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インドネシア人の介護採用|主な受入れ4つの方法の比較・採用の流れ・注意点を解説

介護分野の外国人材のなかで受け入れが伸びているのがインドネシア人材です。出入国在留管理庁の統計では、介護分野で働く特定技能1号のインドネシア国籍者は21,139人(2025年12月末時点の速報値)で、国籍・地域別で最も多くなっています。

介護職として働くための主な受入れ制度は4つあり、選ぶ方法によって採用の流れ、費用、必要な手続きが変わります。さらにインドネシアには政府システムへの登録などインドネシア政府側の手続きがあり、把握していないと日本の在留審査を通過した後に出国準備が滞る可能性があります。

本記事では、受入れ方法の比較、採用の流れ、送り出し機関の位置づけ、注意が必要な点を官公庁の一次情報をもとに整理します。

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目次

データで見るインドネシア人介護人材の受け入れ状況

社内で提案する際にまず求められるのは「なぜ外国人材か」「なぜインドネシアか」への客観的な回答です。以下、順に数字を確認します。

介護職員は2040年度までに約57万人の増員が必要と推計される

厚生労働省が第9期介護保険事業計画に基づき公表した推計では、介護職員の必要数は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人です。2022年度の職員数は約215万人で、2040年度までに約57万人の増員が必要という推計になります。これは必要数の推計であり、確保できる見通しを示すものではありません。

  • 2022年度(実績):介護職員の必要数=約215万人/2022年度比=ー
  • 2026年度:介護職員の必要数=約240万人/2022年度比=+約25万人
  • 2040年度:介護職員の必要数=約272万人/2022年度比=+約57万人

出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2022年度実績に基づく推計)

政府の分野別運用方針では介護分野の受入れ見込数が設定されています。制度ごとに対象期間が異なる点に注意が必要です。

  • 特定技能1号:対象期間=令和6年度から5年間(令和10年度末まで)/受入れ見込数=126,900人
  • 育成就労:対象期間=令和9年度から2年間(令和10年度末まで)/受入れ見込数=33,800人

出典:出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針 別紙1 介護分野」(令和8年1月23日閣議決定)

介護分野の特定技能1号ではインドネシアが国籍別で最多

2025年12月末時点の在留インドネシア人は266,069人で国籍別第6位、前年末比で66,245人の増加です。

出典:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(2025年12月末時点)

出入国在留管理庁は国籍・地域別と特定産業分野別を掛け合わせた統計(第1表)を公表しています。以下は特定技能1号・2025年12月末時点の速報値です。

  • インドネシア:21,139人
  • ミャンマー:19,803人
  • ベトナム:10,401人
  • ネパール:6,013人
  • フィリピン:5,704人
  • 中国:1,340人
  • その他の国籍・地域:3,471人
  • 介護分野 合計:67,871人

出典:出入国在留管理庁「特定技能1号在留外国人数 第1表〜第3表」(令和7年12月末現在・速報値)

同じ統計では、特定技能1号の全分野合計はベトナムが最多です。一方で介護分野に限るとインドネシアが最多という構造になっています。採用時には、候補者の経験と自社の支援体制を個別に確認します。

また、国際交流基金が日本語教育機関を対象に実施した2024年度調査では、インドネシアの日本語学習者数は732,914人で世界第2位です。ただしこの数字は日本語教育機関で学ぶ人の数であり、介護職の候補者数や日本語能力を示すものではありません。採用時は個々の候補者の能力を確認します。

出典:国際交流基金「2024年度 海外日本語教育機関調査 結果概要」(2024年度)

インドネシア人を介護職で雇用する主な4つの受入れ方法

外国人介護人材の主な受入れ制度には、特定技能「介護」、EPA(経済連携協定)、技能実習(育成就労へ移行)、在留資格「介護」の4つがあります。このほか、永住者や日本人の配偶者等など就労活動に制限のない在留資格を持つ人も介護職として雇用できます。在留期間や採用の流れが方法ごとに異なるため、最初に整理します。現行の4方法に加え、技能実習の後継となる育成就労を参考として掲載します。

