【執行役員インタビュー】「不条理な社会」への怒りが原動力だった。元学生起業家が、GTNで成し遂げたい「信用の国境撤廃」
株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)は、創業から約20年にわたり外国人の生活を支える生活総合プラットフォームを展開しています。
今回は、立命館大学在学中に起業し、数億円規模の事業を作り上げた後、自社をGTNへ売却し参画した執行役員の鄭 光演(チョン・カンヨン)さんにインタビュー。順調だった自社経営を手放してまで、なぜGTNという組織を選んだのか。そして彼が描く「信用のモビリティ化」という壮大な構想について語っていただきました。

鄭 光演(チョン・カンヨン)/執行役員・不動産事業部 事業責任者・GTN KOREA 代表
韓国出身。18歳で来日し、立命館大学経営学部へ進学。在学中に兵役を経て復学後、外国人特化の不動産仲介事業で学生起業。その後、GTN代表の後藤との出会いを機に、より大きな社会的インパクトを追求するため会社売却を決意。現在はGTNの執行役員として、不動産事業および新規事業であるエージェント事業の責任者を務めるほか、韓国拠点(GTN KOREA)の代表も兼任する。
起業のきっかけとなった学生時代の強い原体験

ーーまずはカンヨンさんのこれまでのご経歴について教えていただけますか?そもそも、なぜ日本での大学進学を決めたのでしょうか?
私はもともと「日本が大好きでたまらない」という情熱だけで来日したわけではないんです。転機となったのは、高校2年生の時でした。当時、古着販売のビジネスをして自分でお金を稼いでいたのですが、ある時、師匠のような存在の方から「資本主義の大原則」を教わったのです。「肉体労働だけで稼ぐには限界がある。これからの時代は頭を使って仕組みを作り、オーナー側に行かなければならない」と。その言葉に影響を受け、経営学を学ぶために大学進学を決めました。
ただ、高校2年生というタイミングから、韓国国内のトップ大学を目指すには時間が足りなかった。そこで海外の大学に目を向けました。「消去法」と言えば聞こえが悪いかもしれませんが、距離・費用・安全性・経済規模、すべての条件において最も合理的でチャンスがある国が「日本」だったんです。そこからはあらゆる問題集を買い込み、徹底的に日本語を勉強しました。最終的に、複数の大学から合格をいただき、奨学金制度やキャンパスの充実度から立命館大学に進学することを決めました。
ーーその後、兵役を経て復学された際に起業されています。就職ではなく、学生起業を選んだ理由は何だったのでしょうか?
やはり「労働対価としての収入」と「事業オーナーとしての生涯年収」を比較した際、ファイナンスを専攻していた自分にとっては、起業のほうが合理的だと判断したのがベースにあります。しかし、単にお金を稼ぎたいという以上に、起業へと突き動かした原体験があったんです。
ーー起業へと突き動かした「原体験」ですか。
はい。復学して日本で住居を探そうとした時のことです。私は日本語も問題なく話せますし、学費免除を受ける奨学生で、起業資金も貯めていたので支払い能力には全く問題がありませんでした。敷金・礼金に加え、1年分の家賃を前払いしてもいいとさえ伝えていました。
それなのに、「外国人だから」という理由だけで審査に6回も落ちたんです。おとり物件に引っかかり、その後も門前払いが続く。不動産会社に理由を問い詰めても、明確な返答はない。そこで裏側を詳しく聞いてみると、オーナーや管理会社が「外国人の審査方法がわからないから、とりあえず落とす」という判断をしている実態が見えてきました。
ーーそれは理不尽ですね…。
これは外国人の入居者に対する差別です。同時に、オーナーにとっても大きな機会損失になっていると感じました。情報の非対称性によって生じているこの市場の「歪み」と「不条理」に、腹立たしさを覚えましたね。この怒りをエネルギーに変え、誰も解決していないなら自分の手で仕組みを作って解決しようと、後輩を誘って起業したのが始まりです。
ーー具体的にはどのようなアプローチでその「不条理」を解消していったのでしょうか?
感情論で「信用してください」と言うのではなく、信用に足るエビデンスを可視化することに注力しました。
例えば、大学の合格通知や入学許可証、奨学金の受給証明、親の通帳残高証明、本国の家族関係証明書など、あらゆる書類を定義し、リスト化しました。「これだけの材料が揃っていれば、日本人学生と同等、もしくはそれ以上に信用力が高い」と判断できるロジックを構築し、管理会社やオーナーに啓蒙して回ったんです。
わからないから怖い、怖いから貸さない。このブラックボックスを開示し、客観的な事実に基づいて判断できる仕組みを作ったことで、事業は急成長しました。情報の非対称性を解消し、関わる人たちが幸せになる。ビジネスを通じて社会課題を解決する面白さを肌で感じた瞬間でした。
成功を手放して、世界を変える挑戦に参画する

ーー事業は順調で、学生ながら年商数億円規模まで成長させていたそうですね。なぜそのタイミングで、GTNへの会社売却を決断されたのでしょうか?
