す総称です。企業実務で必要なのは、どの状態がどの手続きの不備から生じるのかを制度として理解することです。ここでは定義を整理し、公表されている統計を確認します。

不法滞在・不法残留・不法就労は何が違うのか

まず3つの用語を整理します。「不法滞在」は、在留資格を持たずに日本に滞在している状態の総称です。在留期間の満了日を過ぎてとどまっている状態を「不法残留(オーバーステイ)」、有効な旅券や上陸許可を得ずに入国した状態を「不法入国」と呼び分けます。

一方の「不法就労」は、滞在の適法性とは別の軸で判断されます。適法に滞在している人であっても、認められた範囲を超えて働けば不法就労に当たります。留学生が資格外活動許可の上限時間を超えて働くケースが典型例です。企業が管理する範囲で整理すると次のとおりです。

用語

制度上の状態

企業が確認するタイミング

不法残留在留期間の満了日を過ぎて滞在している採用時の在留カード確認/雇用中の期限管理
不法入国・不法上陸有効な旅券や上陸許可を得ずに入国した採用時の在留カード確認・失効情報照会
資格外活動認められた範囲を超えて就労している採用時の就労可否確認/雇用中の勤務時間管理

退去強制の事由は出入国管理及び難民認定法(入管法)第24条に列挙されており、不法残留も不法入国もこの条文に基づいて手続きが進みます。「不法残留者」は制度上の状態を示す法令用語であり、特定の国籍や属性を指す語ではありません。

出典:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」

不法残留者数は68,488人|前年から6,375人減少

出入国在留管理庁が2026年3月27日に公表した統計によると、2026年1月1日現在の不法残留者数は68,488人です。前年同期の74,863人から6,375人(8.5パーセント)減少しました。

国籍・地域別(上位5)

人数

在留資格別(上位5)

人数

ベトナム11,601人短期滞在41,607人
タイ10,907人技能実習9,323人
韓国10,020人特定活動7,306人
中国5,827人留学2,173人
フィリピン4,393人日本人の配偶者等1,724人

在留資格別では、短期滞在が41,607人と突出しています。上位5区分を合算すると62,133人で、総数68,488人の90.7パーセントに当たります(各区分の公表値を記事で合算した数値)。

ここから読み取れるのは、不法残留の多くが就労資格とは別の入口から生じているという構造です。採用の現場では、在留資格の種類と在留期間を、書面ではなく在留カードの原本で確認する工程が機能しているかが論点になります。

出典:出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について」(令和8年1月1日現在)

退去強制手続の内訳から見える実務上の論点

同じ日に公表された「令和7年における入管法違反事件について」では、2025年に退去強制手続等が執られた外国人は18,442人(前年比466人減少)で、うち不法就労の事実が認められた人は13,435人(72.9パーセント)でした。違反事由別では不法残留が17,031人で92.3パーセント、在留資格別では短期滞在が6,671人で最も多く、上位5つで84.0パーセントを占めました。

区分

内訳

就労場所別(上位5)茨城3,518人、千葉1,967人、群馬1,426人、埼玉1,366人、愛知1,035人
関東1都6県の合計10,268人(不法就労者全体の76.4パーセント)
就労内容別(上位3)農業従事者5,227人(38.9パーセント)、建設作業者4,011人(29.9パーセント)、工員1,095人(8.2パーセント)

この数値は「どの地域・どの業種で働く人に問題があるか」を示すものではなく、季節や工期に応じて短期間の人員調整が起きやすい領域ほど、確認工程が形骸化しやすいという雇用管理の設計上の課題として読むこともできます。繁忙期の採用フローを点検する材料になります。

出典:出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」(2026年3月公表)

2026年に強化された国の不法滞在対策|ゼロプランと基本計画

2026年は、不法滞在対策の方針が短期間に重ねて示されました。企業にとって重要なのは個々の施策名ではなく、行政が「摘発」と「情報連携」の両輪を強める方向に進んでいるという点です。ここでは3つの公表資料から骨格を確認します。

「摘発の強化」が新規施策として加わった強力推進パッケージ

法務省は2026年5月22日、「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を公表しました。2025年5月に公表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」をさらに推進するための重点施策をまとめたもので、入管庁は「特に約6万8千人(令和8年1月1日現在)いる不法残留者数を確実に減少させていく観点から、先日公表したゼロプランに『摘発の強化』を新規施策として加えるなどし」と説明しています。