  • 特定技能1号「介護」:在留資格=特定技能/在留期間等=通算5年/訪問系サービス=対象サービスで要件を満たせば可/家族帯同=不可
  • EPA介護福祉士候補者:在留資格=特定活動/在留期間等=原則4年(インドネシアは令和8年8月の改正日尼EPA発効等により上限5年)/訪問系サービス=候補者の間は不可/家族帯同=不可
  • 技能実習「介護」:在留資格=技能実習/在留期間等=最大5年/訪問系サービス=対象サービスで要件を満たせば可/家族帯同=不可
  • (参考)育成就労:在留資格=育成就労/在留期間等=3年以内(令和9年4月から運用開始)/訪問系サービス=対象サービスで要件を満たせば可/家族帯同=不可
  • 在留資格「介護」:在留資格=介護/在留期間等=更新の上限なし/訪問系サービス=可/家族帯同=可

長期的な受け入れを見据える場合、特定技能「介護」で受け入れ、介護福祉士資格の取得後に在留資格「介護」への移行を目指す方法があります。適した方法は施設の規模・教育体制・必要人数によって変わるため、複数の方法を比較して判断することが適切と考えられます。

特定技能「介護」|採用要件と受入れ機関の条件

特定技能「介護」の要件は、本人が介護技能評価試験と介護日本語評価試験に合格し、あわせて日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格していることです。試験はインドネシア国内でも実施されています。

試験の免除対象もあります。介護職種の第2号技能実習を良好に修了した人、介護福祉士養成施設の修了者、EPA介護福祉士候補者として在留期間(4年間)を満了した人です。ただしEPAからの移行には、直近の介護福祉士国家試験について合格基準点の5割以上を得点し、すべての科目群で得点があったことの確認が必要とされており、「4年間在籍していれば免除」ではない点に注意が必要です。

出典:国際厚生事業団「EPA介護福祉士候補者が介護分野の特定技能へ在留資格を変更する場合の試験免除について」(2026年9月確認)

受入れ機関は、初めて1号特定技能外国人を受け入れる場合、地方出入国在留管理局に対する在留諸申請の際に、入国後4か月以内に「介護分野における特定技能・育成就労協議会」の構成員となる旨の誓約書を提出する必要があります(入会費・年会費は徴収されません)。受け入れ人数は事業所の日本人等の常勤介護職員の総数までという上限もあります。

出典:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」(2026年9月確認)

あわせて押さえておきたいのが試験の性質です。JLPTの認定の目安は「読む」「聞く」の2区分で示され、話す・書く技能は目安の対象に含まれていません。N4合格は業務上のコミュニケーション能力を保証するものではなく、申し送りや記録など話す・書く場面の習熟は入職後の育成計画で補う前提に立ちます。

出典:日本語能力試験「N1〜N5:認定の目安」(2026年9月確認)

訪問系サービスへの従事は2025年の告示改正で可能に

制度面の変化として、2025年4月の告示改正により、特定技能外国人・技能実習生は、対象サービスと所定の要件を満たす場合に訪問系サービスに従事できるようになりました。対象外のサービスと、要件が一部異なるサービスがある点に注意が必要です。

厚生労働省のQ&Aでは、小規模多機能型居宅介護の「訪問」について「外国人介護人材の従事は認められない」とされています。

一方、訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護は複数人でサービスを提供するため、以下の遵守事項や巡回訪問等実施機関への事前の届出等は求められず、介護職員初任者研修等の修了も要件とされていません。以下はこれら以外の訪問系サービスに適用される条件です。