確かに、当時はすでに十分な利益が出ていましたし、個人の年収としてもかなりの額を手にできていました。お金を稼ぐことだけを目的にするなら、そのまま経営を続けていれば問題ないという状況でした。しかし、ある時ふと「この会社が存在する社会的な意義は何だろうか?」と自問自答するようになったんです。
ーーご自身の中で、何か限界を感じられたのでしょうか?
自分たちの目の前の顧客を救うことはできている。でも、日本、そして世界規模で起きている「外国人の居住問題」や「信用の分断」を根本から解決するには、私一人の力や、創業間もないベンチャーの規模では時間がかかりすぎるという現実を感じていました。
そんな時に出会ったのが、GTN代表の後藤でした。後藤は「日本に来る外国人だけでなく、世界中を移動する人々の生活を支えるインフラを作る」という壮大なビジョンを語っており、衝撃を受けたことを覚えています。
ーーそこでGTNのビジョンと、カンヨンさんの想いが重なったわけですね。
そうですね。そして、GTNには創業以来十数年にわたって蓄積された膨大なデータベースと、外国人専門の保証会社としての圧倒的なアセットがあります。ゼロから時間をかけて自分でインフラを作るよりも、GTNのアセットを活用させてもらい、その上で私が動いていく方が、世界を変えるスピードは圧倒的に早い。そう確信し、会社を売却してGTNに参画することを決めました。
ーー他の大企業などに参画することも選択肢としてあったかと思いますが、中でもGTNを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
先ほどと重複する部分もありますが、GTNが、外国人支援というニッチなマーケットにおいて、他社が追随できないレベルの「データ」と「信頼」を蓄積していたことが決め手になりました。
今後、大企業がこの市場に参入してくる可能性はゼロではありませんが、単一のサービス、例えば「外国人向け不動産仲介」だけを切り出して参入してきても、我々には勝てないと考えています。なぜなら、GTNは住居だけでなく、通信、金融、その他生活サポートなど、外国人の生活に必要なインフラを横断的に提供しており、顧客のライフタイムバリュー(LTV)を最大化するエコシステムを構築しているからです。
ーー確かに、生活のあらゆる場面での接点があるのは強いですね。
「ゴミの出し方がわからない」「解約手続きはどうすればいいのか」といった生活上の細かな問い合わせデータから、支払い履歴などの信用情報まで、数十万件、数百万件というユースケースが蓄積されています。
この現場のリアルなデータこそが、AI開発や新サービス開発における最強の競争優位性になります。圧倒的なポテンシャルを持つ土台の上で、自分の経営スキルや事業開発スキルを試せる。これほど刺激的な環境は、他にはないと思いました。
「型」を作り、再現性を高める。社会課題の解決と事業成長の両方を味わう挑戦

ーー現在、カンヨンさんが注力されている「グローバルエージェント事業」について教えてください。
これは、住まいを探している外国人のお客様と、それを支援したい不動産エージェントをマッチングするプラットフォームビジネスです。
従来の不動産仲介は、どうしても「担当者」という属人性に依存してしまうモデルでした。優秀な担当者がいれば売れるし、その人が辞めればノウハウも消える。これでは企業の資産として積み上がりませんし、スケールにも限界があります。後藤が目指すユニコーン企業、さらにその先へと成長するためには、労働集約型ではない、サステナブルな事業モデルが必要です。
ーーそこで、プラットフォーム化を進めていると。
はい。GTNが持つ集客力とシステム基盤を開放し、外部のエージェントがGTNのプラットフォーム上で活躍できる仕組みを構築しています。
エージェントの方々は、GTNのシステムを使うことで、言語対応や複雑な審査手続きといったバックオフィス業務から解放され、お客様への提案に集中できる。結果として、意欲あるエージェントが正当に報われ、お客様も質の高いサービスを受けられる。「社内のマンパワー」という制約を取り払い、外部の力も借りながら無限にスケールできる構造を作る。これが、私が今取り組んでいる事業開発の核心です。
ーーその構想実現に向けた、具体的なアクションについても教えてください。
現在は「Best-Estate.jp」という外国人の賃貸マンション・アパート探しをサポートする自社サービスアプリの開発や、裏側の管理画面、そして顧客ID基盤の統合などを急ピッチで進めています。
中でも特に注力しているのが、AI開発です。例えば、外国人のお客様が「ペットと住みたい」「駅から近いところで、保証人なしで借りたい」と相談してきた場合、従来はベテランスタッフの経験と勘に頼るしかありませんでした。しかし、GTNには数十万件にのぼる過去の相談データがあります。どんな条件のお客様に、どの物件を提案し、最終的にどこで成約に至ったのか。この「成功パターン」をAIに学習させることで、経験の浅いエージェントでもプロフェッショナルレベルの提案ができるようになります。
ーー実現した際のインパクトはかなり大きそうですね。「外国人支援ビジネス」に携わることの面白さややりがいについても教えてください。
世の中の「歪み」を解消し、それを経済的な価値に変えられるという点に面白さを感じます。先ほど申し上げた不動産の審査もそうですが、「外国人だから」という理由だけで、本来得られるはずの機会を逃している現状は、社会にとってもビジネスにとっても極めて非合理的です。
このギャップを、私たちのサービスで埋める。それによって、「不条理の解消」と「ビジネスとしての利益」が同時に達成される。社会正義を追求することが、そのまま会社の成長に直結し、お客様からも感謝される。この三方よしのダイナミズムは、他の業界や企業ではなかなか味わえない、このビジネスならではの経験だと思います。
ーープラットフォームによる「三方よし」の相乗効果について、具体的なイメージも教えていただけますか?