出典:出入国在留管理庁「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~について」

パッケージは「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の3段階で構成されます。新規施策については「不法残留者等を縮減していくためには、摘発を強化することが重要と考えられたことから、『摘発の強化』を重点的に取り組むべき施策として新たに加えた」と説明され、具体策として合同・入管単独摘発の強化とサイバーパトロールの実現が挙げられました。送還面では、「2027年までに(中略)2024年の実績(249人)から倍増(約500人)することを目指す」という護送官付き国費送還の目標が示されています。

出典:法務省「【解説】不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」(令和8年5月22日公表)

出入国在留管理基本計画が示す5つの基本方針

2026年7月、法務省は出入国在留管理基本計画を策定しました。行政の中期的な方向性を示す基本文書で、次の5つの基本方針が掲げられています。

  • デジタル技術等を活用した厳格かつ円滑な出入国審査を推進していくこと
  • 本邦に在留する全ての外国人について適正な在留管理を実施すること
  • 受け入れた外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた環境を整備していくこと
  • 安全・安心な社会の実現に向け、厳格かつ適正な退去強制手続を効果的に実施し、不法滞在者等に対する対策を強化していくこと
  • 難民及び補完的保護対象者等の適正かつ迅速な保護を図り、適切な支援を実施すること

企業実務と関わりが深いのは4つ目の柱です。基本計画は不法滞在者対策について、ゼロプランの摘発強化に加え、「外国人雇用状況届出情報のオンライン連携を活用して外国人の在留状況及び就労状況を的確に把握」する方針を示しています。摘発の話と企業の届出・確認の話は、自社が提出した届出情報が在留管理の基礎データとして扱われるという形で地続きです。

出典:法務省「出入国在留管理基本計画」(2026年7月)

予算・体制面の動きから読む今後の方向性

方針が実際に動くかは予算と定員の要求に表れます。法務省の令和9年度概算要求では、出入国在留管理庁関係経費として133,168百万円が要求されました。令和8年度当初予算額は86,009百万円です。

不法滞在対策に直接関わるのは「治安の維持、不法滞在者対策」の1,293百万円で、被退去強制者の送還促進などが施策として挙げられています。定員面では、主な要求事項として「出入国在留管理体制の強化等 入国審査官等 271人」の増員が示されました。

概算要求は要求段階の数値であり、予算編成の過程で変動するため確定額ではありません。それでも、審査・在留管理・摘発のいずれの局面でも体制強化の方向にあることは読み取れます。企業側の備えとしては、調査や照会に対して確認記録を提示できる状態にしておく方法があります。

出典:法務省「令和9年度概算要求について」

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通報と報償金の仕組み

「不法滞在を通報すると謝礼がもらえる」という情報は流通していますが、根拠となる制度の中身は正確に理解されていないことが少なくありません。入管法に基づく報償金と、自治体が独自に設ける報奨金は別の制度です。両者を切り分けて整理します。

入管法第62条|「できる」規定と「しなければならない」規定

通報の根拠は入管法第62条です。同条第1項は「何人も、第二十四条各号のいずれかに該当すると思料する外国人を知つたときは、その旨を通報することができる」と定めており、一般の個人や事業者にとっては義務ではなく任意の行為として位置づけられています。

これに対して第2項は「国又は地方公共団体の職員は、その職務を遂行するに当つて前項の外国人を知ったときは、その旨を通報しなければならない」と定めています。公務員については、職務の遂行に伴って知った場合に通報義務が生じるという書き分けです。ゼロプラン強力推進パッケージも、この義務を「改めて周知した上で、不法就労助長者に関する情報提供の更なる推進を検討していく」としました。

通報の方法は、第5項が「書面又は口頭をもって、所轄の入国審査官又は入国警備官に対してしなければならない」と定めています。入管庁は不法滞在・偽装滞在への対策に関する情報の受付窓口も設けており、外国人に対する誹謗中傷は受け付けない旨が明記されています。

出典:出入国在留管理庁「情報受付」

入管法第66条の報償金は「5万円以下」|要件は退去強制令書の発付

いわゆる「謝礼」の根拠は入管法第66条です。条文は「第六十二条第一項の規定による通報をした者がある場合において、その通報に基いて退去強制令書が発付されたときは、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、その通報者に対し、五万円以下の金額を報償金として交付することができる」と定めています。ただし、国または地方公共団体の職員が職務遂行に伴って知り得た事実に基づく通報は、この限りでないとされています。