  • 本人の原則要件:介護職員初任者研修課程等の修了、かつ介護事業所等での実務経験1年以上
  • 実務経験1年未満の例外:在留資格に応じて求められる水準より高い日本語能力(JLPT N2相当など)を有する場合に限定し、利用者ごとの同行訪問を実施
  • 事業所の遵守事項:業務の基本事項等に関する研修、一定期間の責任者等による同行など必要な訓練、キャリアアップ計画の作成、ハラスメント防止のための相談窓口の設置等、不測の事態に対応できるよう情報通信技術の活用を含めた環境整備
  • 事前の手続き:利用者やその家族への書面による説明と署名の取得。あわせて特定技能では訪問系サービスに従事させる前に巡回訪問等実施機関の確認を受け、技能実習では技能実習計画の認定申請前に適合確認書の交付を受けること

出典:出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-の一部改正について」(令和7年4月21日)/厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点についてのQ&A」(令和7年3月31日)

在宅の高齢者介護にも配置の選択肢が広がった一方、要件を満たさない段階で単独訪問を行わせることは認められていません。訪問系サービスへの従事を前提とする場合は、まず対象サービスに含まれるかを確認し、初任者研修の受講機会、同行訪問の体制、事前確認の手続きまでを採用計画に織り込む必要があります。

EPA介護福祉士候補者|2008年度から続く受け入れ枠組み

EPA(経済連携協定)は、インドネシアとの間では2008年度から続く受け入れ枠組みです。介護福祉士候補者の累計受入れは3か国合計8,809名で、うちインドネシアが3,781名と最多となっています(2008〜2025年度)。在留資格は「特定活動」で、その間に介護福祉士国家資格の取得を目指す制度です。

介護福祉士候補者の滞在期間は、3か国共通で原則4年とされてきましたが、厚生労働省は「令和8年8月の改正日尼EPAの発効等により、看護・介護ともに在留期間の上限は5年に延長」としています。個別の適用条件は最新の受入れ案内でご確認ください。

出典:厚生労働省「経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ」(2026年9月確認)/国際厚生事業団「2027年度来日 EPAに基づく受入れ説明会資料」(2026年2月時点)

特徴は、あっせんが公的機関である国際厚生事業団(JICWELS)に一元化されている点です。求人登録からマッチング、来日後の巡回支援までを同団体が担います。

受け入れ費用は、同資料に掲載された費用項目を1施設・1人で計算すると、滞在管理費の1年分を含めて約601,540円です(インドネシア人の標準コース、2026年2月時点の参考値)。単位と税区分が項目ごとに異なります。

  • 求人申込手数料:30,000円(税別)/施設単位
  • あっせん手数料:131,400円(税別)/人
  • 滞在管理費:20,000円(税別)/人・年
  • 日本語研修負担金:約360,000円(税込)/人
  • 送出し国手数料等:約42,000円/人

複数名を採用する場合、求人申込手数料は人数分を加算しません。なお資料では、受入れ人数は1施設あたり原則2名以上5名以下とされており、1名のみの受入れには所定の条件の確認が必要です。上記は掲載項目の合計であり、翌年度以降の滞在管理費や、給与・住居・施設内での教育にかかる費用は別途必要です。手数料や負担金は改定されることがあるため、最新の費用と受入れ条件は国際厚生事業団の公表資料でご確認ください。

候補者には国家試験合格という目標が設定されるため、学習時間の確保や日本語教育の支援体制を用意できる施設に向いた方法です。

技能実習から育成就労へ|2024年成立の改正法による移行

技能実習「介護」は、インドネシアから来日する現行の経路の一つです。今後、2024年成立の改正法により技能実習制度は育成就労制度へ移行します。出入国在留管理庁の資料では育成就労制度は令和9年(2027年)4月1日から運用開始とされ、在留期間は3年以内です。

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)

介護分野に固有の点として、日本語要件は全分野一律ではありません。一般には日本語能力A1相当以上(JFT-Basic、JLPTのN5等)または相当する講習の受講とされる一方、介護分野は段階ごとに水準が定められています。他分野の水準で計画を立てると要件を満たさない可能性があります。以下は介護分野の要件です。