まず管理会社様の視点で見ると、現在は地方を中心に空室率の上昇が深刻な課題です。日本人の入居者だけを待っていては、どうしても限界があります。一方で「外国人は不安だ」という心理的な壁も根強い。そこに私たちのプラットフォームが介在することで、物件掲載と同時にGTNの保証・サポート体制が自動的にセットされる。管理会社様は、今の運営体制を変えることなく、リスクを最小限に抑えながら「外国人マーケット」という新しい収益源を獲得できます。
次に、現場で動く仲介エージェント様です。彼らにとって外国人対応は、やりたくても「多言語スタッフがいない」「審査の基準がわからない」といった高いハードルがありましたが、プラットフォームに参加することで、GTNが長年培ってきた多言語システムや審査ノウハウを、自社のインフラとしてそのまま活用できます。多額の投資をすることなく、意欲と営業力さえあれば、成長著しい市場で正当な対価を得ることが可能です。
そして、入居者の方々です。物件探しはもちろん、電気・ガス・水道のセットアップから入居後の困りごとまで、すべて母国語でワンストップに完結できることで、日本での新生活の始まりが「不安な体験」ではなく、心から「安心で快適な体験」に変わるというメリットをもたらします。
ーーすでに豊富な経験や実績をお持ちの方が、GTNという環境で挑戦する醍醐味はどこにあると考えていますか?
自分のスキルや経験が、ダイレクトに「社会課題の解決」と「事業成長」の両方に直結する点は魅力になるのではないでしょうか。
一定のキャリアを積まれた方の中には、専門性は高いけれど、担当領域が細分化されすぎていて「自分の仕事がどう世の中を変えているのか見えにくい」というジレンマを抱えている方もいるかもしれません。しかしGTNでは、自分の専門性を活かして事業をドライブさせることが、そのまま「日本に住む外国人の生活向上」や「多文化共生社会の実現」につながっていく。この手触り感は、GTNだからこそ得られるものだと思います。
国境を越えて「信用」を持ち運べる世界へ
ーー最後に、カンヨンさんがGTNで描く未来のビジョンについて教えてください。
私が目指しているのは、「信用のモビリティ化」です。現在、どんなに母国で信用がある人でも、国をまたげばその信用はリセットされ、また一から積み上げ直しになります。
日本から海外へ行く日本人も同様です。数年海外に住んで帰国すると、日本での信用情報が空白になり、クレジットカードが作れなかったり、家が借りにくかったりする。これは明らかに非効率で、個人の可能性を阻害しています。
ーー確かに、国を跨ぐと信用がリセットされてしまう現状がありますね。
GTNは今、日本だけでなく、韓国、ベトナム、インドネシアなど、アジア各国への展開を見据えています。例えば、GTN KOREAで蓄積した信用データを、その人が日本やベトナムへ移住する際に持ち運べるようにする。国境を越えても、過去の行動履歴や信用が正当に評価され、スムーズに生活基盤を整えられる。そんな世界を実現したいと考えています。
日本国内の外国人人口は、これから間違いなく増え続けます。そして、アジアの国々もいずれ人口減少フェーズに入り、人材の争奪戦は激化するでしょう。その時、選ばれる国になるための鍵は「外国人がストレスなく生活できるインフラがあるかどうか」です。そのインフラを自分の手で作り上げていきたいですね。
ーー最後に、未来の仲間へメッセージをお願いします。
私たちは今、未踏の領域を開拓し、道を作っている最中です。正解のない問いに対し、仮説を立て、泥臭く実行し、形にしていく。そのプロセスを楽しめる方、そして「自分の手で社会の仕組みをアップデートしたい」という強い志を持つ方と、ぜひ一緒にこの挑戦を続けていきたいです。
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