条文を分解すると、支給の条件は次の3点に整理できます。

  • 第62条第1項の通報であること(公務員が職務上知った事実に基づく通報は対象外)
  • その通報に基づいて退去強制令書が発付されたこと
  • 金額は「5万円以下」で、交付は「することができる」という裁量的な規定であること

通報しただけで一律に支払われるものではなく、手続きが退去強制令書の発付まで進んだことが前提です。企業にとって意味があるのは、外部への通報を検討する前に自社の確認工程を点検しておくことです。

茨城県の不法就労通報報奨金制度と、企業が置かれる立場

自治体レベルでも動きがあります。茨城県は「不法就労情報提供システム」と「不法就労通報報奨金制度」を設け、不法就労助長罪に違反している疑いのある事業者等に関する情報を広く一般から受け付けています。窓口は電子申請に限定されています。

報奨金は原則1万円で、「通報の結果、事業者等の不法就労助長罪での逮捕につながったものなど、特に有益な情報」が対象です。県のガイドラインでは、不法就労助長罪以外の罪状で摘発された場合や逮捕に至らなかった場合は対象外とされています。通報者の身元情報の保護と、悪質な通報への対応も定められています。

出典:茨城県「不法就労に関する情報の通報について」(2026年7月22日更新)

制度の土台が「茨城県外国人の不法就労活動の防止に関する条例」(令和8年茨城県条例第27号)で、2026年7月1日から施行されています。条例は事業者の責務として「外国人の不法就労活動の防止のために必要な措置を講ずるよう努める」ことなどを定めました。通報制度の照準が、働く個人ではなく事業者側に向けられている点は押さえておきたいところです。自社が対象になり得る前提で、採用・雇用管理の手順や確認記録などを第三者に説明できる状態にしておくことが備えにつながります。

出典:茨城県「茨城県外国人の不法就労活動の防止に関する条例」(令和8年茨城県条例第27号)

他省庁・自治体との連携|情報がつながる仕組みを理解する

不法滞在対策は入管庁だけで完結する分野ではなく、労働・警察・自治体行政と複数の府省庁が関与する形で設計されています。他省庁との連携は、企業から見れば提出した情報がどこでどうつながるかという実務上の関心に置き換えられます。

総合的対応策が示す省庁横断の枠組み

2026年1月23日、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議が「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定しました。施策ごとに担当府省庁が明記される形式で、法務省、警察庁、厚生労働省、総務省、デジタル庁、国土交通省などが名を連ねています。

不法滞在・不法就労に関しては「不法滞在者ゼロプランの強力な推進等」「不法就労対策の強力な推進等」という項目が置かれ、「不法就労助長者については、刑事処分の内容にかかわらず、警察等から情報提供を受けるなどして積極的に退去強制手続を執ることとする」との記載があります。偽造在留カード対策では「在留カード等読取アプリケーションの使用の徹底を促す広報資料を作成し、周知している」とされています。

行政側が「摘発」と「企業への確認手段の提供」をセットで進めている構図です。確認手段が提供されているにもかかわらず活用していない状態では、企業として不法就労対策への姿勢が問われかねません。

出典:内閣官房「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(令和8年1月23日)

外国人雇用状況の届出が在留管理につながる

企業と行政の接点として身近なのが、外国人雇用状況の届出です。労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律に基づき、雇い入れたときと離職したときにハローワークへ届け出ることが事業主に義務付けられています。「外交」「公用」と特別永住者は対象外です。

期限は雇用保険の被保険者かどうかで異なり、被保険者は雇入れが翌月10日まで、離職は翌日から起算して10日以内、被保険者でない場合は雇入れ・離職ともに翌月末日までです。届出を怠ったり虚偽の届出を行ったりした場合は、30万円以下の罰金の対象とされています。

出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」

受入れ機関側には、これとは別の届出もあります。就労資格のうち法務省令で定める在留資格を持つ中長期在留者や「留学」の在留資格を持つ人を受け入れている機関は、受入れの開始・終了等について14日以内に入管庁へ届け出るよう努めることとされています(入管法第19条の17)。この届出は努力義務で、届出を行わなかった場合に刑罰が科されることはありませんが、所属する外国人の在留期間更新等の許可申請時に、事実関係の確認など慎重な審査が行われることがあります。また、外国人雇用状況の届出が義務付けられている事業主は、その届出を提出していれば、入管庁へ重ねて届け出る必要はありません。2つは別の制度である点を、社内の運用フローで区別しておきたいところです。