  • 育成就労開始前:日本語教育の参照枠のA2.2相当以上
  • 育成就労開始から1年以内:A2.2相当以上、および日本語学習プランの作成(B1相当以上に合格している場合は作成不要)
  • 育成就労終了前:A2.2相当以上、および介護特定技能評価試験(日本語)

本人の意向による転籍の要件も、制度全体の説明と介護分野では異なります。介護分野では介護育成就労評価試験(初級)とA2.2相当以上の日本語試験への合格などが必要で、転籍制限期間は2年とされています(前掲・介護分野の分野別運用方針)。

育成就労で確認しておきたいもう一点が、二国間取決め(MOC)の状況です。育成就労での受け入れは取決めの作成と認定送出機関の確定が前提ですが、外国人技能実習機構(OTIT)が公表する一覧(2026年9月時点、暫定リストの掲載日は2026年8月12日)では、インドネシアは暫定リストの段階にとどまり、二国間取決めは作成されていません。作成済はタイ、ウズベキスタン、スリランカ、ラオスの4か国です。

出典:外国人技能実習機構「外国政府認定送出機関一覧(育成就労制度)」(2026年9月時点)

したがって2027年度以降の要員計画については、特定技能を軸に置き、育成就労は取決めの状況を見ながら検討する進め方があります。作成状況は随時更新されるため定期的な確認が求められます。

在留資格「介護」|介護福祉士として長く働くための方法

在留資格「介護」は、国家資格である介護福祉士を取得した外国人のための就労資格です。在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も認められるため、キャリア上の目標として位置づけられます。在留者数は12,227人(2024年12月末時点)です。

出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れに関する制度の現況について」(令和7年4月4日)

この在留資格につながる経路には、留学生として介護福祉士養成施設で学ぶ方法と、特定技能等で働きながら実務経験を積んで資格を取得する方法などがあります。国家試験の受験要件は経路ごとに異なり、実務経験ルートとEPAルートは区分が分けられています。

出典:社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 資格制度の概要」(2026年9月確認)

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インドネシア出身の方を受け入れる前に確認したい文化・宗教への配慮

以下は文化・宗教にかかわる一般的な背景であり、同じ国のなかにも地域差・宗教差・個人差があります。背景を理由に適性を一般化することは適切ではなく、採否は個々の候補者の経験・適性・意欲に基づいて判断します。そのうえで、受け入れ準備として次の2点を確認しておきたいところです。

宗教への配慮は採用選考と切り分けて準備する

インドネシアはイスラム教徒が人口の87%を占めます(2023年、インドネシア宗教省統計)。ただしキリスト教徒やヒンドゥー教徒もおり、信仰の実践度合いには個人差があります。

出典:外務省「インドネシア共和国 基礎データ」(2023年統計)

ここで前提として押さえる必要があるのが、採用選考の進め方です。厚生労働省は宗教を「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」に位置づけ、採用基準としないことに加え、応募用紙に記載させたり面接でたずねたりすること自体が就職差別につながるおそれがあるとしています。配慮を目的とする場合でも、採用面接の場で礼拝や食事について一律に質問することは避けることが求められます。

出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」(2026年9月確認)

実務上は、採否の判断と切り離した受け入れ準備の面談等で、本人が希望する対応を必要な範囲で相談する進め方になります。配慮の内容は人数・勤務時間・本人の希望で変わるため、以下は一律の基準ではなく運用例です。礼拝スペースは休憩室の一角を時間で区切る運用で対応している例があり、勤務中の礼拝の回数や所要時間も本人により異なります。本人と相談し、業務分担や休憩のルールを職場で共有します。総務省中部管区行政評価局の調査(平成29年12月公表)では、調査対象20事業所のうち14事業所(70.0%)が礼拝への配慮を実施していました。

出典:総務省中部管区行政評価局「宗教的配慮を要する外国人の受入環境整備等に関する調査-ムスリムを中心として-」(平成29年12月公表)

留意したいのが断食月(ラマダン)です。断食を行う職員については、本人の希望と体調を確認したうえで、業務上必要な配慮を相談します。日中に飲食を控える場合、入浴介助や移乗介助など身体負荷の高い業務では体調面への配慮が求められるため、朝礼での体調確認や、午後に高負荷業務を集中させないシフト調整が考えられます。

日本式介護の考え方は入職時に共有する

介護に関する経験や考え方には個人差があります。入職時には、本人の経験を確認したうえで、施設が重視する自立支援の考え方を具体例とともに共有することが実務上重要です。「できることは本人にやってもらう」という対応は、意図を伝えないまま指導だけが続くと、行き違いの原因となります。

有効なのは理由をセットで伝えるOJTの設計です。声かけの手順、記録の書き方、緊急時の報告方法は、口頭指示だけでなく写真や翻訳を添えた手順書で示すと、理解の促進に有効です。指摘は行動と改善方法に焦点を当て、本人が質問できる機会を設けます。

試験合格後も、介護記録や申し送りに必要な語彙を学ぶ機会を設けます。社内勉強会や記録テンプレートの平易化など、入職後も日本語学習を続けられる環境を整えておくと、現場と本人の双方の負担軽減につながります。

インドネシア人介護人材を採用する流れ

特定技能「介護」を軸に採用の流れを整理します。就労開始までの期間は、候補者の試験合格状況、在留手続き、海外から採用する場合の査証・出国準備によって異なります。公表されている審査期間だけでは採用全体の期間を算定できないため、各工程の進捗を確認しながら個別に見積もる進め方になります。

以下は、海外在住者を呼び寄せる場合の工程です。日本国内在住者を採用する場合は、現在の在留資格に応じて必要な在留手続き(在留資格変更許可申請など)を確認します。

  • 1. 受入れ方法の選定:在留資格・採用手法(送り出し機関、紹介会社、自社採用)の決定
  • 2. 募集・面接:現地または国内での候補者選考
  • 3. 雇用契約・事前ガイダンス:雇用条件書の母国語による交付、支援計画の策定
  • 4. 在留手続き+インドネシア側手続き:在留資格認定証明書(COE)申請と、インドネシア側の登録を並行
  • 5. 査証取得・入国・就労開始:在外公館での査証申請、入国、生活オリエンテーション、配属

計画上の参考になるのが、出入国在留管理庁が毎月公表する審査処理期間です。特定技能1号は在留資格認定証明書交付申請が平均64.1日、在留資格変更許可申請が平均59.5日(令和8年7月許可分)とされています。これは外食業分野に係る申請を除外して算出された特定技能1号全体の公表平均であり、介護分野のみの値や、個別の申請に要する日数を示すものではありません。

出典:出入国在留管理庁「在留審査処理期間」(令和8年7月許可分)

なお、在留資格認定証明書の交付可否は、出入国在留管理庁が個別に判断します。提出前に必要書類と要件への適合を確認し、不交付の場合は理由を確認して対応を検討します。

また、認定証明書が交付されても査証の発給が保証されるわけではありません。就労開始日は、査証の発給とインドネシア側の出国準備の完了まで確認したうえで最終調整する進め方が適切と考えられます。

募集・面接では試験の合格状況と就労経験を確認する

候補者が技能試験・日本語試験に合格しているか、免除要件を満たしているかによって、就労開始までに必要な手続きは変わります。募集段階で確認したいのは、試験の合格状況(これから受験する候補者は入国時期の見通しが立ちにくくなります)、介護施設や病院での就労・実習経験の有無、本人が送り出し機関等に支払っている費用の3点です。