出典:出入国在留管理庁「所属機関による届出手続」

前述のとおり、基本計画はこの届出情報のオンライン連携を在留状況・就労状況の把握に用いる方針を示しています。ゼロプラン強力推進パッケージも「外国人雇用状況届出制度の適正化を図るための取組を強化している都道府県労働局等とも連携し」と記しており、厚生労働省側の体制強化と入管庁側の在留管理が接続される構図です。届出の遅れや記載誤りは在留状況の把握に食い違いを生む要因になり得ます。

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企業が問われる責任|不法就労助長罪と2027年4月の引上げ

摘発強化の局面で企業が直面するのは、雇用した側の責任です。不法就労助長罪は、外国人本人の違反とは別に事業主を処罰の対象とする規定で、2027年4月1日以降は法定刑が引き上げられます。該当行為と罰則の水準を確認します。

不法就労に当たる3つのケース

入管庁は事業主向けの案内で、不法就労に当たるケースを3つに整理しています。

類型

具体例

在留資格がない状態での就労有効な上陸許可を得ずに入国した人や在留期限が過ぎている人が働く。退去強制されることが既に決まっている人が働く
認められた範囲を超える就労資格外活動許可の上限時間を超えて働く。許可された内容と異なる業務に従事する
許可を受けていない就労就労が認められていない在留資格のまま、資格外活動許可を得ずに働く

企業の確認工程で防ぎやすいのは2つ目と3つ目です。表面で「就労制限の有無」欄を確認し、就労不可と記載されている場合は裏面の「資格外活動許可欄」まで確認するという2ステップを踏めば、多くは採用時点で把握できます。裏面の確認を怠ることが、留学生や家族滞在の方を採用する場面での典型的な見落としです。これは国籍を問わない雇用時の標準手順として設計すべきもので、特定の国籍や外見を理由に確認の厳しさを変える運用は適正な雇用管理とはいえません。

出典:出入国在留管理庁「外国人を雇用する事業主の皆様へ」(2019年6月)

法定刑は5年以下の拘禁刑・500万円以下へ

不法就労助長罪の現行の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。2025年6月1日に懲役と禁錮が廃止され拘禁刑に一本化されたため、それ以前に作成された資料では「懲役」と表記されている点に留意してください。

出典:法務省「拘禁刑創設の趣旨」

令和6年改正法により、この法定刑は5年以下または500万円以下に引き上げられ、罰金と拘禁刑の併科も可能とされています。

出典:出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

適用の時期について、ゼロプラン強力推進パッケージは「2027年4月1日以降は、『5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金』に引き上げられる」と記載しています。育成就労制度の運用開始と重なる時期であり、移行準備と確認体制の点検を同じタイミングで進めるという進め方があります。

あわせて押さえておきたいのは、故意がなくても処罰の対象になり得る点です。入管庁は「当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には、処罰を免れません」と明記しています。確認を怠ったこと自体が過失として評価されるという整理です。

摘発強化の局面で企業が見直したい確認実務

制度の変化を踏まえ、最後に企業側の実務を整理します。採用時の在留カード確認、電子的な有効性確認、雇用中の期限管理の3つを仕組みとして回せているかが要点です。

採用時|原本確認・失効情報照会・読取アプリの3点セット

確認は在留カードの原本で行います。コピーや撮影した画像では、券面の細部やICチップの情報まで確認できないためです。順序は、氏名・生年月日と本人の一致、在留期間の満了日、在留資格の種類、就労制限の有無、必要に応じて裏面の資格外活動許可欄です。

券面の確認に加えて有効なのが、入管庁の「在留カード等番号失効情報照会」です。番号と有効期間の満了日を入力すると、その番号が失効していないかを確認できます。「在留カード等読取アプリケーション」では、ICチップから読み取った氏名、生年月日、在留資格、在留期間、在留カード番号、顔画像などを表示でき、券面の記載と一致するかを見ることが券面の改変を見抜く手がかりになります。

カードの様式にも変更がありました。2026年6月14日から、新様式の在留カード等および特定在留カード等の交付が開始されています。読取アプリは2026年8月19日の改修により、新様式と特定在留カードの「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」を表示できるようになりました。見慣れない様式を理由に偽造を疑う運用は避け、アプリでの読み取りで確認する方法があります。