3点目について参考になる公的データがあります。出入国在留管理庁の実態調査(令和4年7月公表)によれば、母国の送出機関または仲介者に支払った費用の平均はインドネシアが94,821円で、ベトナムの688,143円、中国の573,607円より低い水準でした。ただしこの調査は技能実習生を対象としたもので、現在の特定技能介護人材の費用負担や定着状況を示すものではありません。本人の費用負担は個別に確認する必要があります。

出典:出入国在留管理庁「技能実習生の支払い費用に関する実態調査について」(令和4年7月26日公表)

オンライン面接を行う場合は、介護が対人業務であることを踏まえ、声かけのロールプレイなどの実技課題や現場職員の同席を組み込むと、入職後の認識のずれを防ぐのに役立ちます。

受け入れ準備と配属後の支援は制度上の義務として設計する

特定技能1号では、受入れ機関に10項目の義務的支援の実施が求められます。項目は、事前ガイダンス、出入国する際の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーション、公的手続等への同行、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援(人員整理等の場合)、定期的な面談・行政機関への通報です。自社で実施しきれない場合は登録支援機関へ委託でき、委託費は委託する支援の範囲によって異なります。

出典:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」(2026年9月確認)

これに加えて、夜勤の段階的な導入や記録業務のペア指導など、職場での教育体制を法定の支援とは別に整えます。配属初期の教育・支援体制を整えておくことが、立ち上がりに影響します。支援計画を提出書類ではなく現場の受け入れ手順として作り込むことも、実務上の工夫の一つです。

募集から支援体制の構築までを自社だけで進めることが難しい場合は、GTNの外国人材受入れ支援(※ご利用には所定の審査や条件があります)のように、人材の紹介・採用手続きから住まいの確保・生活オリエンテーションまでを支援する事業者に依頼する方法もあります。

送り出し機関とインドネシア特有の手続き

確認が必要なのが、送り出し機関の位置づけとインドネシア政府側の手続きです。特定技能では送り出し機関(P3MI)の利用は任意とされ、技能実習および育成就労では認定送出機関の経由が前提です。

  • P3MI:役割=インドネシア政府認定の送り出し機関(職業紹介事業者)/対応する主体=利用は任意(特定技能の場合)
  • IPKOL:役割=労働市場情報システム。求人を掲載するポータル/対応する主体=受入企業。インドネシア側が登録・求人掲載を希望している位置づけ
  • SISKOP2MI:役割=海外で働くインドネシア人の登録・保護システム/対応する主体=本人が登録
  • E-PMI:役割=出国前オリエンテーション後に発行される移住労働者証/対応する主体=本人が取得

日本とインドネシアは特定技能に関する協力覚書(MOC)を締結しており、これらの手続きはその枠組みに基づくものです。趣旨は不適切な仲介の防止と労働者保護にあります。

出典:出入国在留管理庁「インドネシアに関する情報」(2026年9月確認)

インドネシア側手続きの証明書類は在留諸申請で提出不要

出入国在留管理庁は、インドネシアについてインドネシア側の手続を行ったことを証明する書類を在留諸申請において提出する必要はないとしています。

ただし、証明書類の提出が不要であることは、インドネシア側の手続きを省略できることを意味しません。インドネシア側の登録が済んでいない状態でも在留資格認定証明書は交付され得ますが、その場合は査証申請や出国の準備が滞る可能性があります。日本側(認定証明書→査証)とインドネシア側の登録手続きは、進捗を別々に確認する方法が考えられます。

自社の技能実習生を同じ職場で特定技能「介護」に切り替える場合も、インドネシア側の手続きが不要になるわけではありません。国内で在留資格を変更する場合の具体的な必要手続きは、駐日インドネシア共和国大使館または支援機関に確認する方法があります。