出典:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」(2026年8月19日更新)

雇用中|在留期限の管理と届出のタイミング

採用時の確認だけでは対応しきれない点もあります。更新手続きが間に合わなければ、雇用が続いたまま在留資格を失う状態が生じ得ます。満了日を人事システムに登録し、3か月前・1か月前といった段階でアラートが出る運用にしておくと、本人と会社の双方が準備の時期を把握しやすくなります。

在留資格の変更や更新が行われた場合は、新しい在留カードで再度確認します。資格外活動許可は在留期間と連動するため、更新や変更を行った時点で改めて許可を取り直す必要がある点も、留学生や家族滞在の方を雇用している場合の確認事項です。

あわせて、外国人雇用状況の届出を期限内に提出します。雇入れと離職の双方が対象で、内容は在留カードの記載と一致している必要があります。確認記録・届出の控え・在留期限の管理表を一つにまとめておくだけでも、社内説明や行政からの照会に対応しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

人事や現場から寄せられることの多い質問をまとめました。社内共有用のQ&Aとしても使える形で整理しています。

企業に不法滞在を通報する義務はありますか

一般の事業者に通報義務はありません。入管法第62条第1項は「通報することができる」と定めた任意の規定であり、民間企業はこれに当たります。一方、国または地方公共団体の職員については、同条第2項により、職務を遂行するに当たって該当する外国人を知ったときは通報しなければならないと定められています。企業に求められるのは通報ではなく、採用時の在留カード確認と雇用中の期限管理という自社の工程を機能させることです。

不法滞在を通報すると報償金はもらえますか

国の制度としては入管法第66条の報償金があり、金額は5万円以下です。適用対象は第62条第1項に基づく通報をした人で、その通報に基づいて退去強制令書が発付された場合に限られます。交付は「することができる」という裁量的な規定で、公務員が職務遂行に伴って知り得た事実に基づく通報は対象外です。一方、自治体が独自に設ける制度もあり、茨城県の不法就労通報報奨金制度は原則1万円で、事業者等の不法就労助長罪での逮捕につながった情報などが対象とされています。

在留期限が切れている従業員に気づいたらどうすればよいですか

まず就労を止め、本人が速やかに出入国在留管理官署へ相談・出頭できるよう情報を伝えることが出発点になります。一定の要件を満たす場合には、収容をしないまま簡易な手続で出国できる出国命令制度の対象となる可能性があります。要件は次の5つで、すべてを満たす必要があります。1つ目は、違反調査の開始前に速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、または違反調査の開始後、入国審査官による認定通知書を受ける前に速やかに出国する意思を表明したことのいずれかに当たることです。残りは、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、窃盗罪等の一定の罪により拘禁刑に処せられたものでないこと、過去に退去強制や出国命令を受けて出国したことがないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることです。

出典:出入国在留管理庁「出国命令」

退去強制と出国命令では、その後の再入国にどのような違いがありますか

上陸拒否期間の長さが異なります。退去強制された場合は原則として退去強制された日から5年、過去に退去強制歴がある場合は10年です。これに対し、出国命令により出国した場合は、違反調査の開始前に自ら出頭したときは原則として出国した日から1年とされています。違反調査の開始後に出国の意思を表明したときは、「短期滞在」の在留資格で入国しようとする場合は原則として出国した日から5年、それ以外の在留資格で入国しようとする場合は原則として出国した日から1年とされています。 ただし、1年以上の拘禁刑等に処せられた場合などは、期間の制限なく上陸を拒否されるとされています。

出典:出入国在留管理庁「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」/出入国在留管理庁「出国命令」

在留カードの確認を怠った場合、企業はどこまで責任を問われますか

故意がなくても責任を問われ得ます。適用対象は不法就労助長罪に該当する事業主で、入管庁は「当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には、処罰を免れません」と明記しています。確認した事実を記録として残しているかも実務上の論点です。原本の確認、失効情報照会または読取アプリでの確認、確認日の記録という3点の定型化が適切と考えられます。

不法就労助長罪の罰則が引き上げられるのはいつからですか

適用対象は不法就労助長罪に該当する事業主です。時期については、ゼロプラン強力推進パッケージが「2027年4月1日以降は、『5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金』に引き上げられる」と記載しています。現行の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。2026年9月時点では引上げ前の水準が適用されており、引上げの適用開始までに確認体制を点検しておくという時間軸で準備を進める方法があります。

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