送り出し機関を利用する場合は費用の透明性を確認する

P3MIの利用は任意ですが、現地での募集や出国前手続きの実務を考えると、初めての採用では正規のP3MIまたは実績のある紹介会社を利用するほうが進めやすいでしょう。確認点は、インドネシア労働省が公表するP3MI一覧に掲載されているか、本人から徴収する費用の内訳を書面で開示できるか、介護分野の送り出し実績と教育カリキュラムを備えているかの3点です。

費用の透明性は法令面にも関わります。特定技能では保証金の徴収や違約金を定める契約が禁止され、義務的支援に要する費用を本人に負担させることも認められていません。本人が不適切な費用を負担していた場合、受け入れ機関側の基準適合性にも影響が及びます。

出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(2026年9月確認)

なお育成就労の送出機関は前述のとおり暫定リストの段階です。「育成就労でも送り出せる」という案内を受けた場合も、二国間取決めの作成状況を一次情報で確認したうえで契約を判断することが適切と考えられます。

受け入れにあたって注意が必要な点

受け入れ全体を通して注意が必要な点を整理します。

法令面では、前述のとおり義務的支援に要する費用を、賃金控除などの方法で本人に負担させることは認められていません。教育費については、義務的支援にあたるもの、業務上必要な研修、本人の自主的な学習を区別し、それぞれ費用負担と賃金控除の可否を確認する必要があります。

また、外国人を雇用する際は、在留資格等に応じた方法で就労の可否を確認します。在留カードが交付される人については、券面の目視のみでは偽造されたものの判別が難しいため、出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションでICチップを読み取り、失効情報照会とあわせて確認記録を残す運用が推奨されます。

出典:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」(2026年9月確認)

定着面では、キャリアパスの提示が有効な取り組みの一つです。何年後にどの資格・役職・給与水準を目指せるかを採用時に文書で示すことは、人材の確保と定着の双方につながります。

業務範囲・夜勤開始時期・労働条件は配属前に確認する

配属前の確認事項は3点あります。第一に業務範囲の線引きで、特定技能「介護」の業務は身体介護とその付随業務です。訪問系サービスには前掲の要件を満たす必要があります。

第二に夜勤の開始時期です。夜勤は少人数体制となり判断を要する場面が増えるため、急変時のコールや家族・医療機関への連絡といった日本語での報告が安定して行える段階まで待つ考え方があります。本人の経験、日本語能力、施設の教育体制を確認し、同行夜勤などを経て段階的に移行します。

第三に労働条件です。特定技能では日本人と同等以上の報酬の支払いが求められ、在留期間の更新時にも確認の対象となります。あわせて労働基準法第3条は、信条を理由として労働条件について差別的取扱いをすることを禁じています。信条を理由として手当を支給しない、昇給対象から除外するといった取扱いは認められません。

まとめ|制度の見極めとインドネシア側手続きの管理が要点

介護職員が2040年度までに約57万人の増員を要すると推計されるなか、介護分野の特定技能1号ではインドネシア出身の方が国籍別で最も多く、採用を検討する際の有力な選択肢の一つとなっています。実務上の要点は4つに整理できます。

第一に、現行の特定技能「介護」・EPA・技能実習・在留資格「介護」を目的別に比較すること。育成就労については、制度開始とインドネシアとの二国間取決めの状況を踏まえて検討します。第二に、審査処理期間の公表値と査証手続きを踏まえて就労開始時期を見積もること。第三に、インドネシア側の手続きを日本側とは別に管理すること。第四に、義務的支援に要する費用の本人負担禁止や訪問系サービスの対象範囲・要件など、法令面の線引きを配属前に確認することです。

育成就労への移行や介護分野固有の日本語要件など、制度が動いている領域でもあります。一次情報を確認しながら計画を組み立てることが、受け入れ体制の安定につながります。

特定技能人材をお探しの企業様へ即戦力となる特定技能人材をご紹介します介護・外食業・宿泊業・飲食料品製造業など無料外国人材のご相談はこちら ›アクティブ登録支援者数約2,000人海外から人材紹介できる国10カ国

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